赤ちゃんの肌にも使える「ワセリン」。身近な保湿剤ですが、その歴史は1859年、ペンシルベニア州の油田から始まりました。石油採掘機や油田掘削機に付着する、黒いドロドロとした「ロッドワックス」。ベタベタしていて機械の故障や誤動作を引き起こす厄介者です。しかし、危険な場所で働く労働者たちは、それを軟膏として使うと切り傷や擦り傷を早く治す効果があることを知っていました。
そのロッドワックスを精製してワセリンの生みの親となったのが、ロバート・チーズブローという科学者です。彼は1870年に工場を設立、量産化に成功し、スキンケア製品としてワセリンを広めていきました。チーズブローは96歳で亡くなるまでワセリンを「万能薬」と信じ、なんと毎日スプーン一杯分を食べていたんだとか。
現在は、ワセリン自体に薬効は無く、だからこそ安全に肌を保護して本来の治癒力を引き出すものと考えられています。今年の春には「ワセリンでアトピー性皮膚炎の発症を予防できる可能性がある」というニュースが話題になりましたが、チーズブローも今後の研究に期待をかけていることでしょう。