刑事コロンボに見る当時の最新機器(2)大型ラジカセ

    みかドン ミカどん

    刑事コロンボは1968年から2003年まで米国で放送された全69話の人気ドラマです。このシリーズではドラマの中で当時の最新鋭機器という扱いで描かれている家電やシステムについてご紹介をしています。

    第58話「影なき殺人者」に登場する大型のラジカセ(バブルラジカセ)

    今回は刑事コロンボ(新・刑事コロンボ)の第58回「影なき殺人者」(原題:Columbo and the Murder of a Rock Star)登場するラジカセについてです。

    米国では1991年(平成3年)、日本では1995年(平成7年)に初回放送されたこの回では、トリックにもストーリーにも全く絡まないのに、何度かラジカセが登場します。

    物語のストーリーは、4年間夫婦同然に暮らしてきて世間的には妻と思われている若い内縁の妻の日常的な浮気を知って、裁判では負け知らずの高名な刑事弁護士が彼女に対して犯行に及んでしまうというものです。

    犯行現場は内縁の妻と浮気相手が定期的に逢瀬を重ねていた海辺の別荘です。そこで二人が逢っていたときに、犯人の弁護士のある策略で女性だけが殺されてしまいます。

    ラジカセはコロンボがその殺人現場に直行したときに登場します。野次馬の中にいた、大きなラジカセデッキをかついだ若者に目が留まったコロンボが、若者に「それ、いくら?」と聞くと彼は「定価で299ドル」と答えます。ラジカセは大型のダブルカセットデッキでイコライザー付き。

    若者がかついでいるラジカセは、調べてみるとどうやら「LEVIS 161」という製品のようです。

    (画像:GoodFon.com

    1991年の為替レートは135円前後らしいので、日本円にすると4万円と少しというところでしょうか。この機能で4万円強というのは、個人的には妥当な気もしますが、コロンボは「そんなにするの?」と驚き、若者から「ディスカウントショップなら安く買える」と教えてもらいました。

    そのすぐあと、コロンボはそのやりとりを見ていた現場の若い警官には「もうすぐ甥っ子の誕生日でね」と説明しますが、それはあくまでも言い訳で、本当は自分が欲しかったのかもしれません。

    犯行現場にあった遺品のラジカセさえも欲しがるコロンボ

    この回でラジカセが何度か登場するのは、殺された若き内縁の妻が元ロックスターだったからです。そして彼女が内緒で付き合っていた相手はバンドマン(ドラマー)でした。そんな背景から、ドラマに彩を添える音楽つながりのワンポイントとしてラジカセが使われたのだと思います。

    犯行現場となった海辺の別荘のキッチンにも亡くなった内縁の妻の遺品と思われるラジカセがありました。それに目を留めたコロンボが捜査アシスタントの婦人警官に「いくらぐらいだと思う?」と尋ねます。そちらは高級品のため、「400~500ドル(54000円~67500円)はするんじゃないでしょうか?」という婦人警官の返答。

    後日、コロンボはその遺品のラジカセを、捜査対象の犯人(弁護士で被害者の内縁の夫)におねだりするんですよ。そしてすぐに撤回するのですが、えー!公職なのにお茶目を通り越してやりすぎでしょ?と思ったりしますが、それも彼特有の何かの揺さぶりなのかしら?

    そしてエンディング。事件解決後のエンディングロールでコロンボは、愛車の助手席に「40%OFF」「DHOTI’S DISCOUNT」という大きなシールが貼られた大型ラジカセを載せて、甥がよく聞いていた被害者のヒット曲を一緒に歌っています。

    結局コロンボはディスカウントストアに行って40%OFFで欲しかったラジカセを手に入れたんですね。(購入目的は本当に「甥っ子の誕生日」だったのでしょうか???)

    しかもよく見るとそのラジカセは日本のAIWA製品なのですから笑えます。というか「安売り商品が日本製かよ!」と突っ込みを入れたい気持ちも・・・

    Columbo murder of a rockstar ending HD より)

    バブルラジカセを知っていますか?

    (画像:ビデオ工房トパーズ

    日本で最初のラジカセは、松下電器(現:パナソニック)が1967年に売り出した「カセットテープレコーダーと2バンドラジオ(FM・AM)を組み合わせたRQ-231」と言われています。やがてラジオが3バンドになるなど、機能が充実してきてAIWAやSONYなどの各社が箱型の商品を次々に発売しました。

    それが1980年代になると、ダブルカセットにCDプレイヤーも追加され、スピーカーも高品質になった大型の「CDラジカセ」商品が主力になりました。

    (画像にがAV

    この頃、CDラジカセはどんどん豪華になっていき、松下電器の上面オープン型の製品は「コブラトップ」(鎌首を上げているコブラのような形状だから)という名称で当時は大いにはやりました。

    その当時の大きくて多機能で豪華なラジカセは、日本の一部のマニアの間では「バブルラジカセ」と呼ばれています。検索してみると、今でも熱いファンやコレクターがいらっしゃるようです。

    さて『刑事コロンボ』の中では、最新鋭の電子機器やシステムをコロンボが使いこなせずに愚痴を吐く場面が多いのですが、なぜかこの回はあからさまに欲しがって最後には買ってしまうのですから、今回は異色の回かもしれませんね。

    ちなみにこの回で、犯人の弁護士がオーナーとして建設しているビルの工事現場のロケは、米国で住友建設が建築中のビルが使われているそうです。言われてみると確かに最初のほうのシーンで、内縁の妻さんが住友(旧)のロゴの入ったヘルメットをかぶっていました。

    今回に限らず、日本人や日本製品はドラマの中でチョイチョイ出てくるので、そのうち特集してみたいです。

    (ミカドONLINE 編集部)


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