【電気を送るしくみの今とこれから】14_デンキのお仕事Ⅶ~システムの停止を防ぐ産業用蓄電池 (GSユアサ東北支社)~

    特集記事「デンキのお仕事」第7回です。最終回の今回は、株式会社GSユアサ東北支社の塚本竜二東北支社長にお話を伺いました。※文中の敬称は省略させていただきます。

     

    社会インフラの滞りない運用に欠かせない蓄電池

    GSユアサ 塚本東北支社長
    GSユアサ 塚本東北支社長

    編集部:GSユアサ東北支社の皆さんは普段どんなお仕事をされているのですか?
    塚本:当社は蓄電池、電源装置、最近は新エネルギー関連の太陽光システム、リチウム電池といったものを製造販売しています。東北支社では、販売のほかそういった製品や関連のサービスも提供しています。
    編集部:販売先は主にどんなお客様ですか?
    塚本:電力会社や通信会社、交通機関、それに道路や上下水道の設備など、社会インフラを担当する会社や地方公共機関、あとはビル、病院、工場設備などでしょうか。そういったお客様にご提案を行っています。すでに納入させていただいてる設備に関しては更新のご提案をさせていただき、お客様からのお問合せの対応も行っています。
    編集部:暮らしのうえで、重要な役割を担っている会社さんが多いんですね。
    塚本:そうですね。GSユアサは自動車電池のイメージが強いと思うんですが、当社は電源装置などを扱っていて、例えば身近な例でお話しますと、下水道の場合は各家庭から集められた下水に色々な処理をして川や海に流すんですが、処理をする工程で電気を使うんですよね。これがもしストップしてしまうと処理ができなくなって、場合によっては汚水があふれたりするので、必ず電源をバックアップする必要があります。非常時の電気の供給には発電機という方法がありますが、病院などのように無瞬断を求められる設備が多いため、蓄電池に電気を蓄えて電気品が停止しないように置いておくんです。
    編集部:大事な個所ほど蓄電池が必要なんですね。
    塚本:必要だからあるんです。ただ、一般の方には、それになかなか気づいてもらえませんが。
    編集部:出番がないまま更新時期を迎えることのほうが圧倒的に多いわけですものね。
    塚本:はい、なにか起こったときでないと、重要性を知る機会がないのですが、お客様にはその期間の保障をご購入いただいた、ということでご理解いただけたら、と思っています。生命保険みたいなものですね。
    編集部:なるほど、わかりやすい表現ですね。更新の依頼はお客様のほうから?
    塚本:そういうこともありますし、お客様がお困りになって連絡をいただくこともあります。寿命がきても装置を更新せずにそのままというお客様もいらっしゃいますが、アクシデントが発生した時のことを考えて、こちらからのお声掛けも強化しているところです。
    編集部:必要な時に機能しないと大変ですよね。
    塚本:そうなんです。金融系のお客様には、データ処理の電源バックアップとして非常に大きな電池を収めているんですが、トラブルになってしまったときに寿命期を過ぎていたら非常に大きな損失になりますし、担当の方も大きな責任を問われるので、必ず更新していただきたいです。例えば、東京証券取引所の取引が9時から15時までなんですけど、あそこの電源がストップしてしまうと売買ができなくなってしまい、非常に大きな問題になることが想像できると思います。

     

     

    リチウム電池が鉛電池に取って代わる可能性も

    編集部:御社でいま力を入れている製品などがあれば教えてください。
    塚本:やはりリチウムイオン電池(以下、リチウム電池と表記)ですね。リチウム電池は現在、産業分野での展開が進みつつあります。産業用のリチウム電池は、エネルギー密度の高い電池として、EV(電気自動車)のために開発されたものです。自動車の鉛電池はちょっと使っても満タンに充電するには時間がかかりますが、リチウム電池はたくさん使えて充電も早いんです。充電・放電のサイクルが早く、同じ重さの鉛蓄電池に比べると、高いエネルギーを使うことができます。
    編集部:では同じ容量でもコンパクトになりますね。
    塚本:重さ的には3分の1以下だと思います。スペースも半分以下になります。たくさんの電力が使えてコンパクトで軽く寿命が長いし、価格も検討事例によってはトータルコストで2割の差まで近づいてきました。
    編集部:以前と比べて随分安くなったと感じますが、導入も増えているのでは?
    塚本:私が携わった案件でリチウム電池のメリットを一番に感じていただいているのは、やはり金融系の事業者様です。リチウムは寿命が長いので電池の更新回数が減りますが、金融系の情報データ処理は瞬断が許されないので、更新作業の数が少ないほうが、リスクも軽減できるのです。
    編集部:より安全なんですね。

    GSユアサ東北支社がある仙台ファーストタワー

    塚本:それと鉛電池よりも省スペースで場所を取りませんし、床荷重の問題でも費用が節約できます。金融系のお客様のバックアップ電源が鉛ですと、このビル(仙台ファーストタワー)の1フロアよりも大きな場所を鉛蓄電池で一杯にしなければなりません(笑) リチウム電池は鉛電池よりも値段が高いのですが、寿命が長いうえに、軽くて小さいところが省スペースや建物の強度の面で経費節減にもなるため、今後は鉛電池に取って代わる可能性もが出てきたと思います。
    編集部:もう波は来ているのですか?
    塚本:首都圏では少しずつ浸透してきました。蓄電池はもちろん今も鉛が主流ですが、市場に合わせて我々も変わっていかなければなりません。日々、進化している様々な社会インフラのしくみに様々なご提案ができるよう、引き続き努力していきたいと思っています。

    編集部:今日はどうもありがとうございました。

    (ミカドONLINE編集部)


    取材先:株式会社GSユアサ 東北支社 お話:塚本竜二 東北支社長
    取材日:2017年6月2日 取材:ミカドONLINE編集部