静かな飛行を支える羽の形
メンフクロウなどの羽をよく見ると、空気が最初に当たる前側に、くしの歯のような細かな突起があります。「セレーション」と呼ばれる構造です。後ろ側には房のような縁があり、表面にはビロードに似た柔らかな毛も生えています。つるんとした羽のほうが静かに飛べそうですが、細部には意外と凹凸があるんですね。

羽やファンが空気の中を動くと、周囲には渦ができ、表面にかかる圧力も変動します。こうした流れと羽の縁との関わりが、風切り音を生む原因になります。セレーションには、渦のまとまりや表面の流れを変え、騒音につながる圧力変動を抑える働きが確認されています。
ただし、ギザギザがあれば、どんな条件でも静かになるわけではありません。突起の形や、空気が当たる角度によって、音と飛ぶ力の両方が変わります。羽の小さな形を調べる研究が、空気の動きの研究にもつながっているのが面白いところです。
さらに、柔らかな表面にも役割があります。羽同士をこすり合わせた実験では、この毛状の構造が摩擦による音を小さくすることが示されています。フクロウの静かさを考えるには、風切り音だけでなく、羽が触れ合う音にも目を向ける必要があります。
フクロウの翼から生まれたファン
こうした生き物の形や働きをものづくりに生かす考え方を、「バイオミメティクス(生物模倣)」といいます。フクロウをお手本にしたファンは、すでに製品になっています。
ドイツの送風機メーカー、ジール・アベッグの「FE2owlet」は、その一例です。フクロウの翼の輪郭や構造を羽根に取り入れ、静かな送風と効率のよい運転を目指したファンで、機械や設備など、幅広い用途に向けて展開されています。
もっと身近な例では、シャープのサーキュレーターがあります。シャープが注目したのは、翼の断面にある「ふくらみ」。羽根の厚みや断面形状に取り入れることで、風を効率よく捉え、大風量と穏やかな運転音の両立を図っています。
2024年発売の「PK-18S01」は、寝室相当の8畳に対応する風量で運転音34dBと公表されています。
同じフクロウがお手本でも、細かな突起に学ぶ方法もあれば、翼全体の断面形状に学ぶ方法もあります。生き物を観察して、使いたい機能に合う形を探していくところに、ものづくりの面白さを感じます。
実験で分かった音と性能のバランス
2021年に発表された千葉大学などの研究では、斜流ファンという送風機の羽根に、フクロウに学んだ複数の形状を取り付けて比較しています。その結果、前側に細い切り込みを設けた形状では、空気を送る性能を保ちながら騒音を抑えられました。一方、後ろ側にギザギザを設けた形状では、同じような両立はできませんでした。
前側の形状は、羽根の表面から空気の流れが離れる「はく離」を抑え、騒音の低減につながったとされています。見た目をまねるだけではなく、実際に空気がどう流れるかまで確かめる必要があるわけです。
省エネ効果を確かめるときも、同じ量の空気を送り、同じ程度の圧力を生み出す条件で、どれだけの電力が必要かを比べることが大切です。静かさだけでなく、送風性能や消費電力も合わせて見ると、技術の良さがより具体的にわかります。
フクロウにとっては獲物に近づくための翼が、私たちの暮らしでは、静かで効率のよい風をつくるヒントになります。扇風機や換気扇を見るとき、羽根の形にも少し注目してみたくなりますね。
参考:フクロウたちの羽根の秘密 | 公益財団法人埼玉県公園緑地協会,フクロウの羽根|静かに飛べる理由はギザギザ構造 …,シャープの家電、生物模倣で進化 フクロウから新送風機,フクロウが風を生み出す最新技術などを展示するシャープ,軸流送風機 | ジール・アベッグ | FE2owlet – Ziehl-Abegg





















扇風機や換気扇の音。普段はそれほど気にならなくても、寝る前や静かな部屋では、急に耳につくことがありますよね。風はしっかり欲しいけれど、音はもう少し静かだとうれしい。そんな願いのお手本になる生き物がフクロウです。
フクロウの仲間には、羽音を抑えて獲物に近づくものがいます。今回は、フクロウの静かな飛び方と、そこから生まれた技術を見ていきます。