お客様に聞きました⑤ ~株式会社坊源 山景の宿「流辿」様~

    みかドン ミカどん

    ミカド電装商事のお客様をご訪問して、お仕事の内容やエネルギーマネジメントへの取り組みを伺うシリーズの5回目です。今回は当社代表取締役の沢田秀二と編集部が、宮城県柴田郡にある 株式会社坊源 山景の宿「流辿」様をお訪ねして、原華織総支配人にお話を伺いました。

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    株式会社坊源は、宮城県で旅館業と飲食業を手掛ける会社様です。

    メーン事業の山景の宿「流辿」(青根温泉)において、2018年に当社のCO2削減ポテンシャル診断を受診された後、2019年に環境省の『低炭素機器導入事業』に採択され、国の補助を得てボイラーと空調設備の更新を実現されました。

    今回の低炭素機器の導入にあたり、当社では診断事業のほか、補助金申請のコンサルティングを担当させていただきました。

    2019(平成31)年度 低炭素機器導入事業 採択事業所

    会社名「坊源(ぼうげん)」の由来

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    株式会社坊源総支配人:原華織様

    原華織総支配人 弊社は私の父(現:会長)が創業した会社ですが、父はスキーの国体選手だったんです。スキーの基本的な滑り方でボーゲンというのがありますよね?それで初心を忘れないようにという思いを込めて、自宅を改装して8室の小さなペンション「ボウゲン」を青根温泉に開業したのが当社の始まりです。

    父と母は屋台を引いて青根の温泉旅館のお客様にお団子などのお土産を販売していたのですが、その後、ペンションを開業し、やがて近隣で競売にかけられていた県の保養所を買い取る大英断をして、それが現在の流辿(りゅうせん)になっています。

    あそこ(コーヒーコーナー)のところの障子に「なぁおまえ、屋台を引いたことがあったよな、なぁおまえ」という書がありますよね?お客様は説明がないと意味がわからないと思うのですが(笑)、あれは初心を忘れないために、父が書いたものなんです。

    実はそれまで、家業を継ぐ気持ちはなかったんです。私は当時、仙台でOLをしていましたが、ある日父から「手伝ってくれないか?」という電話があり、聞けば青根で一番の温泉旅館を目指して、大きな決断をしたとのこと。それはかねてからの父の夢でもありました。私はそれを機に生まれ育った青根温泉に戻ることにしました。あれから16年経ち、現在は飲食業も手掛け、旅館業も今年中に新たに別館(名称未定)をオープンさせる予定です。

    流辿(りゅうせん)はどんな特徴のある旅館ですか?

    原華織総支配人 まず名前の由来ですが、流辿と書いて「りゅうせん」と読みます。これは様々な温泉を巡り歩いたお客様が最後に辿り(たどり)着く第二の家という意味で命名しました。

    流辿がある青根温泉は弱アルカリ単純泉でお肌への刺激が少ないので、当館も赤ちゃんの温泉デビューによく利用していただくんです。私自身も青根生まれの青根育ちですので、それこそ新生児のときから「青根のお湯で産湯を使い」みたいな感じで育ってきたんです(笑)青根温泉は濃度の濃い温泉にはない、穏やかで柔らかな泉質が特長だと思います。

    ですが当時の「流辿」はまだ昭和の面影を残した旅館だったため、お部屋のつくりがお客様のニーズに応えられないケースなどもあり、それで別邸として隣に「観山聴月(かんざんちょうげつ)」を新築いたしました。7室の別館になりますが、ベッドがあってお部屋から直接 ”専用の露天風呂”に入れるお部屋をつくりたい!そんな思いがかなった施設です。

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    原総支配人のおじい様が書かれた「観山聴月」の書

    私の祖父も父以上に書をたしなむ人でしたが、そんな祖父の書で唯一残っているのが「観山聴月」(かんざんちょうげつ)と書かれた作品でした。山を見て月を聴くという言葉が静寂の中に癒しを求める新館のイメージにとても合っていたのでそれをそのまま新築した別邸の宿名にしました。祖父の書は額に納めて今はこちら(流辿)の正面玄関に掲げてあります。※写真

    その後、新築した「観山聴月」は、第一回旅館甲子園で優勝したり、じゃらんの『年間売れた宿ランキング「東北エリア10室以下部門」第一位』を6年連続で獲得するなど、多くの方に高い評価をいただきました。

    また本館に相当する「流辿」も現在は改築をして、お客様のご要望に応えられる設備になっています。

    (編集部) 心に響くお話ですね、ありがとうございます。ここからはエネルギーマネジメントの導入について、皆様にお尋ねしている共通のご質問をさせていただきます。

    最初、何に困っていましたか?

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    数多くの表彰状や盾・トロフィーの前で原総支配人から旅館の歴史を伺う当社沢田。足元には看板犬のチャーリー。

    原華織総支配人 東日本大震災をきっかけに、事業の継続性ということを強く意識するようになりました。旅館と言うのはとてもエネルギーを使う設備です。なので、もちろん日々の光熱費の負担はどちらの旅館さんも大きな課題だとは思うのですが、そもそも温泉旅館というのは温泉という自然の恵みでビジネスが成り立っている業種です。ですから環境に負荷をかけないように、何かを新設して増やすのではなく、今あるものを生かしたり交換したりしながら、かつ、CO2削減にも取り組めたらいいなと思っていました。

    弊社は震災時にライフラインが止まり、今後の経営を考える大きな転機となりましたが、その一方で震災の影響により更新すべき設備も、更新のタイミングを逃してしまった感も否めませんでした。

    そのため、近年はヒートポンプ施設などを、福島県まで見学しに行ったりしたのですが、あいにくこちらに専門的な知識がなかったこともあり、説明を伺ってもすぐに理解はできませんでした。ですが、地球環境にやさしく経費の節減にもつながる設備更新の必要性については、常に心のどこかにあり、内心の懸念となっていたんです。

    どうやってミカド電装商事のエネルギーマネジメントサービスを知りましたか?

    原華織総支配人 結論から言えばご紹介ということになります。私は昨年、温泉の廃湯を融雪に活かせないか、ある空調設備会社さんにご相談をしていて、その件はすでに工事も完了しているのですが、並行してその会社さんに「今後はCO2削減にも取り組みたいので、コンサル事業者さんを知らないか?」というお話をしていました。そこでご紹介いただいたのがミカド電装商事さんだったんです。

    沢田秀二社長 その空調設備会社さんと当社は、東北経済産業局が主催する東北地域環境ビジネスフォーラム事業を通じてお付き合いがありまして、それでまずCO2削減ポテンシャル診断を受けていただくことになったんですよね。

    エネルギーマネージメントサービス導入にあたって不安に思う事はありましたか?

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    採択の可否が一番の気がかりだったと話す原総支配人

    原華織総支配人 今思えば、果たして補助金の申請が通るのか?ということが最大の気がかりでしたね(笑)

    沢田秀二社長 実は5月の申請は通らなかったんです。ですが当社としても「そんなはずはない」という確固たる思いで内容を何度も精査し、8月の二次募集に申請して無事採択されました。内容を見直してCO2の削減率をより高めたのがよかったのだと思います。

    原華織総支配人 それによって、よりいっそう費用対効果のすぐれたプランになって逆によかったのかな?って(笑)。

    その不安はどう解消されましたか?

    何度も話を合いを重ねてプランを詰めて行った経緯がありました

    原華織総支配人 採択の可否が最大の気がかりだったので、採択事業に決定したことで不安は解消されたわけですが、今回はA案、B案、C案と、複数のご提案をしていただいたことで、より納得のいく選択ができました。

    ミカド電装商事さんはこの分野のプロフェッショナルなので、何をどうすれば一番CO2の削減につながって補助金も通りやすいのか熟知されていらっしゃいます。けれどこちら側から見ると現時点では負担が重い工事なども含まれます。

    それを何度も何度も話し合って、最終的に「これで行きましょう」となったときに、とても納得のいく思いがありました。

    内容を決めていく過程で、今回は更新を見送った設備もありますが、そういった点に対しても柔軟に対応してくれて、しかもそのプランで採択事業決定に至るまでサポートしてくださったので、本当に助かりました。

    導入してどうなりましたか?

    化石燃料の重油からプロパンガスにボイラーを更新してCO2削減

    原華織総支配人 工事の完了が昨年の12月でまだ2か月しか経っていないので(取材は2/10)効果はこれからというところですが、毎年冬場の重油代が非常に大きかったんですけど、今年はそれがなく、全体を合計しても重油代に比べれば安く済んでいるなっていうのは、請求書を見て目に見える効果かなとは思いますね。それは素直にうれしいです。

    今後ミカド電装商事に期待することは?

    更新した空調設備の下でポーズをとっていただきました

    原華織総支配人 長いお付き合いをしたいと思っています。私の知らない分野なものですから、どんどんそういった環境問題に対する情報などを、メルマガでも結構ですので、色々教えていただきたいなと思います。サービス面に関しましても何かとマメに連絡を取っていただき、とても親身に対応してくださいましたので、これからも長いお付き合いをしていきたいです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

    (編集部) 原様、今回は大変ありがとうございました。CO2削減もさることながら、今に至るまでのヒストリーがとても興味深く思わず身を乗り出してお話を伺ってしまいました。
    看板犬のチャーリーちゃん(女の子)はすでにご高齢で取材中もずっと寝ていましたが、ときおりむくっと起きて私たちのお話を聞いているようなそぶりが印象的でした。まだまだ長生きしてほしいです。春が待ち遠しいですよね。


    取材先:株式会社坊源 山景の宿「流辿」 総支配人 原華織 様
    取材日:2020年2月10日
    取材者:ミカド電装商事株式会社 代表取締役 沢田秀二 ミカドONLINE編集部