編集部には悩みがあります。エコカーに関する記事を書くときに、プラグインハイブリッドカーでは長いのでPHVと略語で表しても、それで果たして皆さんにご理解いただけるのか?という素朴な疑問です。それは私がずっとそうだったからです。そこでエコカーとはいまだ無縁なガソリン車ユーザーの私がここで一度エコカーの略語をまとめてみました。
そもそも今までの自動車はエンジンで動く乗り物でした
自動車がエンジンで動くことは誰でも知っています。けれど、いまやその大前提が崩れつつあります。
なぜならこれからの自動車はエンジンではなくモーターで動くものに切り替わっていくからです。これは自動車の未来を塗り変えるとても大きなできごとです。
しかし、車好きの方や理系・技術系の皆さんは別として、通常、日々の暮らしに追われる一般市民が車の動力を意識することはあまりありません。
そのため多くの皆さんが私のように、なんとなくよくわからないまま、車関係のニュースなどを完全にスルーしているかもしれませんが、エンジンとモーターは仕組みが異なるまったくの別物なんです。(私はこのサイトに関わるまでは全くわかっていませんでした)
当たり前かもしれませんがエンジンとモーターは全く違う別物です
簡単におさらいをすると、エンジンはガソリンなどの燃料を内部で燃焼させて動力にする内燃機関と呼ばれる装置です。わかりやすく言えば、ガソリンを気化させて空気と混ぜ、小爆発を小刻みに繰り返すときの勢いでピストンが往復運動し、それが車輪の回転運動に変換されます(※ロータリーエンジンを除く)
一方、モーターは電気で動く回転装置です。モーターは工場の設備から精密部品の内部に至るまで、あらゆる所で機械を動かすために使われていますが、自動車のモーターはそれらの超高機能製品です。
自動車の駆動用モーターは回転運動を車輪に伝えるだけでなく、急加速、急減速など回転数の急激な変動にも難なく対応し、それでいながらエンジンのように多くの部品を必要とせず、基本的なつくりはエンジンよりもシンプルです。
そして何よりもモーターは電気で動く機械なので燃料をまったく必要としません。ということは、もしも今後の数十年ですべての車がモーター駆動になるなら、今後ガソリンは不要になり、世の中からガソリンスタンドはなくなってしまいます。代わりに充電ステーションがどんどん増えて、家のカーポートにも充電のための電源(コンセント)が必要になるかもしれません。
車の駆動体がエンジンからモーターに切り替わるということは、そういった社会全体の大きな変化を含むできごとであることを踏まえたうえで、以下に略語の解説をしていきたいと思います。
HV(ハイブリッドカー)はエンジンとモーターが自動で切り替わり、ユーザーが自分で充電はできません
トヨタプリウスなどの登場で、日本で最も普及しているエコカーが「HV」です。「HV」は「Hybrid Vehicle」の略で「ハイブリッドカー(自動車)」のことです。
ハイブリッドには「複合、組合せ、異種の掛け合わせ」などの意味がありますが、HVはエンジンとモーターの両方を搭載しているのが特徴で、これらを車の走行プログラムが効率的に使い分け、もしくは組み合わせることで低燃費を実現します。
HVは走行シーンに合わせて自動的にエネルギー効率の最大化(走行モードの切替)を図りますが、モーターに電気を供給する蓄電池への充電も走行中に自動で行われるため、ユーザーが自分で充電する機能はありません。
PHV(プラグインハイブリッドカー)はユーザーが自分で充電できるHV(エンジン/モーター併用車)
近年、耳にすることが増えてきた「PHV」は「Plug-in Hybrid Vehicle」の略で、「プラグインハイブリッド自動車」のことです。そのまま訳すと「外部電源からの充電が可能なHV」となります。
HVのモーターを動かすバッテリーは、走行時、減速時のエネルギーを利用して自動的に充電する仕組みになっており自由に充電することはできませんが、これを充電ステーションや自宅などで自分で充電できるようにしたものがPHVです。
日本ではトヨタプリウスPHVが有名ですが、トヨタプリウスPHVはノーマルプリウスよりもさらに80万円ぐらい高めの価格帯となっています。
HV(ハイブリッドカー)もPHV(プラグインハイブリッドカー)も、今までの車に比べたら十分エコなのですが、ガソリン走行(化石燃料を使用)が可能なため規制の厳しいヨーロッパなどではあまり評価されていません。
ヨーロッパなどでは、地球温暖化防止に貢献するのはEV(電気のみで走る自動車)という考え方が一般的です。
EV(電気自動車)はバッテリーの電源だけで走る完全モーター駆動の電動車
テスラ モデル3(画像:RESPONSE)
「EV」は「Electric Vehicle」の略で、電気自動車のことです。自宅や充電スタンドなどで車載バッテリーに充電を行い、モーターのみを動力として走行します。エンジンを使用しないので、走行中に二酸化炭素を排出せず、環境性能においてはエコカーの中でもトップクラスです。
ガソリン車のように燃料を燃焼させて走る車ではないので、走行音も非常に静かです。そのため日本では車が近づいたことを周囲に知らせる車両接近通報装置(疑似音)の搭載がPHVを含めて近年義務化されました。
日本では日産リーフが一番知られていますが、世界的には2003年に米国で設立されたEV専門メーカーのテスラ社が有名です。
ちなみに当社(ミカド電装商事)には三菱自動車のEV「i-MiEV(アイミーブ)」がありますよ。
水素と酸素で発電しモーター駆動するFCV(燃料電池自動車)は水素社会への日本の挑戦(でした?)
「FCV」は「Fuel Cell Vehicle」の略で、直訳すると「燃料電池自動車」です。
燃料電池は水素と酸素の化学反応から電気を取り出す発電装置のため、これを電池と呼んでいいいのか疑問も残りますが、FCV(燃料電池車)は高圧の水素を燃料にして発電しながら走る車と言えます。
FCVは電力をモーターに送って走り、走行時に発生するのが水(水蒸気)だけなので、二酸化炭素の排出量はもちろんゼロです。
燃料となる水素は水素ステーションで補給しますが、FCVも水素ステーションもまだまだ普及には至っておらず、FCVとして2014年に世界で初めて発売されたトヨタMIRAIや2016年に発売されたホンダクラリティフューエルセルは、国の普及政策を受けて公用車として使われているケースも多いのではないかと思われます。ちなみに東北の水素ステーションは福島に3か所、宮城に1か所あるのみです。
統計では今年7~9月期の世界のFCV販売台数は2594台と非常に少なくその分車両価格もかなり高額です。
身近で手に入りやすい水素を活用する技術が確立すれば、資源の乏しい日本でもエネルギー的に世界をけん引できる存在になれるため、日本は水素社会の実現を目標に技術で先行することを目指していましたが、ここ数年は後発の海外メーカーに追い抜かれつつあります。
「脱ガソリン」の流れが止まらない
先月、菅首相がG20サミットで2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする目標を示し、内外に衝撃が走りましたが、海外ではすでに各国が将来的なガソリン車の新車販売禁止を発表し、主要な自動車メーカーも今後の開発はしないと宣言しています。
日本でも30年代半ばまでにガソリン車販売を事実上、禁止するという政府方針が毎日新聞などで報道されました。
いまや「脱ガソリン」の流れは止めようがなく、そのうちエコカーしか選択肢がない時代が来るのかもしれません。そんな未来のためにも、HV、PHV、EV、FCVの違いをここで一度まとめてみました。
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事:「HV」「EV」「PHV」「FCV」とは?いまさら聞けないエコカー用語 日本が先行した燃料電池車、海外企業に追い抜かれ感 水素ステーション一覧 日本は水素先進国?!現代(ヒョンデ)NEXOはなぜ日本に?日本のミライやクラリティ FUEL CELLなどと徹底比較! 世界で販売された燃料電池車 4分の3が韓国・現代製=1~9月 現代自動車、22年に日本再参入 FCVやEVに特化 など