今回から始まる新シリーズ「横からリチウム」です。
「便利」「画期的」「危険?」なんとなくわかっているリチウムイオン電池のことを横から失礼してお話させていただきます。
初回である今回のお題はそのものズバリ「だからリチウムってなに(怒)!」
いつの間にか市民権を得た謎の金属物体「リチウム」についてその由緒を探っていきたいと思います。
1,リチウムは最初軍用だった?
リチウムは1817年にヨアン・オーガスト・アルフェドソンが葉長石の分析によって発見しました。葉長石は日本では陶磁器の萬古焼の材料として知られています。
リチウムは初め熱に強い特性を活かして、第二次世界大戦中航空機のエンジン高温グリースの添加剤として使われていました。その為非常に市場は小さく、アメリカ合衆国の小規模な生産現場でほそぼそと作られていました。
しかし、米ソ冷戦時代に入ると水素爆弾製造によってその生産量は劇的に増加します。リチウムは水爆の原料となるトリチウム(三重水素)の生成に使われるようになっていったのです。
喜ばしいことに米ソ冷戦が下火になるとその需要は大幅に冷え込んだのですが、1980年代腕時計やゲーム機用としてリチウム一次電池が使われだすと、需要が平和的に再び伸び始めます。
さらに充放電特性が高いリチウム二次電池が携帯機器やハイブリッド自動車など
様々な用途に使われだすとその需要は飛躍的に伸びたのです。
2,リチウムってどこで取れるの?
主な産出国は、チリ、オーストラリア、中国など。オーストラリアでは、鉱石ペグマタイトからコンデンサに使われるタンタルを生成する際の副生物として回収されていますが、7割方のリチウムは塩分を含んだ塩湖(チリのウユニ湖など)の水が乾いて濃くなったもの(塩湖かん水)を精製して作られます。
3,リチウムは無尽蔵?
「塩湖にリチウムがあるのなら・・」と気がついたあなたは鋭い。実は海水の成分にはリチウムが2300億トンも溶けていて、ほぼ無尽蔵と言ってもいいのです。
ただし、海水から直接リチウムを精製しようと思うと(濃度の高い)塩湖かん水から精製するのと比べかなりコスト高になってしまい、採算が取れないのが実情です。
しかしリチウム資源を100%輸入に頼っている日本では、海水からの精製技術の研究が進められており、将来、原料高を気にせず安価にリチウム電池を製造できる日が来るかもしれません。
さて、次回は比較的歴史の浅いリチウム電池の生い立ちについて探っていきたいと思います。