(前回) 世界初のリチウムイオン電池は日本製 ➡
(第4回)前回はリチウムイオン電池が世に出るにあたってはずせない日本人科学者のお話をしました。
今回は現在使われているリチウムイオン電池のバリエーションとその特徴についてお話いたします。
現在量産されているリチウムイオン電池には正極の材料に何を使うかでおおむね5つに分類され、さらに負極の材料、電解液の保持のしかたで各々1つのバリエーションがあります。
少々めんどくさい内容ですがぜひお付き合いください。
A.正極の材料による違い
1)コバルト系
正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2)を、負極には黒鉛を使用しています。1991年に世界で最初に商品化されたのもコバルト系でした。熱暴走の危険があることから自動車用には使用されず、スマホやパソコンなどモバイル機器を中心に使用されています。
※熱暴走とは、発熱が発熱を生む正のフィードバックにより温度制御ができなくなる現象のことで、発煙や発火の原因になります。
パナソニックなど多くのメーカーが製造しています。
2)マンガン系マンガン酸リチウム(LiMn2O4)を正極材料に使用している電池で、負極は黒鉛です。結晶構造が比較的安定性を持つので熱暴走しにくい。また原材料もコバルトの約1/10ということから大型化しやすく、主に車載用途として使われています。
リチウムエナジージャパン、オートモーティブエナジーサプライ、LGchemなどEVメーカーに供給するメーカーが多く採用しています。
3)リン酸鉄系
リン酸鉄系(LiFePO4)を正極材に使用している電池(負極は黒鉛)であり、リン(P)と酸素(O)の結びつきが強く、電池内部で発熱があっても結晶構造が崩壊しにくいために熱暴走が起こりにくく、
安全性が高い電池と言われています。鉄の原材料価格がマンガンの数分の一程度と言われていて、高い製造コストを抑えることのできる(であろう)BYDなど中国系メーカの採用が目立ちます。
4)三元系
三元系(NMC)とは、ニッケル、マンガン、コバルトの3つの頭文字を取った化合物系の電池です。
車載向けにコバルト系よりも安全性を高め、改良されたもので2000年に日本とアメリカで開発されました。リチウムエナジージャパンやブルーエナジーなどで製造しています。
5)NCA系
NCAとは、ニッケル、コバルト、アルミニウムの3つの頭文字を取った化合物系の電池です。負極の黒鉛にセラミックスをコーティングするなどニッケル系の課題であった安全性という点を克服して、PHVにも使用されています。
プライムアースEVエナジーが製造しています。
B.負極材料チタン酸系
黒鉛が使われることの多い負極材にチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を使用しています。平均電圧が2.4Vと他の電池の3,7V近辺と比べて低いためエネルギー密度が低いことが欠点としてあげられていますが、外力などで内部短絡が生じても熱暴走が起きにくいとされ、他の電池と比べ寿命も相当長い(6倍)と言われています。
東芝が製造しています。
C.電解質
リチウムポリマー電池
電解質にポリマーを加えてゲル化したものです。ポリマーはゲル状なので液漏れしにくいのが特徴です(爆発引火しないわけではありません)。
外装容器にアルミラミネートが使え形状が比較的自由なため、スマホ、タブレット、デジカメなどに使用されていますが、一部車載用としても使われています。
・・このように一口にリチウムイオン電池と言っても各メーカーが入り乱れての混戦模様。まさしく百花繚乱ですね。
きっとこの記事を読んでいただいている間にも、開発競争にしのぎを削る各社から様々な「未来の電池」が発表されていくことでしょう。
次回は今話題の「全固体電池」をはじめ、様々な開発途上の有望株を紹介していきたいと思います。