ハイレゾという言葉を初めて聞いた時は、一部のオーディオマニアに向けた差別化の仕様だと感じていました。けれど以前のように大量のCMが流れなくなった今はむしろ、新しい仕様として浸透しつつある印象です。個人的には当初まったく無視していたため、音の品質がよいのはなんとなくわかりますが、なにがどうよいのかさっぱりわかりません。そこで今さらですがハイレゾとは何なにか?をちょっと調べてみました。
ハイレゾの品質の良さは写真の画素数の違いに似ているかも
ハイレゾとは、ハイレゾリューションオーディオ (High-Resolution Audio) のことです。Resolutionは解像度ですから、高解像度な音源という意味になりますが、この場合の比較の対象はCDです。つまりCDより音質がいい音源をつくる技術と再生する技術の両方が必要となります。
解像度といわれて真っ先に思い出されるのが写真の画素数だと思います。デジタル写真はモザイクのように画像を小さな四角の集まりで表現していますが、それがどれぐらい密であるかによって画質が大きく異なります。
デジタル音源も同様に、どのぐらいの密度でデジタル化するかによって、再現性が違ってきます。CDは16bit/44KHzという基準でフォーマットされています。
これは音量をデジタルに変換する段階で16bit=2の16乗(65535)まで小刻みに調節できて、かつ1秒間に44.1kHz(キロヘルツ)=44,100個のデータを処理するという基準です。
私はCDがこの世に出てきただけでも、音質の良さに感動してしまったのですが、それから40年近く経って時代は変わり、音楽を取り巻く技術も環境も大きく変化しました。
そこで一般社団法人人日本オーディオ協会では、2014年の総会において現行CDよりも高い規格の機器や音源をハイレゾリューションオーディオ(サウンド)として推進していくことを決定しました。そこには低迷する国内オーディオ市場を活性化する目的がありました。
同時に利便性が優先される現代で行き場を失ってしまった、高品質の音源を求める層を取り込みたい狙いもあったようです。
音源を高い精度でデジタル化するハイレゾ
日本の電子機器に関する業界団体「JEITA(電子情報技術産業協会)」では、ハイレゾオーディオを先述の通り「音楽CDまたはDATを超えるスペック」と大まかに定義していますが、日本オーディオ協会では、JEITAよりももう少し細かい定義付けを行っています。
比較的知られているのは、24bit/48kHz以上という基準ですが、”以上”なので24bit/96kHzというもっと高い規格もあります。いずれにしても音をデジタルに変換するときの分析能力が飛躍的に上がり、対応している装置で再生すれば今までは拾えなかった微妙な音のニュアンスや臨場感なども感じられるはず・・・なのですが、私自身がそれを瞬時に聞き分けて”ゾクゾクする”かどうかは定かではありません^^
ハイレゾは人の耳に聞こえない音でも人の耳に聞こえない状態で忠実に再現されるため、かなり生音に近いといわれています。日本オーディオ協会では以下の条件を満たすものをハイレゾオーディオと定め専用のロゴマークを付与しています。(ちなみにこのロゴは元々SONYが作ったものをアレンジしたようです)
アナログ信号に関わること
- 録音マイクの高域周波数性能: 40kHz以上が可能であること。
- アンプ高域再生性能: 40kHz以上が可能であること。
- スピーカー・ヘッドホン高域再生性能: 40kHz以上が可能であること。
デジタル信号に関わること
- 録音フォーマット: FLAC or WAVファイル96kHz/24bitが可能であること
- 入出力I/F: 96kHz/24bitが可能であること。
- ファイル再生: FLAC/WAVファイル96kHz/24bitに対応可能であること。
(自己録再機は、FLACまたはWAVのどちらかのみで可とする) - 信号処理: 96kHz/24bitの信号処理性能が可能であること。
- デジタル・アナログ変換: 96kHz/24bitが可能であること。
聴感に関わること
- 生産若しくは販売責任において聴感評価が確実に行われていること。
- 各社の評価基準に基づき、聴感評価を行い「ハイレゾ」に相応しい商品と最終判断されていること。
- なお、この項は、前項との択一とはしない。
無線接続に関わること
下記条件を満たす無線製品を対象にハイレゾオーディオワイヤレスロゴの使用を許諾します。なお、前記ハイレゾオーディオロゴ許諾条件を満たす無線製品には従来通りハイレゾオーディオロゴの使用を許諾します。
- 無線接続は、ハイレゾオーディオ機器またはハイレゾオーディオワイヤレス機器間を接続し、ディジタルオーディオ信号を伝送するものであること。
- 無線接続においては、別途定めたコーデックを用いたオーディオ信号を伝送することができること。
- 無線接続は、“デジタル信号に関わること“で規定されているオーディオ信号を伝送するには、十分な帯域を持たないものであること。
ハイレゾは元々パソコン用語でした。
ご存じの方もいるかもしれませんが、元々ハイレゾはパソコンで「システムの標準」よりも高い画面解像度(ピクセル/ドット数)でディスプレイ表示が可能であることを示す用語でした。
昔のパソコンは、NEC(現在のNECパーソナルコンピュータ)の「PC-9800シリーズ」なら640×400ピクセル、現在のほとんどのパソコンの源流となっている「PC/AT互換機」なら640×480ピクセルが標準解像度でした。これらの解像度よりも高い表示を行えるグラフィックス(描画)機能を備えるパソコンは、「ハイレゾパソコン」と呼ばれていたのです。
けれど今は、高解像度表示が“当たり前”になってしまったので、画面解像度を示す用語としての「ハイレゾ」は事実上死語となっていました。
敢えてハイレゾと断らなくても最近のスマートフォンやイヤフォンは、入出力可能な数字としてはたいていが広義のハイレゾ(CD以上)には対応しているものが増えているようです。
PCに関しては設定が必要な場合もあるそうですが、確認のために自分のノートパソコンのスピーカーのプロパティを今見てみたところ、数字的には一応対応していました。(ということでよいのでしょうか?)ですが、PCのスピーカーではそれなりですよね。
もしこのPCでハイスペックなスピーカーにハイレゾ音源を出力したら、素晴らしい音になるのかしら?
要するにハイレゾは音源データの送り手と受け手の両方が対応していないと、良さを実感することができないということですね。
ハイレゾヘッドフォン/イヤフォンの売り上げが伸びています
CD(ディスク)が初めて世に出た1982年は、音楽を何らかのメディアで聴くのが当たり前の時代でした。
けれど時代は変わり、いまや音楽は単なるデータファイルと言っても過言ではありません。しかもリスナーは1曲1曲を購入するのではなく、配信サイトに月額登録料を払い、いつでもどこでもスマホ等で大量に楽しむサブスクリプションサービス(定額サービス)にどんどん移行しています。
ハイレゾ音源の配信はその際のサービス選択や対応デバイスのニーズを高めますが、2015年の統計では、最も売り上げが伸びているのはイヤフォンだそうです。音楽をスピーカーで楽しむ人はますます少なくなっている現状ですが、今年はコロナ禍の影響でおうち時間が増えたため、ハイレゾ音源を配信するサイトも好調とのことです。
ただしハイレゾはデータ量が多い分だけ容量も大きいため(10曲で1ギガ以上)、スマホのアプリでストリーミング再生する人はそれに見合う契約プランが必要になりますし、ダウンロードする場合も十分な容量が必要です。
最後に補足になりますが、ハイレゾは前述のようにFLAC/WAVファイルを対象にしたものであり、通常のダウンロード音源に使われているmp3やAACなどはハイレゾ音源用のフォーマットにはなりません。どちらも人の耳に聞こえない部分などを削除してデータを圧縮し、容量を小さくしたものだからです。
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事: 音楽デバイスでよく聞く「ハイレゾオーディオ」って何? メリットは?【解説】 超初心者のための「ハイレゾって何?」そもそも編 ハイレゾとは? など