【電気を送るしくみの今とこれから】01_今さら聞けない送電のキホン

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    私の通勤路に東北電力土樋変電所という施設があります。有刺鉄線の金網で敷地が囲まれ、いかにも高圧の電気を扱っていると感じる碍子(がいし)のたくさん付いた設備が見えます。小さいころから気になっていましたが、私はこの変電所という施設が一体何のためにあって何をしているのか、あまり考えたことがありませんでした。この記事をご覧になっている方の中には同じ思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

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    変電所は、発電所から送電線を通じて送られてきた高圧電気の電圧を下げて、使いやすい電圧に変えて使用者に電気を分配するための設備です。

    といってもここが降圧の最終地点ではありません。変電所で降圧された電気は地下や路上の電線を通り、ご家庭やビルや事業所の一番近くにある電柱の上にある変圧器でもう一度降圧され、引き込み線を通してそれぞれに供給されます。また、変電所の種類もいくつかあり、私達がよく目にする街中の変電所に電気が届くまでには、その手前で何段階にもわたって降圧されています。

    ではなぜそういったしくみになっているのでしょうか?

    実は発電所でつくられた電気は、そのすべてが使用者に届くわけではありません。発電所から送られた電気は長い送電線を通る間にロスが発生します。電気を通す電線と言えども、わずかながら抵抗があるため、電流が送電線を流れると、この電気抵抗のために熱(ジュール熱)が出ます。つまり電気が熱となって逃げて消失してしまうのです。その損失は距離が長ければ長いほど大きくなり、平均5%が失われるといわれています。

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    そのため発電所ではあらかじめ損失を見越して、損失率の小さい高電圧低電流で電気を送り出さなければなりません。実際の発電所では発電した電気を専用の装置(昇圧機)で電圧を上げてから送電側に出力しています。それが何段階にもわたっていくつかの変電所で降圧され、さらにお近くの電柱の上のトランス(変圧器)で最終的に100V(または200V)に降圧されてご家庭や事業所に届くのです。

    この柔軟で自在な変圧を可能にしているのが、現在の交流発電と交流送電方式です。ここで一度、直流と交流の違いを整理しますと、直流と言うのは乾電池のように、常に同じ方向に同じ極性の電流が一定に流れる電気です。一方、交流はプラスとマイナスを周期的に繰り返しながら波のように電気が流れることです。そのため蛍光灯をハイスピードカメラで撮ると、小刻みに明暗を繰り返していることが確認できます。それが1秒間に50回切り替わるのが周波数50Hzの東日本地区、60回切り替わるのが西日本地区でその境目は静岡県の富士川です。

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    さて、なぜ交流のほうが自在に変圧できるかというと、変圧器が電磁誘導の原理をつかっているからです。電磁誘導はコイルの中の磁界が変化すると、コイルに電流が流れる現象で、巻線(コイル)の中で棒磁石を上下させて電気を起こす理科の実験をご記憶の方も多いと思います。この棒磁石を近づけたり遠ざけたりする動作と同じ作用を持つのが、極性が変化する交流電流の波の動きなのです。このとき、コイルの巻き数の増減で電圧を変えることができるので、そのシンプルな仕組みが現在の変圧器に応用されているのです。直流電流も電圧を変えることはできますが、変圧器の仕組み上、一度交流に変換させる必要があり、装置が複雑化して価格も高くなるでしょう。

    交流と直流は方式の異なる発電機を使えばそれぞれにつくることができますが、世界で初めての電力網は当初、直流方式でそれはエジソンが考案したものでした。しかしのちに、後発のテスラが提唱した交流方式との激烈で醜悪なシェア争いの結果、最後に勝利したのは、電圧変換が容易で遠距離大送電が可能なテスラの交流送電方式でした。これが歴史的に有名な「電流戦争」です。現在の送電網システムは天才エジソンの敗北によって成り立ったとも言えますね。

    次回も送電のしくみについて、この続きをお届けします。

    ※参考/出典サイト:
    東北電力土樋変電所(midVamo)
    2 電気がお家に届くまで?(とうちゃんのお家日記)
    送電ロスとは何か?(太陽光発電の価格)
    架空配電(中部電力)