「世のため 人のため 地球のため」がGOサイン!
ミカド電装のお客様をご訪問して、お仕事の内容や様々な取り組みを伺うシリーズの2回目です。今回は当社代表取締役の沢田秀二と編集部が、宮城県大崎市にある有限会社 千田清掃 様をお訪ねして、千田信良社長と野々村隆一環境事業部長にお話を伺いました。
千田清掃様は、古くから環境問題に取り組み、2005年(平成17年)より地域にバイオ燃料を提供していらっしゃいます。最近では、宮城県が助成する『平成28年度クリーンエネルギーみやぎ創造チャレンジ』事業に、バイオ燃料で自立型電源システムを実証するプランが採択されました。今回、ミカド電装ではその事業において、発電機と組み合わせてつかうリチウムイオン電池(GSユアサ製)を、納入させていただきました。
清掃会社がバイオ燃料をつくろうと思ったきっかけは?
千田社長 当社は宮城県大崎市で浄化槽の保守・点検やし尿・汚泥などの収集・運搬等を手掛ける会社です。先々代から続いて私で三代目になります。廃棄物処理に関わっているので、元々環境に対する意識はあったのですが、事業用のトラックはディーゼルエンジンなので、その頃は黒煙を吐いて走っていたんですよね。当社の訪問先は浄化槽が1000件、汲み取りが5000件ありますが、ほとんどが一般のご家庭なんです。そういったお家の庭先や狭い私道に、当社のバキュームカーが排気ガスをまき散らしていることに疑問を持ったのがきっかけです。
大崎は業者が少ない地域なので、市の委託で多くの市民の皆さんの汲み取りを当社が担当しています。私の中では、ペットボトルから煤を撒いて、都内のディーゼル車規制を訴えていた、当時の石原都知事のパフォーマンスがずっと心に残っており、会社として責任の重さも感じていました。
そんなときに社員さんから、バイオ燃料の存在を教えてもらい、ならばやってみよう、という気持ちで始めたのがきっかけです。
バイオディーゼル燃料(BDF)とは?
千田社長 飲食店や一般のご家庭から使用済みの、てんぷら油を回収してつくる燃料です。
当社ではその後、バイオディーゼル燃料(Bio Diesel Fuel。以下BDF)の製造と販売を事業として立ち上げ、現在では鳴子温泉や仙台の国分町を含む700件のお客様から月間3万リッターの廃食油を回収しています。それを精製し、BDFとして提携事業者様に販売しています。
日本のBDFは平成16~7年(2004~5年)頃に、琵琶湖に廃油を流さない運動から始まり全国に広まったものですが、植物由来のエネルギーなので、カーボンニュートラルの概念により、CO2の排出がゼロカウントされます。なので、今では低炭素・脱炭素の観点からも見直されている燃料です。
野々村部長 ご存じない方も多いのですが、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと違って、元々どんな油でも燃料として使えるように作られています。なので、ディーゼルエンジンで動く車であれば、本来はどんな車でもBDFを代替え燃料として使えます。ただし、品確法では、公道を走る車に入れてもよいのは、軽油95%+BDF5%の割合で混合したB5(ビーファイブ)と呼ばれるものに限定されています。ですが逆に、B5であればメーカーの補償範囲ですので、混合油であっても普通の軽油と同等に扱われていることがご理解いただけると思います。
沢田(ミカド電装) いま、ふと、バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)のラストシーンを思い出しました。あれって、確かゴミを燃料に走るんですよね。
一同 あー!!(笑)(盛り上がる)
千田社長 BDFは回収した廃食油を遠心分離機でフィルターにかけてろ過したあと、メタノールと水酸化カリウムを入れて、(エステル交換反応により)グリセリンを取り出し、サラサラに精製しますが、季節や温度の変動が品質に影響しないように、毎日検査をして微調整し、人手による厳重な品質管理をしています。植物油は生ものなので、まるで酒造りに向き合う杜氏のようですよ(笑)
野々村部長 取り出したグリセリンは養豚場の飼料とか、肥料の原料、たい肥の発酵促進剤として、専門の業者さんに納めています。無駄がないんです(笑)
東日本大震災で蓄電池の必要性を痛感
千田社長 2011年3月に発生した東日本大震災ではこの地域も数日間停電して、夜になるとあたりは真っ暗になってしまいましたが、千田清掃では自家発電が稼働していたため本当に助かりました。実はエネルギーの自己完結を目指し、自社のバイオ燃料で発電した電気を、プラントの動力源にしていたんです。
震災時はその配線を、資格のある社員さんに社屋のほうにつないでもらったので、室内は明るく煮炊きもできました。ですが、当社の発電機は定置式なので、まだ寒かった時期にご近所の皆さんは、この場所に来ないと暖が取れないんですよね。
この経験から、バイオ燃料の発電機と蓄電池を組み合わせて可搬可能なエネルギーにしたら、もっと多くの人にリアルタイムで必要なエネルギーを供給できるのではないか?と考え始めました。
バイオ燃料は、(公道を走るディーゼル自動車ではなく)自家発電用のディーゼル発電機でつかうなら、BDF精製前の段階であるSVO(ストレートベジタブルオイル)と呼ばれる油でも燃料に使うことができますから。
野々村部長 SVOは回収した廃食油をろ過して不純物を取り除いたところまでのものですが、市販のディーゼル発電機でつかっても全く問題がありませんし、コストが安く法の規制も受けません。震災の時、農家では農機用の軽油で発電機が回せましたが、SVOであっても、ご家庭にある未使用の食用油であっても、いざというときは軽油の代わりにディーゼル発電機でつかえる燃料になるんです。
千田社長 ただ、発電機は夜間の音も大きいですし、なにより、電気を使う時間に合わせて発電しなければならないので、常に人手がかかります。土日の無人の状態では動かせませんし、電気が必要ない時間帯に動かしても無駄なだけで意味がありません。そんなときに、電気を溜めておくことができる蓄電池の必要性を痛感したんです。
野々村部長 それに、蓄電池の電気なら電圧も安定しているのでPCなどの精密機器でも安心して使えます。発電機の電気って結構バラつきがあるんですよね。
千田社長 蓄電池があれば、いつでもバイオ燃料で発電機を動かしてどんどん電気を溜めることができますし、将来的には、充電した蓄電池そのものを相手に届けて、非常時や緊急時にもエネルギーを安定して供給できたら、どんなにいいだろう?と思いました。そうしたら、そんなときに、中小企業向けの『環境マネジメント検討会』という集まりで、偶然ミカド電装の沢田社長にお会いしたんです!これはもう、絶対に神さまのはからいだと思いましたね!!
ミカド電装商事のリチウムイオン電池のページはこちらです
バイオ燃料発電と蓄電池で電気自動車にも対応していきたい
沢田(ミカド電装) 千田社長は初めてお目にかかったときから、興味深い事業を展開している会社さんだなぁと感じていたんです。その後、ご相談をいただいて、リチウムイオン蓄電池がベストだと考えましたが、蓄電池って長く持たせたいのか、一晩持てばいいのか、3日使いたいのか一週間なのか?使い方の方向性で、内容が大きく変わってくるんです。なので、持続時間や容量などは、詳しいお話を十分伺ったうえで、具体的なご提案をさせていただきました。
野々村部長 今回は14Kwのリチウムイオン電池(GSユアサ製)を納めていただきました。
沢田(ミカド電装) ありがとうございます。
千田社長 沢田社長、これからうちでは、実証用に電気自動車の軽(軽自動車)を買おうと思っているんですよ。まだ計画段階ですが、電池パックを載せ替えして、1日中走行が可能な方法を実験したいんです。電気自動車って普通充電で7~8時間充電しなくちゃいけないんです。200Vで8時間。それが一番のネックなんですね。残念ながら当社の発電機では急速充電ができませんが、充電した予備の電池を積んで走るなら、古川⇔仙台の往復も怖くないです(笑)今は鳴子に行って帰ってくるのも多少不安があるというか・・・
沢田(ミカド電装) 電気自動車ってそれが怖いんですよね。私も、前日に充電されておらず、電池残量が30Kmしかない自社のEVで、ヒヤヒヤした経験があります。
千田社長 (笑)車を取り巻く環境はこの十年で大きく変わり、今は電気自動車へのシフトが加速しています。ですが、電気自動車がいくら環境にいいと言っても、発電に化石燃料を使っていたら、ちっとも地球にやさしくありません。当社で走らせている電気自動車のエネルギーは、化石燃料ではなく、植物由来のバイオ燃料でつくった電気なので、本物のゼロ・カーボンです。
自分は「世のため人のため地球のため」の三方よしが経営のテーマなので、子供達の未来にツケを回すことなく、持続可能な社会のためにも、そこにマッチするものには迷わずゴーサインを出そうと常に思っているんです。
編集部 今日は貴重なお話を大変ありがとうございました。
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最後にBDF精製設備を動画に撮らせていただきました。野々村部長の説明が大変わかりやすいので、こちらもぜひご覧ください。
取材先:有限会社 千田清掃 代表取締役社長 千田信良様 環境事業部長 野々村隆一様
取材日:2018年3月28日
取材:ミカド電装商事株式会社 代表取締役 沢田秀二 ミカドONLINE編集部