【電気を送るしくみの今とこれから】12_デンキのお仕事Ⅴ ~電線だってリサイクル ~(ミカド金属/前編)~

    特集記事「デンキのお仕事」です。暮らしの中で重要な部分を担当しながら、普段あまり表に出て来ない分野に焦点を当てて電気にまつわる最新事情をお伝えしています。第5回は、仙台市宮城野区福室にある株式会社ミカド金属の正木睦彦社長にお話を伺いました。株式会社ミカド金属は当社と創業者が同じ会社さんですが、主に非鉄金属のリサイクル事業を行っています。(参考:ミカド電装ヒストリー)。今回は工場や建物から回収された電線がどのようにリサイクルされるのかをお聞きしました。※文中の敬称は省略させていただきます。

     

     

    使用済みの電線や工事で余った電線はリサイクルされます

    株式会社ミカド金属
    正木睦彦社長

    編集部:金属のリサイクルをされているということですが、どんな金属を扱っていらっしゃるのですか?
    正木:当社は、非鉄金属が主力で、メインは電線の銅ですが、銅の合金(真鍮、砲金等)やステンレス、アルミニウム、鉄、鉛やそれらが混在している金属も含め、様々な金属を扱っています。
    編集部:使用済みの電線はリサイクルされるんですね。
    正木:はい。当社は主に会社や工場の解体現場から出る不要になった電線や、建物の新設、改修工事から出る余った電線などを買い取り、銅を分別して再利用に適した形状に加工してメーカーや商社に納めています。
    編集部:そうすると、具体的な仕入れ先はどちらになりますか?
    正木:仕入れ先は、ほとんどが電気工事業者様になります。あとは建物解体業者様からも入ります。それと当社の一部門だった解体工事を「(株)ミカド解体工業」として平成26年に分社化したので、現在はそちらからも買い取っています。
    編集部:電線は具体的にどのような工程でリサイクルされるのですか?
    正木:最終的にはナゲットと呼ばれる粒状の銅片になります。手順としては、電線を仕入れて、太さ等の仕分けをし、一次破砕機に入る長さに切断、コンベアを使って一次破砕機に投入して2cm~5cmぐらいに破砕します。二次破砕機で更に細かくカットし、銅と被覆が混在したものを振動させながら、下から風を当てて上からバキュームの様な物で軽い被覆を吸い上げま

    銅のナゲット。ひと粒が長さ5mm程度、重さはこの容器二つで約1.4kgあります。ずっしりと重いです。

    す。最後に綺麗に残った銅を回収します。この他にも、いくつか細かい工程が有りますが、効率よく銅を回収するには、技術と経験が必要ですよね。
    編集部:銅線を切断し、更に細かくするのですか?
    正木:はい、これが実物のナゲットです。時間が経って少し酸化していますが、実際はもっとピカピカしています。

     

    株式会社ミカド金属の広報紙「みかど通信」より

     

    リサイクルされた銅は”どう”なる?

    正木:以前は剥線機(はくせんき)といって、短く切断した電線を、一本一本手で機械に差し込んで被覆を剥いでいたんです。
    編集部:
    今は自動化されて随分効率が上がったわけですね。
    正木:実は、剥線機の良い面もあります。被覆を剥いだ時に、その場でその都度仕分けができることなんです。今の機械は一度投入してしまうと全部が交ざってしまいます。品質によって価格にも影響が出てくるので、前段階の仕分けがとても重要になってきます。被覆材も変化して多様化していますが、きちんと分ければリサイクルできる被覆材も多いですしね。
    編集部:被覆材もリサイクルされるんですか?
    正木:塩ビ材はチップで回収したものをそのまま溶かして再利用します。路盤材とか塩ビのシートに使われています。
    編集部:
    そうですか。でもリサイクルされたメインの銅のほうは、どのように使われるのですか?洒落じゃないけど、銅は”どう”なるのか気になります(笑)
    正木:
    当社で加工処理された銅は商社を通して各メーカー様に納入されています。株式会社コベルコマテリアル銅管様、株式会社原田伸銅所様やその他の会社様など、直接納入しているメーカー様もあります。
    編集部:銅管ですか?
    正木:コベルコ銅管様は銅精錬から加工販売までを一貫して行う日本最大の銅管専門会社ですが、当社の納入先の秦野工場では、空調用、給水給湯用の銅のパイプを生産しています。

    編集部:なるほど。エアコンや水回りの配管になるんですね。
    正木:あとは、伸銅(しんどう)メーカーと呼ばれる、銅箔をつくる会社様。銅箔というのは、身近な例で例えると、携帯電話などの基盤に貼ってある薄い銅のシートみたいな部分ですね。
    編集部:銅は耐食性があって導電率もよいので、色々な用途があるんですね。

    正木:そうですね。変わったところでは、塗料の中に銅粉をまぜてつくっているメーカー様もあります。船の下に塗る塗料に銅を混ぜると、底にフジツボが付かないらしいんですよ。自分もあまり詳しくは知らないんですが、そういう使い方もあるらしいんですね。
    編集部:そうなんですか!驚きました。(つづく)

    後編➡電線はアルミに。変わりつつある金属素材

     

     

    電線に銅が使われているのは知っていましたが、改めて、銅が再利用可能な価値ある資源であることを実感しました。次回も引き続き正木社長のお話をご紹介し、電線の素材の変化や、人々の意識が変わってきたことなどをテーマにお伝えいたします。

    (ミカドONLINE 編集部)


    取材先:株式会社ミカド金属 お話:正木睦彦 代表取締役
    資料提供:株式会社ミカド金属 取材日:2017年5月2日 取材:ミカドONLINE編集部