SDGsと書いてエスディジーズと読みます。Sustainable Development Goals(サスティナブル・ディベロップメント・ゴールズ)の略称で「持続可能な開発目標」と訳されています。でもそれだけ聞くといったい何のことだか意味も使い方もさっぱりわかりませんよね。
持続可能な社会を目指す17の目標がSDGs
持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す」国際目標です。上の公式アイコンで示されている通り、全部で17のゴールがありそれぞれの項目には、合わせて169のターゲット(具体的な指標)が掲げられています。
持続可能なというのは、今後も長く長くずっと先まで続いていけるという意味ですが、そんな当たり前のことをなぜわざわざ言っているかというと、それが当たり前ではないかもしれないからです。
ここに来て急に「持続可能な社会」が叫ばれ始めたのは、産業革命以降急激に活発化した人間活動により、経済・社会の基盤である地球の持続可能性が危ぶまれていることが背景にあります。
いま盛んに言われている、温室効果ガスによる地球温暖化などがこれに相当しますが、そもそもの発端は、1972年、マサチューセッツ工科大学のメドウズらにより発表された「成長の限界」という提言で、その内容が「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」という衝撃的なものでした。
つまり、世界規模では倍々ゲームのように掛け算で増えていく人口に対し農産物の収穫は年に一度であり、そのうち農産物が人口増に追い付けなくなり、食糧難や飢餓・貧困で、近い将来かなり突然に人口と工業力の制御不能な減少が訪れると報告したのです。
そのため、危機感を覚えた人たちが「どうすれば限界を迎えずに成長していけるか?」を少しずつ検討始めたのが、SDGsの考え方の始まりです。なのでSDGsのD、つまりディベロップメントは決して宅地や都市の開発だけを意味しているわけではなく、むしろ、社会の成長とか進化・進展などととらえた方が、よりわかりやすいかもしれません。SDGsは世の中が限界を迎えずに進化・発展を続けていくために国連で定められた世界共通の目標なのです。
地球環境やエネルギーだけがSDGsではない
日本では、東日本大震災以来浮き彫りになったエネルギーの課題や急がれる地球温暖化対策が、ここに来て世界的なSDGsの潮流に内包された感があるため、国内でSDGsと言えば、どうしてもそちらの分野が先に頭に浮かびますが、SDGsの目標はそれだけではありません。
以下に掲げる通り、トイレの普及から女性の平等にいたるまで、ゴールもターゲットも多岐にわたっています。169のターゲットに関しては、自省の取り組みと関連付けて掲載されている農林水産省のサイトがわかりやすいので、そちらをご覧ください。
17のゴール
1.貧困をなくそう
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
2.飢餓をゼロ
飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
3.すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
4.質の高い教育をみんなに
すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
5.ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
6.安全な水とトイレを世界中に
すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネ ルギーへのアクセスを確保する
8.働きがいも経済成長も
すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
10.人や国の不平等をなくそう
国内および国家間の格差を是正する
11.住み続けられるまちづくりを
都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
12.つくる責任 つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
13.気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
14.海の豊かさを守ろう
海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
15.陸の豊かさも守ろう
陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
16.平和と公正をすべての人に
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
17.パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
急激に浸透してきたSDGs
先日何気なくテレビに目をやったら、小泉進次郎環境大臣がSDGSのバッジを襟元に付けていました。
また、以前もご紹介いたしましたが、平成30年(2018年)にSDGs未来都市(内閣府地方創生推進事務局)に選定された宮城県東松島市では昨年も敷地内の建物に横断幕が引き続き掲げられていました。
そして最近では、(SDGsという言葉はありませんが)生協のチョコレートにも「この商品を購入することで、持続可能な農業を営む農園を支えることにつながります」という一文が掲載されています。
私たち編集部がSDGsという言葉を初めて知ったのは、2年前に当社の社長 沢田秀二がパネリストを務めた『第2回環境経営セミナー』(東北経済産業局主催)でした。
その第一部の特別講演で講師を務められた、株式会社日立製作所 環境戦略本部 副本部長:小野寺浩幸氏(宮城県気仙沼市出身)(肩書は当時)が講演の中で、「これからはSDGsが大きな潮流のキーワードになる」と何度も強調されていたことが今も心に残っています。
そのときは社長の取材が目的だったため、記事中、講演の内容については残念ながら一言も触れてはいませんが、スライドで初めて見せられたカラフルに並んだアイコンが印象的でそれをずっと覚えていました。
➡ 当社 代表取締役 沢田秀二がパネリストを務めました。『第2回環境経営セミナー』
それが2年後にあっという間に現実になり、さすがにグローバル企業の担当者というのは「世界の流れに敏感なものだな」と今頃になって思います。
民間企業にも取り組みを求めているSDGs
上の図は先に紹介した農林水産省のサイトから、食品産業に関わる各企業のSDGsへの取り組みの様子を画像にしたものです。(実際の図はこちらでご確認ください)
SDGsにはMDGs(ミレニアム開発目標)という前身があり、そちらは極度の貧困や飢餓の撲滅など8つの目標を掲げ、2015年を目標年として2000年に制定されたものでした。
MDGs 8つの目標 | |
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けれど目標の内容が国やNGOが主体になるものが多く、一人ひとりが当事者意識を持ちにくいということがありました。また、先進国が途上国に対して目標を定めるようなニュアンスがあり不平等という不満もありました。
そこで2015年に新たに国連総会で決議されたSDGsでは、国や途上国だけでなく、先進国の課題も網羅し、民間企業による取り組みを求めた点が大きな違いとなりました。
日本では、CSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)は、利益の一部を社会に還元する活動だけを指すものと解釈されることが多かったため、企業業績の悪化や経営者が交代した際に継続が難しくなるケースがありましたが、それは決して「持続可能」とは言えません。
持続可能性を重視するSDGsでは、本業そのものにSDGsに考え方を組み込むことを前提にしています。そのため、ボランティアや寄付ではなく、事業を行い、企業が収益をあげることが同時に社会や地球環境の改善につながるようなビジネスモデルが求められています。
環境意識の高い欧州では、SDGsに準拠しているかどうかで企業や製品を評価する発想も浸透してきていますが、日本でも、新たな事業機会の獲得や、リスクの低減、『共通言語』としてのコミュニケーションツールなど、企業活動に大いに活用できるため、SDGsに取り組む企業が増えています。
その機運が昨年あたりから高まりを見せ、SDGsやようやく日本にも根付き始めてきたと言えそうです。
出典:
SDGs(持続可能な開発目標)とは? 農林水産省 外務省 など