
春から初夏にかけて、道端や空き地でオレンジ色の可憐な花を咲かせているのを見かけるナガミヒナゲシ。名前はわからなくても多くの人が目にしたことがある雑草だと思います。
可憐だけれどたくましい生命力

春の暖かい日差しの中、アスファルトの隙間や空き地で、風にそよぐオレンジ色の可憐な花を見かけたことはありませんか? ひょろっと伸びた茎の先に咲くその花は「ナガミヒナゲシ」といいます。

ナガミヒナゲシ(長実雛罌粟)という名前は、その名の通り「長い実」をつける「ヒナゲシ」の仲間であることに由来します。
花が終わると、ぷっくりとした徳利(とっくり)のような形の実ができますが、これが他のケシの仲間と比べて細長いのが特徴です。
ナガミヒナゲシもともと日本に自生していた植物ではなく、地中海沿岸が故郷の外来種です。日本で初めて確認されたのは1961年の東京だと言われており、輸入された穀物などに種が混じって、はるばる海外からやってきたのではないかと考えられています。今ではすっかり日本の風景に溶け込んでいますが、実は新参者だったようです。
見た目は、薄くてシワのあるオレンジ色の花びらが4枚、茎や蕾にはふわふわの白い毛が生えていて、なんとも愛らしい姿をしていますが、見た目と異なり、コンクリートのわずかな隙間からでも力強く茎を伸ばす生命力あり、そこが「侵略者」と呼ばれる所以でもあります。
「特定外来生物」ではないものの、生態系への影響を懸念して、見つけ次第なるべく駆除するように広報している自治体もあるようです。
可憐ですが「かぶれ」にご用心

ナガミヒナゲシの最大の武器はその圧倒的な繁殖力です。一つの花からできる実の中には、なんとゴマ粒よりも小さな種が平均1,600粒も入っていると言われています。
そして、一つの個体からは多いもので100個以上の実がつくこともあります。 計算すると、たった一本のナガミヒナゲシから最大で15万粒以上もの種がばらまかれる可能性があり、この小さな種が風に乗ったり、車や人の靴の裏にくっついてあっという間に分布し、そしてアスファルトの隙間やコンクリートの割れ目など、他の植物が育ちにくいような場所でもスクスクと成長します。
さらに、ナガミヒナゲシには「アレロパシー」という特殊能力があります。これは、根から他の植物の成長を邪魔する化学物質を出す能力のことですが、いわば「周りのライバルを弱らせる毒」を使い、自分たちが育ちやすい環境を自ら作り出しているのです。ナガミヒナゲシが群生している場所では、他の雑草があまり生えていないのはこのためかもしれません。
ナガミヒナゲシがケシの仲間と聞くと危険なのでは?と心配になるかもしれませんが、ナガミヒナゲシは法律で栽培が禁止されているケシとは種類が違い、麻薬成分は含んでいません。ただし、弱い有毒なアルカロイド成分を含んでいるため、素手で茎を折ったりすると手がかぶれることがあります。また、ペットが誤って大量に食べてしまうと中毒を起こす可能性もあるそうですが、ペットがこの花を実際に食べるかどうかは疑問?です・・
見た目のかわいさとは裏腹に、驚異の繁殖力と生存戦略を持つナガミヒナゲシですが、意外にも意識しないと目に入らない方も多く、編集部では「見たことがない」というメンバーもいました。
ですが一度気が付くと、春から初夏にかけて、けっこうあちこちでよく咲いているのがわかります。今度道端で見かけたら、そのしたたかな生き様に思いを馳せてみてくださいね。
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事:大田区ホームページ:外来植物にご注意ください など