だれでも失敗は嫌ですし、できたら成功したいですよね。
「私失敗しませんから!」
と言い切って行動に移せる人は良いのでしょうが、やはり失敗は気になります。
そんなときだれでも考えるのは「先人の体験」に学ぶこと。
歴史上の人物でも、わりと最近のタレントさんや社長さんのでも、数々の成功談がTVや書籍、ネット上にあふれています。
かたや「しくじり先生」などの失敗談もけっこう目に付きます。
人の失敗は楽しく感じることも多いので、楽しむ分にはいいですが、自分が参考にするならやっぱり成功した話のほうが良さそうです。
だって、そのとおりにしたら成功する確率が上がりそうですよね。
「成功の法則」を守れば失敗することなく、成功に近づけそうです。
しかし、1999年にスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が、数百人に及ぶ成功したビジネスパーソンを調査した結果、そのうちの8割が「自分のキャリアは予期せぬ偶然によるところが大きい」と答えたそうです。
そして実はあのドラッカーも「イノベーションのための7つの種」の第一番目に「予期せぬもの」を上げており、偶然のもたらすパワーについて述べています。
これって逆に言えば、成功者の語る体験談や成功の秘訣の8割は偶然うまく行ったという話に過ぎないってことになります。
じゃあ、それを真似したところで成功する見込みは少ないんじゃないでしょうか?
一体どうしたら良いんでしょう?
クランボルツ教授は「計画された偶発性理論」のなかで「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」の5つの行動指針で、偶然を積極的に受け入れるよう訴えています。
まあ、車の運転に例えれば「いつも同じ道ばかり走ってないで、いろんな道を走ってみようよ。そのほうがスキルも上がるし楽しいよ。」
というところじゃないかと思います。
でもやっぱり知らない道を走るのは少し怖い気もします。
もし事故なんか起こしちゃったらただ事ではすまなしですし・・
そんなとき頼りになるのは、やはり事故事例、つまり他人が失敗した話です。
「ここのカーブは危ないよ。じっさいオレやっちゃったし。」
「経験上、あの交差点は、一時停止線の先でもう一回止まらないと、右からくる自転車やバイクにぶつかりそうになるよ。」
そんな話をあらかじめ聞いていれば、事故を起こしたり、ヒヤッとすることはだいぶ減って、ドライブを楽しめそうですし、さらに同じようなカーブや交差点でそのことを思い出せば(類型化)、さらに失敗は減るでしょう。
野球の野村克也さんが
「勝ちに不思議の勝ちあれど、負けに不思議の負けは無し」
とおっしゃっていました。
私も自分の失敗や他人の失敗を冷静に見てみると、だいたいパターンは決まっているなと思います。
「失敗百選」の大家、東大の中尾政之教授も
「人はだれでも同じような失敗をする」
と喝破されています。
やはり偶然に左右される成功例から学ぶより、ある程度パターンが決まっている失敗の事例から学ぶことのほうが多いようですね。
ただし、他人の失敗から学ぶためには「自分もやっちゃうかも」、また自分の失敗から学ぶには「やっちまったかも」、と思える謙虚さ(客観性)が必要です。
厳しいかも知れませんが、成功者に憧れ、失敗者を笑うだけ、という謙虚さ(客観性)がない方は、確率の低い成功例から学ぶしかない、というわけです。