近頃、量子コンピューターという言葉をニュースで耳にする機会が増えました。ですが、それがいったい何者なのか実はさっぱりわかりません。そこで今回は編集部が、量子コンピューターとは結局何なのかを少し調べてみました。
量子コンピューターは従来のコンピューターの概念とは異なる
今月(2022年9月)、中国のIT大手の百度(バイドゥ)が、自社で開発した量子コンピューターを日本のメディアに公開しました。飛躍的に計算能力が高いことが特長の量子コンピューターは、アメリカのグーグルやIBMなど世界中の企業や研究機関が開発にしのぎを削っています。
量子コンピューターとはその名の通り、原子(陽子・中性子)や電子や光子などの量子を使って計算をするコンピューターのことです。そのため見た目も概念も従来のコンピューターとは大きく異なります。
この写真は東京大学が開発した光子を利用した量子コンピューターですが、量子コンピューターは目的やどんな量子を使うかによって部品も変わってくるので、外観もバラバラです。
量子コンピューターに対して従来型のコンピューターを古典コンピューターと呼びますが、古典コンピューターは文字や画像や音声などすべてのデータを2進数で扱います。
例えばAという文字は01000001という二進数に置き換わり、古典コンピューターではそれが電圧の高低に変換されて処理されます。
一方、量子コンピューターを”ざっくり”解説すると、その電圧の高低に相当する1ビット分の情報を量子(原子・電子・光子等)が担当するというイメージ(たぶん)です。
量子の不思議な力学的性質を利用します
この図は私が頑張って考えた量子コンピューターのビットのイメージです。各球の上部を0、下部を1と仮定すると、ひとつの球で1も0も同時に表現できて、かつ中間の値もそれ以外の値も表現可能なので、電流という二次元的な処理方法と異なり、いろんなことが三次元的に一気に解決できそうな雰囲気です。(あくまでも”イメージ”なので違っていたらご指摘ください)
実は古典コンピューターも電子の流れ(電流・電圧)を利用しているので、広い意味では量子を使ったコンピューターと言えますが、量子コンピューターを正確に言えば「量子の性質を取り入れたコンピューター」、もっと厳格に定義するなら「量子力学特有の物理状態を積極的に用いて高速計算を実現するコンピュータ」といえるでしょう。
量子は「重ね合わせ」「もつれ」など、私達の感覚では現実的に理解できない性質を持っています。
簡単に書くと「重ね合わせ」は、ひとつの量子ビットで1も0もその他の値も表現できること。「もつれ」は何らかの理由でペア(またはそれ以上の個数)になっている量子が、たとえ何万光年距離が離れていたとしても、片方の挙動が決まるともう片方も一瞬で同時に決まるという謎の?ふるまいです。なので日本語の意味にとらわれていると理解しにくいかもしれません。
量子コンピューターでは主に「重ね合わせ」の原理が使われています。それは(私の認識では)パチンコ玉に計算を任せるようなものでしょうか。ジャラッと開けた球の表面を見て答えを読み取る感じに似ているかもしれませんね。
けれど1と0しか選択肢がない古典コンピューターと違い、流動的で値の定まらない量子はカチッとした答え(正解)を出せないことがあります。そのため、エラーを回避したり、答えの条件を設定して解の精度を高めるなど、量子コンピューターを活用するためには複数の複雑なアルゴリズムが必要になるそうです。
今のところ量子コンピューターは万能ではない
これまで書いてきた通り、量子コンピューターは非常に特徴的で、いまのところ機能も万能ではありません。私たちがパソコンを扱うように気軽に向き合えるわけではなく、限られた目的に特化したプログラムを作成してそのためだけに活用する専用ツールのような使い方です。しかも量子コンピューターが古典コンピューターよりも優れている分野は数十個程度とのこと。
それでも量子コンピューターが夢の次世代コンピューターのように認識されているのは、私達の認識不足も原因のようです。
現在、量子コンピューターには上図のように
「非古典コンピューター」(量子力学を単に使っているだけ)
「非万能量子コンピューター」(量子力学の有効性が特定分野で認められている)
「万能量子コンピューター」(すべての面で古典PCの上を行く)
の3種類(3段階)があり、現在は真ん中の”一部の計算に最適”とされる「非万能量子コンピューター」が主流です。
ですが世間一般の捉え方として、最上位で実現は数十年後とされている「万能量子コンピューター」に衆目が集まっており、それが現実との齟齬を引き起こしている可能性があります。
まだまだ開発途上の量子コンピューターですが、すでにわかっているのは、量子コンピューターは医薬や材料科学の開発分野では圧倒的に有効であること。これらの分野では高分子化合物(分子の数が多く組成が複雑な化合物)を扱うので、処理容量と速度が速い量子コンピューターと非常に相性がよく、それによって新薬や新素材も生まれてくるかもしれません。
また、量子の原理活用という点では、機械学習やAI、組み合わせ最適化問題、素因数分解、暗号解読なども向くそうです。
ここまでお読みになった方は、高速、高機能の一途をたどるデータ処理に関して違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、難病の血縁者がいる私としては、こういったことで万病にも有効な新しいお薬が開発されるなら、どんどん活用してほしいと思ってしまいます^^
まだまだ開発途上の量子コンピューターですが、社会の課題解決のためならぜひ発展してほしいと思いました。
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事:中国 百度 量子コンピューター公開 8月から運用開始|テレ東BIZ(テレビ東京ビジネスオンデマンド) IBMの量子コンピューター「IBM Q」は従来型コンピューターと何が違う? |ビジネス+IT 量子の重ね合わせ – YouTube 【世界を変える技術】超絶わかりやすく量子コンピュータを解説 – YouTube など