面白い記事を見つけました。
ウンチは未来だ!世界のエネルギーをウンチでまかなえるか? – GIZMODO
https://www.gizmodo.jp/2019/03/power-the-world-with-poop.html
以下にGIZMODOの記事の一部を引用します。
燃料としてのポテンシャル
ウンチを放置しておくと、バクテリアに分解される際にメタンが豊富なバイオガスが生成され、このガスはエネルギーとして再利用できます。また、塊を乾燥させると粉末状の燃料や、石炭に近いエネルギーを持つ可燃性のブロックを作ることもできます。
空想のようにも思えますが、先進国の水処理プラントの多くはこのエネルギーを使って運営のコストを助成しています。たとえば、英国の水処理センターの一つは、ウンチが消費エネルギーの半分をまかなっています。
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先進国の都市の場合、流された排泄物は複雑な下水路を通って、水処理施設にたどり着きます。そこでフィルターや沈砂池を通過して様々な固形物が取り除かれ、汚水のみが残ります。
その後汚水は、汚泥を底に沈殿させるために沈殿池に入ります。ここで汚泥が微生物に分解されている間にも、水はフィルターや化学物質、さらなるバクテリアを使って環境に戻せるまで浄化されます。このプロセスを経ている間にも、微生物の発酵によってバイオガスが生み出されます。
これらのシステムは、発展途上国ではまだまだ普及していません。世界保健機関(WHO)によると、世界人口のうち23億人がもっとも基本的な衛生施設を持たず、8億9千2百万人が未だ野外で排泄しています。プライベートなトイレ、またはちゃんとした下水道と水処理施設に繋がったトイレで排泄している人は世界人口の39パーセント、29億人でしかないのです。
動物の排泄物をつかった発電はバイオマス発電としてすでに実用化され、東北に関連する新しいニュースとしては、「牛フン利用で国内最大級のバイオガス発電所 山形・飯豊で今月上旬着工(毎日新聞)」などが挙げられます。
ですが人間のウンチというのは初耳だったので、記事を読み進めてみたところ、地球温暖化防止と同時に衛生対策の側面も強く、下水が普及しておらず野外で排泄している人々のウンチをなんとかしよう、という試みのようです。
それにしても、世界人口の61%がトイレでウンチをしていないなんてびっくりです。レポートの試算によると、これらの人々のウンチを活用することにより、”メタンガスだけでも少なくとも2億ドル相当が生成でき、1千万件の家の電気がまかなえ、固形から生成できるエネルギーも考慮すればさらに多くのエネルギーを得る”ことができるそうです。
アフリカではすでに活用している国もあるようですが、問題はその運用プロセス。汲み取り式では紙も混ざってしまうため(編集部予想)ピュアなウンチではありませんし、経過時間による劣化や密閉性の問題、そして何よりコストがかかるため、人口の増加に財政が追い付かず出資予定者が撤退してしまったカンパラの例などが紹介されていました。
日本では消化ガス発電という名前で普及していた!
さて、記事中の”先進国の水処理プラントの多くはこのエネルギーを使って運営のコストを助成”という一文に目が留まり、少し調べてみると、すでに日本では高い割合で下水汚泥をエネルギー資源として再利用していることがわかりました。
下水の汚泥なので純粋なウンチではありませんが、下水処理施設には汚泥の容積を減らすために消化タンクが設置されており、そこから発生するガスは従来から消化槽の加温に使われてきました。
そこにFIT(固定価格買取制度)が施行されたため、今までは焼却するしかなかった余剰ガスをつかって発電・売却する事例が急増し、平成28年度(2016)には2.3億kWhを発電し、これはその2年前(2014)の下水道施設の総電力消費量の約2%に相当するそうです。
堅実に増加している背景には、年々下落した太陽光発電に比べ、バイオガス発電のFIT買取価格は今もなお39円/kWhを維持していることが挙げられます。
わが宮城県でも昨年(平成30年/2018)の4月に、県内最大の処理能力を持つ仙塩浄化センターにおいてFITを活用した売電事業が開始されました。出力は350kWで、昨年度は1年間で約290万kWhを発電しました。これは一般家庭約800世帯の年間使用電力に相当し、当初の見込み(144万)を大きく上回っているようです。
ちなみにこの施設の名前は「仙塩浄化センター消化ガス発電所」と言います。最近の日本では下水汚泥の処理プロセスで発生するガスを消化ガス、それで発電する方式を消化ガス発電と呼んでいることを、今回初めて知りました。
なんとウンチで飲料水も!
ところで冒頭にご紹介したGIZMODOの記事では、人間の排泄物から綺麗な飲用水を抽出する機械があることにも触れられており、個人的にはそちらのほうがもっと驚き!
開発したのはジャニッキ・バイオエナジー社(現:セドロン・テクノロジーズ社)ですが、そもそものプロジェクトを立案し、出資をしたのはなんとあのビル・ゲイツのビル&メリンダ財団です。そして発電と言うよりも、やはり新興国の子供の命を守るために、安全な水を提供して衛生状態を改善したい目的が強いようです。
YouTubeには装置でつくられた水をビル・ゲイツが美味しそうに飲む動画もアップされており、現時点で350万回再生されています。気になるお味のほうですが、ビル・ゲイツ氏によれば「「おいしい、ボトルから飲む水と変わらない」そうです。最初の過程で摂氏1000度で燃やすので、臭いが残ることはないらしいです。
テスト機が完成して飲料水の生産を開始したのが2014年なので、この話題はすでに過去のものかもしれませんが、現在までの3年間に同社の2台のプラントがセネガルで実証実験を行っており、コスト面を精査する目的で、今後もさらに1台が出荷されます。確認の結果、利益が見込める場合はセネガル企業のデルビック・サニテーション・イニシアチブズが一基購入する予定です。
ちなみにこの装置一式のプラントはオムニプロセッサーと命名されています。オムニというのは「全、すべて」をあらわすラテン語ですから、ドラえもん風に訳すと「なんでも処理機~♪」ということになるのでしょうか。もしかしたら英語圏の人にとっても、ちょっとしたユーモアやウィットを感じさせる名前なのかもしれませんね。
今回は資源としてのウンチのお話でした^^
参考サイト:
ウンチは未来だ!世界のエネルギーをウンチでまかなえるか?(GIZMODO)
下水道施設における地域バイオマスの資源・エネルギー利用(国土交通省PDF)
平成30年度消化ガス発電所運転状況(宮城県)
OUR HISTORY(SEDRON TECHNOLOGIES)※英語
オムニプロセッサー ビル・ゲイツが支援する究極のリサイクル!人間の「排泄物」からできた水(PMTV)
ビル・ゲイツ氏が挑む「未来のトイレ」(THE WALL STREET JOURNAL JPAN)