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今回も前回に引き続き、設備投資による省エネルギーの実践(及びCO2排出削減 以降「省CO2」という)についてです。(表伸也)
変圧器
変圧器の高効率化
多くの企業様は高圧受電で、受配電設備として高圧キュービクルを使用しているかと思います。この高圧キュービクルはあって当たり前(何か役立っているとは感じられない)の設備のため、あまり気にかけられないことが多いです。しかし、実際には非常に重要な設備であり、これが故障すると全く電気が使用できなくなる状態に陥ります。
例えば、東北電気保安協会等に電気主任技術者と毎月の定期点検をお願いしている企業様が多いかと思いますが、点検で変圧器の更新が必要である旨指摘されていても、全く対応されて無く30年も使い続けている企業様が多いのが実態です。
変圧器は全く電気を使用していなくても損失が発生します。この損失は時間単位では小さいですが、24時間365日発生しますので、結果的に大きな値となります。したがって、変圧器を最新の高効率なものに更新することで、省CO2とランニングコストの削減が図れます。
更新の費用対効果は小さいですが、空調設備等の更新に合わせて補助金を活用して実施することで、費用対効果の向上と現金手出しの軽減を図ることができます。故障すると非常に大変なこと(長時間の停電)になりますので、ぜひ耐用年数内で更新してください。
その他
空調用冷温水発生機のパッケージエアコン化
まだ、冷温水発生機により冷水及び温水を作って空調を行っている企業様も多いかと思います。特に重油や灯油を使用した冷温水発生機の場合、CO2の排出量が非常に大きいですので、冷温水発生機を使用したシステムから個別のパッケージエアコン(電気やガス)を使用したシステムに更新することで、大きな省CO2効果が得られます。
ボイラーの燃料転換やエコキュート化
現在灯油や重油を使用する古いボイラーにて温水を作って給湯を行っている場合、都市ガスやプロパンガスのボイラーに更新することで、大きな省CO2効果が得られます。また、ボイラーから電気式ヒートポンプを用いたエコキュートに更新すると更に大きな省CO2効果が得られます。
ファンやブロワーのインバータ化
業種によって様々ですが、換気ファン・ブロワー・集塵機、等を使用している場合、大抵は使用時間も長時間で且つ最大出力で使用していることが多いです。しかし、実際に必要な風量はもっと小さいことが多く、ファンは最大出力でもダクトで風量を絞っている場合があります。
この場合は、インバータを取付け必要な風量まで回転数を下げる(ダクトは100%開)ことで、非常に大きな効果が得られます。ファン等を回しているモーターの電力は回転数の3乗に比例しますので、例えば回転数を1/2にした場合、消費電力は1/8になります。
ある企業様の診断をしたところ、インバータ化することで工場全体の電力の1/2以上削減することが可能であることが判明したことがあります。年間の削減電力量料金は数百万円に及ぶ結果です。ただし、単なる設備の更新ではないため、少々検討に知識が必要です。当社等の専門家にご相談すると良いでしょう。
(次回につづく)
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表伸也(おもて しんや)
ミカド電装商事(株)取締役環境・エネルギー本部長 上席エネルギーコンサルタント
大手通信会社のエネルギー管理士として、大規模データセンター等のエネルギー管理業務に長年携わり、数多くの電力設備・空調設備等の省エネ実績を持つ。近年では、太陽光発電設備の設計・施工等創エネに関する実績も豊富な、エネルギーマネジメントのエキスパートである。2018年より環境省環境カウンセラー。
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