【リチウムイオン電池講座】<斜め下から掘り下げる>①リチウムは「天使の石」から発見された平和の使者?

    みかドン ミカどん今回からスタートする新連載『リチウムの斜め下』シリーズです。先月まで当社会長(沢田元一郎)が執筆連載していた、リチウムイオン電池の簡単解説『横からリチウム』の本文から、毎回毎回、気になる?センテンスをピックアップして斜め下から掘り下げてみます。(※このシリーズの全記事はこちら

    リチウム?アルフェドソン?葉長石?

    以下は、会長が書いた『第1回 だからリチウムってなに(怒)!』からの一文です。

     

    リチウムは1817年にヨアン・オーガスト・アルフェドソンが葉長石の分析によって発見しました。葉長石は日本では陶磁器の萬古焼の材料として知られています。

    今回は、
    ●リチウムってそもそも何かしら?
    ●発見者のヨアン・オーガスト・アルフェドソンってどこの人?
    ●葉長石って何だろう?
    の3点について、斜め下?から掘り下げます。

    本当はみんなが名前を知っているリチウムという元素

    以前は新参者扱いだったリチウムイオン電池も、最近はすっかり市民権を得て来ました。リチウムイオン電池は、充電が早く、高い出力密度を持ち、寿命も長い、という特長があるため、携帯電話やパソコンには早くから導入されてきました。また、最近では、全個体電池という新しい技術も開発されて、EV普及の鍵などともいわれています。

     

    「それじゃリチウムって何?」と問われると、鉄や金・銀・銅と違って、見たことも触ったこともないので、急に弱気になってしまいますが、リチウムは元素です。原子番号 は3、元素記号は Liのアルカリ金属元素です。そうです、「すいへーりーべーぼくのふね」の「り」なんです。高校時代、あんなに何度も唱えたのに、なかなかつながらないものですね。

     

    リチウムは元素周期表で見ると、一番左にあって、金属元素の仲間では一番上。周期表は元素を原子番号順に並べたもので、相対的な類似性を読み取ることができますが、はじっこに位置するリチウムの場所からも、何やら「一番」の特長がありそうが気がしてきますよね。

     

    (出典:元素の周期表

     

    さてそのリチウムですが、スウェーデンの化学者ヨアン・オーガスト・アルフェドソンによって1817年に発見されました。1817年というのは、日本では第11代将軍徳川家斉の時代で杉田玄白さんが亡くなった年。アメリカでは、ジェームズ・モンローが第5代米国大統領に就任し、ニューヨーク証券取引所が発足した年だそうです。

     

    元素の発見の順番としては、全体の中間よりもちょっと早いぐらい。リチウムのあとも、ケイ素やアルミニウムなどが見つかっていますので、思ったよりは発見が古い感じです。

    (出典:その原子の単体が発見された順番

     

    ヨアン・オーガスト・アルフェドソンさんとは?

    リチウムの発見者、ヨアン・オーガスト・アルフェドソンは、スウェーデンの化学者です。卸売業や工場のオーナーを営む、裕福な中産階級の家庭で育ちました。大学で法学や鉱物学を納めたのち、ストックホルムで知り合ったイェンス・ベルセリウスの私設研究室に通うようになり、そこで1800年に発見された新しい鉱物(葉長石=ペタライト)の分析をしている過程で、リチウムを発見しました。

    アルフェドソンが師事したイェンス・ベルセリウスは、「タンパク質」や「触媒」といった化学用語を考案し、自身もいくつかの元素を発見するなど、近代化学の理論体系を組織化し、集大成した化学者だそうです。リチウムの発見には、恩師のリーダーシップも一役買ったのかもしれませんね。ちなみにその後、1823年にグリーンランドで発見されたアルベゾン閃石はリチウムを発見したアルフェドソンにちなんで命名された石だそうです。

    葉長石とは?

    さて、アルフェドソンさんは、リチウムを葉長石(ようちょうせき)の分析によって発見しましたが、葉長石というのは別名ペタル石やペタライトとも呼ばれ、原産地はストックホルムやハーニンゲ、日本では福岡も産地として有名とのこと。当社会長が『第1回 だからリチウムってなに(怒)!』で「陶磁器の萬古焼の材料」と述べているのは、土鍋の材料にペタライトを混ぜることで耐熱性向上するため、直火にかけても割れにくくするのが目的のようです。(※土鍋とペタライトについては、とてもいい資料がありましたので、こちらのPDFをご覧ください)

     

    (画像:Powerstone Wiki

    葉長石はパワーストーンとしても人気があるようです。パワーストーンとしての葉長石(ペタライト)は「天使の石」とも呼ばれ、平和を持たらすという意味があるようです。『第1回 だからリチウムってなに(怒)!』では、リチウムは当初軍用目的だったと書かれていますが、天使の石から発見されたリチウムは、やはり平和のために利用されるのが一番いいのかもしれません。