当社は蓄電池(バッテリー)を扱う会社ですが、そうお伝えすると多くの方に「車のバッテリーですか?」と聞かれます。ミカド電装で扱っている蓄電池は産業用蓄電池と呼ばれ、主に建物の非常用電源や太陽光発電などに使われるものです。皆さまの疑問にお答えして産業用蓄電池について簡単に解説するシリーズ第3回目はすっかり忘れられがちな保守・点検についてです。※全記事はこちら
すっかり忘れられがちな電源装置のメンテナンス
当社は産業用蓄電池の会社ですが、蓄電池だけを工事しているわけではありません。今までこのシリーズをお読みの方はお気づきの通り、蓄電池は直流で充電して直流で出力するしくみのため、電力会社の電気(交流)で充電するためには、必ず「交流→直流」に変換する整流装置を手前に設置しなければなりません。
また、いつどんな機器をどこまでバックアップするかにより、今度は蓄電池からの直流を交流に再変換する装置が必要となる場合もあります。産業用機械や緊急用設備には直流で動く専用装置が多数ありますが、オフィスのOA機器などコンセントに差して使うものはすべて交流であり、産業用蓄電池と「交流⇔直流」の変換は、切っても切れない関係と言ってよいでしょう。
当社では蓄電池を含めたそれらを、直流電源装置や無停電電源装置というパッケージやシステム一式として納入しているケースが多いわけですが、電源装置は耐用年数が長く故障が起こりにくいうえに、非常用(非常時使用)に限っていえば、施設が停電にならないと動作しない装置であることから、不具合に気づきにくく、しかも日常的には忘れ去られている存在と言えなくもありません・・・
一般社団法人日本内燃力発電設備協会の調査によると、公共設備などで重要度の高い防災用自家発電設備でさえも、保守点検の不備により災害時に想定通りに動かなかった実例が複数あるようです。
上の報告では、東日本大震災のときに調査対象の4,811台のうち233台が不始動・停止に陥り、そのうち23台が震災に起因しないメンテンナンス不良による不始動・停止だったとされています。バッテリーの放電が3件あるのも、気になりますね。
この数を多いとみるか少ないとみるかは判断がわかれるのかもしれませんが、これは数の問題ではなく、正しく作動しなかった装置がどこに設置されてどのような目的を果たすはずだったのか。評価はそれによってされるべきなのかもしれません。
緊急時の命綱なのに防災設備の点検率も異常に低い
実は電源装置の点検はすべてが義務化されているわけではありません。しかし報告が義務化されている消防設備点検の実施率が高いかと言えば決してそうではなく、未実施は法令違反に当たるにも関わらず、全国平気で49.2%と想像以上に低く、当社がある宮城県ではそれをさらに下回っていることに驚かされます。
私たち一般市民は、法律で定められているのだから、ほとんどの建物が法令を遵守しているのだろう、と安易に考えてしまいますが、実体はかなり違うようです。
過去記事のアーカイブ(保存ページ)になりますが、2016年4月10日の神戸新聞の記事で気になるニュースがありました。
記事によると、取り締まろうにも違反者が多すぎて追いつかない現状が報告されていましたが、義務化されていても違反者が後を絶たずに実施率が低いのですから、そうでない電源設備の場合はさらに意識が薄いというのが現実なのかもしれません。
当社でも交換時や新規納入時に見積りを提示して、定期メンテナンスを組み込む場合がありますが、耐用年数を過ぎても20~30年そのまま使い続けていらっしゃる、先代、先々代社長の時代からのお客様などもおり、先方からのご連絡がないとなかなか把握しにくいという現状があります。
大病院や工場や公共施設、それに重要なデータを扱う金融機関などはこの限りではないと思いますが、一般的なオフィスビルや福祉施設などでは、期限が過ぎても設備が更新されていない例もあるようです。
電源設備は耐用年数が異なる装置や部品の組み合わせ
消防法で消防設備の点検義務は設備の所有者にあることが明記されているように、電源設備も「あるから安心」と とらえるのではなく、ユーザーの皆様にもメンテナンスの重要性をもう少し知っていただきたいというのは当社の願いです。
電源装置の中でも、特に蓄電池は消耗品という感覚でもよいかと思います。車のバッテリーの充放電能力が数年経つと落ちてくることを実感できるように、産業用蓄電池では短いもので5~7年、長いものでも13~15年で劣化しますが、メーカーの数字はあくまでも期待値であり、実際の劣化は温度や湿度や換気など、環境によって大きく変化します。
また、直流電源装置や無停電電源装置本体は概ね15~20年程度の更新期限が設けられていますが、それよりも早く蓄電池のほうが先に劣化してしまうこと。また、各部品の交換年数も短いものが多数あり、前述した自家発電装置の燃料フィルタ目詰まりや流量計目詰まりなども、消耗品の交換を怠ったのが原因に思われます。(電源設備部品の交換推奨年数はこちらをご覧ください)
保守点検を怠るとこうなります
最後に蓄電池についてのちょっと怖い話です。蓄電池は現代の技術力で安全に使える装置として設計されていますが、電解液は希硫酸ですし、希硫酸の水が電気分解により水素(可燃性)や酸素(助燃性)を発生させています(※一般的な鉛電池の場合)。そのため蓄電池は点検を放置し、寿命を超えて使い続けると、緊急時に機能しないばかりでなく、以下のような事故やトラブルの原因にもなり得るのです。
破損・・・伸びた正極が亀裂を生じさせます
破裂・・・極版の接触不良個所がスパークして内部の水素ガスに引火
異臭・発煙・発火・・・亀裂より電解液(希硫酸)が漏れ出し最悪発火
熱逸走・・・経年劣化で内部抵抗が増すと異常な温度上昇により破損
※東京消防庁の資料では「非常用の蓄電池設備から出火した火災事例」の報告も挙がっています。
また、事故・トラブルに到らなくとも、電源設備の不具合は、緊急時に本来の役目を全く果たしません。これも非常に危険なことです。
1.蓄電池に不具合があると・・
- 非常照明が点灯しない。または、法定基準時間に満たない。
- 非常用発電機が始動しない。
- しゃ断機の操作が出来ない。(復旧が遅れる)
- ネットワークシステムがダウンする。監視装置がダウンする。
2.整流器・インバータの主制御回路部品に不具合があると・・
- 蓄電池の充電が出来なくなる。(負荷停止)
- 出力電圧・電流の自動制御が出来なくなる。(負荷障害・蓄電池への悪影響)
3.整流器・インバータのその他制御回路部品に不具合があると・・
- 状態表示が出来なくなる。(電圧等の計測不能)
- 故障発生時に警報が発報しない。(故障が発見できない)
- 保護連動が動作しない。(非常照明が点灯しない・蓄電池過放電)
(GSユアサHPより転載)
皆様にお願いしたいこと
まずは、産業用蓄電池の更新期限をご確認ください。通常、黄色いシールが貼られていることが多いのですが、それがない場合でも製造年月は貼ってあるはずなので、品番を基にメーカーのHP等でご確認ください。誰でもすぐにできること。それが期限の確認です。
確認の方法がわからない、更新期限が過ぎていた、など、対処法がわからない場合は、ぜひ当社にご相談ください。当社では工務スタッフも営業スタッフも全員が蓄電池設備整備資格を持っています。産業用蓄電池を専門に扱うプロの知識でアドバイスをさせていただきます。
ミカド電装商事 0120-653-363
〒984-0051 宮城県仙台市若林区新寺3丁目4-30
(➡次回:④簡単解説!直流電源装置とは?)