ヘアドライヤーは19世紀の末にフランスで開発されていたようですが、初めて製品化されたのは1906年のドイツと言われています。その前年にニクロム線が発明されていたため、電気を熱として利用する手法が一気に加速し、それに掃除機用のモーターを取り付けて、1911年頃には実用化され始めました。
と言っても当時のモーターは大きくて重く、とても人が持てるようなものではありません。そのため主に美容院で、椅子に座って使うタイプのものが普及していきました。
ドライヤーはその後、研究開発が進み、1920年代には手に持てるタイプの製品も発売されましたが、それでもまだまだずっしりと重量感があり、女性が手軽に持って使えるものではなかったようです。
ドライヤーの歴史は小型化の歴史であると同時に、事故防止の歴史でもありました。洗髪後の濡れた手で使うことが多いドライヤーは、当初感電事故が多く、ハンディタイプが出てからはドライヤーを風呂の中に落として感電し、命を落とすケースも多発するようになったからです。改良が加えられたドライヤーが今のような形になるのは1950年前後のようで、手軽に使えるまでに40年かかりました。
日本では戦前に一度、松下電器が販売を開始しましたが市場化に至らず敗退。その後日栄電機産業が1948年にアメリカのメーカーからの依頼で輸出用製品の製造を手がけ始め、米国側の厳しいコスト要求に打開策を模索しながら、国内で海外製品よりも割安な自社ブランド製品「ライト」を発売しました(1949年)。
大卒の初任給が3000円だった時代に海外製のヘアドライヤーは1台がなんと2万円!そんな中で2000円で販売された日栄電機産業のドライヤーは国内の理美容店に普及しはじめ、やがて品薄状態になるほどのヒット商品になりました。