(83)静電気の力で雑草を抑えるー新しい除草装置の誕生

    「雑草対策」というと、皆さんは何を思い浮かべますか?刈る、抜く、薬剤をまく、そんな常識を覆す、静電気で雑草の成長を抑えるという、少し変わった装置が実用化されています。
    冬になると嫌な思いをしがちな静電気ですが、煩わしい草むしりから解放してくれると思うと少し愛着が湧きますね。

    さて、この装置は近畿大学の研究成果をもとに開発された静電気抑制装置(WCP:Weed Control Panel)と呼ばれるものです。フェンスなどの構造物に取り付け、二重の金網の間に静電気をつくるというシンプルな構造をしています。

    「枯らす」のではなく「伸ばさない」!

    WPCの仕組みはこうです。

    二重の網の間に静電場を作り、そこにフェンスに巻きつくつる系雑草が入り込むと、アーク放電(空気中を電気が飛ぶ現象)が発生します。これが私たちが静電気でばちっ!となるのと同じような仕組みのようです。この放電が雑草の頂芽に作用し、成長を抑制します。
    つまり、根から枯らす除草というよりは、これ以上伸びない状態にするという表現が正しそうですね。

    電源には市販のソーラー式電牧器が使われています。特別な高価設備は不要で、構造も比較的シンプルです。装置自邸も軽量で、フェンスなどの既存構造物に取り付けることを前提に設計されています。

    ↓こちらからWPCの様子が見れます
    https://www.instagram.com/reels/DOfpujjD_PQ

    草刈りが追いつかない現場へ

    この装置は、次のような場所での利用が想定されています。

    • 太陽光発電所のフェンス周り
    • 高速道路・鉄道沿いの防護柵
    • インフラ施設の敷地境界

    いずれも、「人手で頻繁に草刈りするのが大変」「機械が入りにくい」という共通の課題を抱えている場所です。
    手入れをこまめにしなくても、勝手に整えてくれるの革新的ですね!ぜひもっと広がってほしいものです。

    動物にも効く?静電気技術の次の展開

    この装置の研究を支えているのが、静電気の研究を25年以上続けている近畿大学農学部の松田克礼教授です。松田教授は、雑草対策だけでなく、静電気を使って害虫を捕獲・忌避する装置の研究も行ってきました。

    松田教授は、もともとイノシシ除けなどに使われてきた電気柵の仕組みに触れ、「線に近づくと電気が走って動物が嫌がって逃げる。私たちはその線を網に変えて雑草対策に応用している」と説明しています。そのため、同じ発想を動物対策に応用できる可能性についても、考えているそうです。昨年末から全国的に熊の出没に悩まされていましたが、熊よけにもなりそうです。

    畑に設置すれば害獣から作物を守ることもできますね。静電気の可能性は無限大かもしれません!

    普通は厄介者扱いされがちな現象を、構造物と組み合わせて「生活しやすくする仕組み」に変える。研究者たちの着眼点や発想には毎回驚かされますね。

    (ミカドONLINE 編集部)

    参考/引用記事:ノーベル賞の北川進氏「MOF実用化、多くの分野で」,PCP/MOFの世界へ,北川進氏が語った「空気資源」