エネルギー関連用語は難しい横文字が多く、ちょっと聞いただけでは何のことかすぐにわからない言葉も多いですよね。今回は色々なメディアで目にするけれどその都度意味が違うような気がしてつかみどころがない「コージェネレーション」について基本的な解説をして、最後のエネファームや燃料電池にも触れてみました。
コージェネは給湯器付き(または蒸気発生器付き)自家発電装置
今年(2021年)の1月、NEDOと丸紅ユティリティ・サービス(株)と川崎重工業(株)がウズベキスタンで、中型ガスタービン高効率コージェネレーションシステムの実証運転を開始したそうです。2019年の小型ガスタービンに続き今回が2か所目の施設とのこと。
ウズベキスタンのフェルガナ地域では人口の集中・増加を背景に電力や熱の需要が拡大している反面、電力は遠方からの送電に依存しており、熱供給も設備の老朽化によってエネルギー効率が低いという課題がありました。その解消に向けた今回の実証運転では、38%の省エネルギー効果を目指しています。
高い省エネ効果が見込まれるのは、このひとつのプラントで発電と熱供給を同時に行うことができるからです。
つまりコージェネレーションシステムとは、ひとつ(一式)のプラントや一台の装置で電気も熱も供給一緒にできるシステムのことを指しています。プロセスとしてはまず発電装置を使って電気をつくり、次に発電時に排出される熱を回収して給湯や暖房などに利用するシステムの総称です。平たく言えば「給湯器付き自家発電装置」のようなものですね。
電力会社の発電所では、毎日大容量の発電をしていますが、発電の際に出る熱は廃棄され、再利用はされていません。
近くにそれを利用できる施設や設備があれば別ですが、大型発電所は需要地と離れて建設されているため捨てるしかないのが現状です。
また電力会社の電気は送電線を通るうちに熱や振動になって失われてしまうためエネルギー効率も落ちます。
つまり電気も熱も使う場所で発電しその場で利用したほうがより省エネになる、ということから、地球環境のために推奨されているわけです。
コージェネレーションは新しい技術というわけではなく、ヨーロッパの寒冷地では以前より、ボイラーと蒸気タービンを組み合わせたコージェネレーションシステムが地域暖房に応用されてきました。
日本でも近年は東日本大震災や大規模災害による停電などがあり、分散型電源の役割が重要視されるようになりました。そのためリーマンショックで一気に落ち込んだ年間の導入台数がまた増え始めているところです。
発電時の廃熱も一緒に利用すればエネルギー効率75~80%!
コージェネレーション(熱電併給)は、天然ガス、石油、LPガス等を燃料として、エンジン、タービン、燃料電池等の方式により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステムです。
回収した廃熱は、蒸気や温水として、工場の熱源、冷暖房・給湯などに利用でき、熱と電気を無駄なく利用できれば、燃料が本来持っているエネルギーの約75~80%と、高い総合エネルギー効率が実現可能です。(商用電力の場合は「電力のみ」で約40%)
現在はCO2排出量が石油・石炭よりも相対的に少ない天然ガスやLPガスが燃料として使われていますが、動力源は用途によって分かれます。
ガスタービンは大出力かつ高圧の蒸気を発生することが可能であるため、工場動力・地域冷暖房など大規模な産業用に使用されること多く、連続稼働にも適しています。
ガスエンジンは起動停止を毎日行い、かつ電力需要が高い場合に適し、蒸気ではなく温水が取り出せるため(大型機は蒸気も可)給湯ニーズが高い病院,ホテル,スポーツセンターや高い発電効率を必要とする工場などに広く導入されています。
次に導入実績ですが、産業用システムを業種別で見た場合は、「食品・飲料」分野での導入件数が多いようです。一方、発電容量で見た場合は「化学・石油化学」がトップになっています。(発電容量のグラフはこちらをご覧ください。)
コージェネレーションは都市部の大型ビルなどでも採用されており、六本木ヒルズでは森ビルと東京瓦斯を株主とする「六本木エネルギーサービス」が、ビルに電気と熱を供給する専業会社としてコージェネレーションシステムを運営しています。
また宮城県でも、一例として以下のようなところで導入されています。
- 仙台駅 (宮城県仙台市)
- 東洋タイヤ仙台工場(宮城県岩沼市)(ガスタービン/都市ガス)
- 宮城県立こども病院(宮城県仙台市)(ガスエンジン/都市ガス・LPガス)
- ゼライス仙台港工場(宮城県多賀城市)(ガスエンジン/都市ガス)
- Fグリッド(宮城県大衡村)(ガスエンジン/都市ガス)
- 仙台第一生命タワービルディング(宮城県仙台市)(ガスエンジン/都市ガス)
家庭用エネファームもコージェネレーション。燃料電池とは?
規模感が全然違うため同類には思えないかもしれませんが、エネファームも「発電+熱」を同時に供給してくれるコージェネレーションシステムのひとつです。ただしエネファームは「燃料電池」をつかった「家庭用」に限られます。
エネファームというのは「燃料電池実用化推進委員会(FCC)」が2008年に名付けた愛称で、正式には「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」といいます。つまり「燃料電池を使って電気とお湯を作り出す家庭用専用装置」を限定的に指す名称で、現在はパナソニック、アイシン精機、京セラの三社が製造販売をしています。
燃料電池と聞くと難しそうな感じがしますが、化学反応で電気を発生させるための主原料を、外から供給するタイプの電池(というよりは発電装置)ととらえればよく、この場合はそれがガス(都市ガス・LPガスいずれも可)になります。
乾電池や蓄電池は特定の化学物質と極板が箱の中に固定されていますが、燃料電池はそれとは異なり、化学反応させるための主要な物質を外部から補充して発電させるため、火を燃やすときの燃料になぞらえて「燃料電池」と呼ばれているわけです。
エネファームによる「熱電併給」は、まずガスに含まれる水素が”燃料”の役目となり空気中の酸素と反応して発電します。
水を電気分解すると水素と酸素になりますが、その逆に水素と酸素を反応させると電気と水が発生します。そしてそのときに発生する熱を給湯に活用するしくみです。
エネファームはENEOS(2015年)や東芝(2017年)が市場から撤退したため活気が失われてしまいましたが、2019年10月に京セラが参入して新製品を発表したことで再び注目されるようになりました。最近も、パナソニックが停電時の電気供給に対応した新機種を発売するなど、新しい動きがあるようです。
東日本大震災前の2009年に販売された初期のエネファームは電気代の節約が「売り」で、停電時の家庭用バックアップ電源としては使えない機種や、使えても動作条件が限られているなど、あまり万全なものではありませんでした。
野村総合研究所の資料によれば、ここ数年のエネファームの単年販売数は鈍化しているようですが、今回のパナソニックの新製品で今後は停電需要が増えていくかもしれません。エネファームが世に出て10年以上経ち、温暖化防止や災害対策など世間の意識も随分変わった気がします。今回はコージェネレーションの基礎知識について解説させていただきました。
(ミカドONLINE編集部)
参考記事:コージェネレーションのメリット(YouTube) ウズベキスタンで中小型ガスタービン高効率コージェネレーションシステムの実証運転を開始 ヒルズの電力を支える縁の下の力持ち、六本木エネルギーサービスとは 【熱機関】コージェネレーションを導入するメリット、検討条件は? 火力発電所における未利用熱の活用に向けた課題と検討事例の紹介 知っておきたいエネルギーの基礎用語~「コジェネ」でエネルギーを効率的に使う コージェネレーションシステムと潤滑油 | ジュンツウネット21 コージェネレーション – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア パナソニック、一戸建て向け家庭用燃料電池の新商品発売 野村総合研究所 「エネルギー市場動向2020」 など
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