前号ではBCPを組み立てるうえでの基本的な考え方と発災による事業停止の影響と復帰までの猶予期間についてお伝えしました。今回は復旧を早めるために捉えておかなければならない、ボトルネックの把握方法についてお伝えして行きたいと思います。※全ての記事はこちら
(ミカド電装商事(株) 代表取締役 沢田 秀二)
何さえあれば継続できるか考える
ここで言うボトルネックとは、業務再開に必要不可欠となる重要な要素(経営資源)の中で必要な量が必要なときまでに入手できなければ復旧レベルを上げる事ができないものです。逆に表現するならば、「これさえあれば、どうにか事業継続できる」といったものです。
まずは各事業者様で自社のボトルネックが、なんであるかをとらえる事が重要です。製造業であれば、原材料であったり工作機械。小売業であれば商品や売り場。物流であれば車輛や燃料といったものがこの要素となり得るでしょう。 また、資金確保などはどの業種業態にも共通する要素です。
ボトルネックの把握は、まず発災による被害を細かく予想したうえで、何も対策をしなければ復旧までにどのくらい時間がかかるのか、どのレベルまでどういった復旧ができるのかを推定します。
次にそれと比較して、業務再開までの猶予期間や猶予レベルに耐えられない要素をボトルネックと定義づけてこれに対策を講じていきます
被害(リスク)の分析・評価方法
発災による被害(リスク)の分析・評価方法としては
①発生事象の洗い出し
想定できる災害を出来るだけ多く(多ければ多いほど広範囲の事象をカバーできる)
②リスクマッピング
発生の可能性と影響度の順位付け
③発生事象によるリスクの詳細分析
リスクマッピングにより上位(発生可能性が高く、影響度が高いもの)に順位付けされたリスクについて、発生事象によって自社の重要業務にどう影響するか、また現状(対策を講じる前の状態)でその影響の解消に要する時間と復旧の度合を検討する
当社では、まず考えられる発生事象を洗い出し、発生可能性順に並べると①~⑦が考えられた。
①停電
②情報システム・通信障害
③大雪
④交通事故
⑤火災
⑥震度6以上の大地震・津波
このうち影響度が高いものは、影響が高い順番に⑤、⑥、②、①、③、④、であることが推測されたので、これらが当社に及ぼすリスクを考え、これが復旧するまでにどのくらいの時間が必要か?どのくらいの水準まで復旧させてば事業が継続可能かを検討した。
当社について検討してみました
⑤の火災
火災により社屋が焼損したとすると、お客様データー、業務進捗データー、OA機器、工具各種に損害が及び一時的に全業務が停止してしまいます。
各データーはクラウドサーバー上に保管されているので、OA機器が入手できればすぐにでもお客様とのやり取りは可能なレベルとなりますが、大部分の重要な業務を開始するには代替社屋を賃貸で準備して各機器、工具を揃える必要があるので最低でも1カ月はかかるでしょう。
⑥の震度6以上の大地震・津波
7年前に経験した東日本大震災規模の地震・津波が発生したとすると、社屋に問題が発生しなかったとしても、通信インフラが復旧するまでの1~2日は外部との連絡は取りにくくなるため全業務が停止。
通信が復帰しても、他のライフラインや交通網が復旧するまでの7日~10日程度は短時間勤務となったりガソリン不足で移動に制限があるため事務処理は出来ても、お客様や現場に伺っての工事はできないでしょう。
②の情報システム・通信障害と①の停電
これは、他の発生事象と連鎖的に発生する事が予想される最たる事象ですが、単体で発生した場合には半日もあれば全て復旧出来る事象となります。
連鎖的に発生した場合には、他の事象により復旧時間とレベルが決ってくるでしょう。
③の大雪
当社は豪雪地帯に立地しているわけでは無いので、直接的な被害というよりは交通渋滞や物流の麻痺、停電といった被害が考えられますが、これらは長くても24時間あれば解消できるものと思われます。
④の交通事故
これは他の発生事象と連鎖的に発生する事もありますし、単独で発生する事も考えられる事象ですが、製品の輸送や現場に向かう途中での事故については代替輸送さえ可能であれば半日で解消するでしょう。
例として6点ほど列挙させていただきましたが、実際にはあらゆる災害(地震、台風、火災、水害、事故など)について考えられるリスクを広範囲に捉える事がすぐれたBCPの基となる事を付け加えておきます。
発災による被害(リスク)の分析・評価が出来たところで、ボトルネックとなり得るリスクを見つけ出して重点的に対策を立てていく事となります。
当社としては、⑤火災、⑥震度6以上の大地震・津波あたりにより被害を受ける重要な要素(経営資源)がボトルネックとなりそうです。
本号では、復旧を早めるための要素であるボトルネックについてお伝えさせて頂きました。
次号はいよいよ事業継続戦略・対策についてお伝えいたします。
乞うご期待
(沢田 秀二)