これまでは主に整流器の歴史をお伝えしてきましたが、これから数回は現在の鉛蓄電池の種類について解説をしていきます。様々な呼び方があってわかりにくい鉛蓄電池を少し整理してみました。
わかりにくい蓄電池の種類
このシリーズでは「電池産業の軌跡」と題して、産業用蓄電池や整流器の歴史を書いてきましたが、これより先は歴史があって今も一番ポピュラーな鉛蓄電池について解説していきます。
まず基本的なところですが、当社(ミカド電装商事)は非常用電源装置など蓄電池設備の販売・施工・メンテナンスを行う会社です。当社で扱う蓄電池はビルや工場や公共施設の電源室に設置されて商用電源(電力会社の電源)をバックアップするものです。
そこでこの分野の蓄電池を自動車用の蓄電池と区別して産業用蓄電池といいます。また、据置型蓄電池などと呼ばれることもありますが、そちらは持ち運べる移動式(ポータブル)蓄電池と対比させている呼び名になり、モノとしては同じです。このように電池産業の世界では、同じものに対して様々な名前が存在しています。蓄電池をバッテリーと呼ぶ人も大勢いらっしゃるように、記事を書く側にとっても統一感があまりないのが悩みの種です。
さらにわかりにくいのが鉛蓄電池の種類です。開放型⇔密閉型という分け方もありますが、MF(メンテナンスフリー)型、液式など、様々な表現がある一方で、蓄電池メーカーの製品区分ではそれらとは別な言葉が使われています。
オートバイのバッテリーでは「開放型⇔MF(メンテナンスフリー)型」という分類にほぼ統一されているようですが、産業用蓄電池の分野では色々な呼び名が混在しており、メーカーによっても多少の違いがあります。
鉛蓄電池の基本の分類は発生するガスの処理方式の違い
そこで今回は公平を期して、日本電気技術者協会のサイトから「鉛蓄電池の分類」を転載し、そこに前述の言葉を当てはめてみました。
構造 | 極板構造 | 形式 | シールの種類 |
ベント形 (=開放型) (=液式) |
クラッド式 | CS-□ | |
ペースト式 | PS-□ HS-□ |
||
シール型 (=密閉型) |
クラッド式 | CS-□E | 触媒栓式 |
ペースト式 | PS-□E | ||
HS-□E | |||
ペースト式 | HSE-□ | 制御弁式 (=※メンテナンスフリー型) |
|
MSE-□ |
鉛蓄電池の種類はまず蓄電池内部で発生するガス処理の違いで分けられます。
鉛蓄電池の電解液は希硫酸ですが、これは硫酸の水溶液であるため、蓄電池の充電により溶液中の水分が電気分解されて、水素ガスや酸素ガスを発生させます。そのガスをどう処理するかで蓄電池の形式が変わります。
ガスを通気孔から蓄電池の外部に放出するタイプの蓄電池をベント型蓄電池といいます。これは「開放型」であり「液式」です。
一方、ガスを外には出さず内部で処理する構造になっている蓄電池もあります。それをシール型蓄電池といいます。シール型はガスを外に出さないので「密閉型」です。
触媒栓式は補水のタイミングが年1,2回の点検時のみ、制御弁式は補水の必要がないので、電解液の保水などが必要なく定期的な点検だけで使用できます。定期点検が必要なため、厳密には「メンテナンスフリー」とは言えませんが、※ベント型に比べてメンテナンスの負担が少ないため、そう呼ばれている場合もあるとご理解ください。
この分け方は鉛蓄電池だけでなくアルカリ蓄電池にも一部当てはまります。次回からはこの区分を元にそれぞれの特徴を説明していきたいと思います。
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事: 日本電気技術者協会 など