ミカド電装商事のお客様をご訪問して、お仕事の内容や様々な取り組みを伺うシリーズの3回目です。今回は当社代表取締役の沢田秀二と編集部が、宮城県石巻市にある 株式会社ナカトガワ技研様をお訪ねして、宇田明央社長にお話を伺いました。
ナカトガワ技研様は、順送金型を得意とする金属加工会社です。当社のCO2削減ポテンシャル診断を受診された後、環境省の低炭素機器導入事業に採択され、国の補助を得て地球の温暖化防止に貢献する省エネルギーの設備機器を導入されました。
(➡ 2019(平成31)年度 低炭素機器導入事業 採択事業所)
順送金型とは何ですか?
宇田社長 ナカトガワ技研は自動車、携帯電話、医療機器でつかわれる高精度の小さな部品(コネクタ等)を製造するための金型をつくっている会社です。金型は大きく分けるとプラスチック用の金型とプレス用の金型があるんですが、うちはプレス用の順送金型と呼ばれる金型をつくっています。
順送金型というのは、ひとつの金型の中に複数のプレス工程を等間隔で配置したものです。機械にコイル材(大きく巻かれた薄いベルト状の金属素材)を通して等間隔で送ってやると、折ったり曲げたり抜いたりといった何段階かある金属加工の複数の工程が順繰りで進んでいき、出てくるときには完成品になっています。1台のプレス機で効率よく製造できるので大量生産に向く金型です。
実物を見たほうがずっと理解しやすいですから、工場を見学していきませんか?
(編集部)ということで、今回は宇田社長のご厚意で工場を見学させていただきました。
▼棚に並んでいるのが順送金型といわれる製品です。これをプレス機にセットして小さな高精度の部品を大量生産します。
▼プレス機の中を等間隔の歯送り(ピッチ)で金属加工が順番に進んでいく様子をサンプルで説明していただきました。
▼順送金型をつかったプレス加工による金属部品の製造はこんな感じです。確かに実際に目でて見た方がずっとわかりやすいものですね。(背中が宇田社長、プレス機を覗いているのがミカド電装商事の沢田です)
宇田社長 弊社は先代が創業して以来ずっと金型をやってきましたが、スマートフォンなどが世の中に出てきて、非常に薄い端末の中に多くの機能が搭載されるようになり、精度の要求もとても厳しくなりました。
たとえばこういったものをつくってくださいということで図面が送られてきて、こちらはその見本で一見大きく見えますが、(図面を指さして)この部分ですと寸法が0.22ミリです。0.22ミリってわかりますか?ものすごく小さいんですよ。そして指定された公差がここだとプラスもマイナスも0.03ミリ。つまり0.19ミリから0.25ミリの範囲に収まればいいのですが、これを打ち抜く刃先はこのレベルでは困るわけで、たとえば0.22(ミリ)のプラマイ0.01(ミリ)とか、そういった精度の仕事です。
しかもこれはあくまでも完成品の図面であって、ここからどうやって曲げたり抜いたりしながら1台のプレス機で立体的に加工するかは、当然何の説明も書いていません。つまりそういったプロセスからすべてこちらで考えて進めていくわけです。
製品の精度がどんどん上がっていく中でも、時代の要求に追従して来れたのは、やはり創業以来の技術の蓄積ですし、その技術をどうやって次世代に伝えていくかが課題です。それをいつも真剣に考えています。
(編集部)すごいお仕事ですね。実物を拝見して順送金型について非常によくわかりました。ここからは、エネルギーマネジメントや私達ミカド電装商事とのつながりについてお聞かせください。今後このシリーズでご訪問するお客様には同じ質問をさせていただく予定なので、事前に準備してきた統一項目について伺います。
エネルギーマネジメントの分野でお困りのことは何でしたか?
宇田社長 やはり電気代の高騰でしょうか。再エネ賦課金などでバーンと値上がりして経費として気になり始めたときに、太陽光発電で工場の電力を補うことができるのでは?と思いました。
電気代が上がって来ていて今後下がることはない、そういった意味では前もって投資をして省エネをしたい。それなら地球のためにも再生エネルギーの導入が望ましいと考えました。
ミカド電装商事のエネルギーマネージメントをどうやって知ったのですか?
宇田社長 紹介です。太陽光発電についてはお付き合いのある会社さんに、以前にも一度相談したことがあったのですが、補助金を活用するためにはCO2削減ポテンシャル診断というのを受けることが前提とわかり、その流れで国の診断機関として認定されているミカド電装商事さんを紹介してもらいました。
エネルギーマネージメントサービス導入にあたって不安に思うことはありましたか?
宇田社長 導入の不安というよりは、手前の入り口である補助金の申請が一番不安でした。補助金の申請と言うと、難しい書類を山のように書かなくてはいけないイメージがあるので、正直、躊躇する気持ちもありました。それに我々は電気に関して専門的な知識を持ち合わせていないので、用語ひとつとってもちっともよくわからない。補助金の用紙にはそういった、自分たちがさっぱりわからない用語が多いんです。補助金はほかにも色々あるんですが、どれも結局最後は、書類作成の問題に突き当たりますよね。
その不安はどう解消されましたか?
宇田社長 本当に手厚くサポートしていただきました。とても親身に対応してもらいましたし、何度も何度も足を運んでいただきました。
官公庁はどんな申請でも書類に疑問点があると絶対に受け付けてくれないんですが、解釈の違いや不備についての連絡がいつもギリギリなんですよ。
今回の申請では、連絡が来たのがなんと提出期限の2時間前で「えーっ!」て。そこから私も動いたし、ミカドさんを紹介してくれた仲介の会社さんも動きましたし、ミカド電装商事さんのほうでも担当の表さんと菅家さんが、それこそ1分1秒を争う勢いで全力でサポートしてくれました。
実は私、もう無理だと思って一度あきらめたんです。そうしたら菅家さんが「頑張りましょう!」って言ってくれて、それで「わかった、やってみよう」という気持ちになりました。もう、あの2時間はすごかったです。
導入してみていかがでしたか?
宇田社長 はい、お陰様で、申請した補助金がすべて採択されました。内容についても変更されることなく、これで太陽光発電の新設と、集塵機、コンプレッサー、キュービクルを省エネタイプのものに更新することが可能になりました。感謝です。ありがとうございます。
今後ミカド電装商事に期待することは何ですか?
宇田社長 今回は省エネというところでの接点だったんですけど、今後は環境負荷を抑えるためのご提案をしていただく環境コンサルタント的な立場です。
御社は私達の設備の健康診断をしてくださったじゃないですか。それを踏まえて色々アドバイスなどもいただき、エネルギーのトータルマネージメントという観点でお付き合いできればいいですね。
沢田(ミカド電装商事) 私達は電気とエネルギーの専門家なので、たとえば補助金に関してでしたら、お客様がご存じないことでもプロの目線で見て、この設備は通るとか通らないとか、こちらのほうが付加価値が高いとか、そういったコンサルタント的なところから用紙の書き方まで、お客様のご要望に沿って手取り足取りのお手伝いをしていこうと本気で思っているんです。
それと、先ほどおっしゃったようなスピーディーな動きであるとか、とにかくお客様に寄り添っていくのがお客様の満足につながると日々考えています。
そうやって工場全体のエネルギーマネジメントなどを通して、お客様の経費節減や地球環境の改善に対応していけたらいいなと思って取り組んでいます。
今回は色々と貴重なお話をありがとうございました。工場見学も興味深く楽しく拝見させていただきました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
(編集部)ナカトガワ技研様の社屋は中学校の跡地(旧前谷地中学校。統合により廃校)に立っており、春には桜がとてもきれいだそうです。今回はエネルギーマネジメントや工場見学だけでなく、男性の育児休暇や製造現場での男女の違いなど、参考になるお話もたくさん伺うことできて、とても充実した取材でした。宇田社長、このたびはありがとうございます。
取材先:株式会社ナカトガワ技研 代表取締役社長 宇田明央(うだあきお)様
取材日:2019年10月4日
取材者:ミカド電装商事株式会社 代表取締役 沢田秀二 ミカドONLINE編集部