
1969年、アポロ11号によって人類は初めて月面に降り立ちました。その後も複数回の有人月面探査が行われましたが、1972年のアポロ17号を最後に、人類は月へ行っていません。
しかし今、世界は再び月に注目しています。NASAが進める「アルテミス計画」をはじめ、中国やインド、日本なども月探査を積極的に進めています。では、なぜ人類は再び月を目指しているのでしょうか。
今回は「月」そのものの姿について掘り下げていこうと思います。
月が「宇宙の中継基地」に?
かつての月探査は、「人類が月へ到達できるか」という挑戦そのものが大きな目的でした。
一方、現在の月探査は少し意味合いが異なります。
NASAが進めるアルテミス計画では、将来的に月面で継続的な活動を行うことが目標のひとつとして掲げられています。その先には、火星をはじめとするさらに遠い宇宙への有人探査も見据えられています。アルテミス計画には、アメリカやカナダ、イタリアなど66カ国が参加しており、日本もその1つです。
地球から火星へ直接向かうのは技術的にもコスト面でも大きな課題があります。そこで注目されているのが月です。地球より重力が小さい月を拠点にできれば、宇宙船や物資を送り出しやすくなります。そのため月は現在、「人類の次の宇宙開発を支える拠点」として期待されています。
また、計画名にもなっている「アルテミス」は、ギリシャ神話に登場する月の女神が由来となっています。今回の計画は女性初の月面着陸達成という点にも注目が集まっているようです。
日本は,
日本人宇宙飛行士の月面着陸や、月面探査車「ルナ・クルーザー」を運用、有人基地「ゲートウェイ」への物資補給など、重要な役割を果たしています。
さらに、国土交通省でも月面での建設活動に向けた検討が進められています。私たちが月に住める日も、そう遠くないのかもしれません。
月は片面しか見ることができない
身近な天体である月ですが、実は分かっていないことも少なくありません。その一つが、「なぜ地球からは同じ面しか見えないのか」という現象です。ウサギがいると言われていますが、いつ月を見上げても、月の模様は変わりませんよね。
月は地球の周りを約27.3日かけて公転していますが、自転する周期もほぼ同じ約27.3日です。そのため、月は常に同じ面を地球へ向けながら回っています。これを「同期自転」と呼びます。

私たちが普段見ている月は、月全体の半分程度に過ぎません。自転軸が傾いていることなどによって、地球からは月の59%程度しか観測することができないのです。
反対側の「月の裏側」は地球から直接見ることができず、人類が初めてその姿を確認したのは1959年、旧ソ連の探査機ルナ3号による撮影でした。
毎日のように見ている月でさえ、その半分は長い間謎に包まれていたのです。
月に水はある?
近年の月探査で特に注目されているのが、「月の水」です。かつて月は、乾燥した岩石だけの世界だと考えられていました。
しかし近年の観測によって、月の北極や南極付近にあるクレーター内部には、水の氷が存在する可能性が高いことが分かってきました。
特に極地には、太陽の光がほとんど届かない「永久影」と呼ばれる場所があります。こうした場所は極めて低温であるため、水が氷の状態で残ることができると考えられています。
さらに2020年には、NASAが月面の日が当たる場所にも水分子が存在することを確認したと発表し、大きな話題となりました。もちろん、すぐに利用できるほど大量の水が存在するわけではありません。
しかし、もし月で水を確保できるようになれば、飲料水としてだけでなく、酸素や燃料の原料として利用できる可能性があります。だからこそ各国は、月の水資源に強い関心を寄せているのです。
日本の月探査も世界から注目されている
日本も月探査で大きな成果を上げています。
2024年、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」が日本初となる月面への軟着陸に成功しました。SLIMの最大の特徴は、高い精度で狙った地点へ着陸する「ピンポイント着陸」です。
今後の月探査では、水資源がある場所や科学的に価値の高い地点など、限られた場所を正確に目指す必要があります。そのため、降りやすい場所に降りるのではなく、「狙った場所へ降りられる」技術が重要になります。
SLIMは目標地点から約55メートルという高精度で着陸し、日本の探査技術の高さを世界へ示しました。このような特徴から、ムーンスナイパーと呼ばれることもあるようです。
当初は3年という短期間での打ち上げが計画されていましたが、度重なる延期で計画は数年遅れることとなりました。日時が決定してからも天候の影響でさらに延期になるなど、打ち上げ成功までにかなり時間を要しました。それだけに、成功した瞬間の喜びはひとしおだったに違いありません。
日本はかつて探査機「かぐや(セレーネ)」で月の詳細な観測を行いましたが、当時は着陸ミッションではありませんでした。そのため、今回のSLIMによる月面着陸は、日本の宇宙開発にとってまさに長年の悲願が実ったと言えるでしょう。
月探査は巨大なロケットだけでなく、こうした精密な技術の積み重ねや研究者の苦労によって支えられているのですね。
月は、人類が半世紀以上前に到達した天体です。しかし、その役割は今、大きく変わろうとしています。月にはまだ解明されていない謎があり、水資源など将来の宇宙開発に関わる可能性も秘めています。そして世界各国は、その可能性を確かめるために再び月へ向かっています。
夜空に浮かぶ月は、昔から変わらないように見えます。けれどもその表面では今、人類の未来につながる新たな挑戦が進んでいます!
























