エネルギーに関して調べ物をしていると、NEDO(ネド)という名前が何度も出てきます。NEDOは国立研究開発法人ですが、サイトを見ても具体的にどんな事業を行っているのかさっぱりよくわかりません。そこで今回はNEDOについて調べてみました。
NEDOはオイルショックをきっかけに設立されました
NEDO(ネド)は川崎市に本部を置く国立研究開発法人で、正式な名称は「新エネルギー・産業技術総合開発機構」と言います。
英語名 New Energy and Industrial Technology Development Organization の頭文字を取って一般的にNEDOと呼ばれていますが、元々は1970年代に日本を襲った二度のオイルショックをきっかけに設立された組織です。
オイルショックというのは、1973年(昭和48年)10月、中東の産油国が中東戦争を背景に原油価格を70%引き上げ、中東戦争の敵国イスラエルとその支持国に対する措置として、同国を支援する米国やオランダなどに対して石油の禁輸を行ったことです(第一次オイルショック)
これによって先進国の経済は大混乱しました。原油価格は4倍に跳ね上がり日本でも狂乱物価と言われるインフレが発生して物価が20%も上昇。ここで経済成長に急ブレーキがかかり国内は一転、不況に陥ってしまいました。
その後、今度はイラン革命やイラン・イラク戦争がきっかけで二度目のオイルショックが訪れますが、こういった中東産油国の石油を武器にした対外戦略は、石油資源の大半を輸入に頼り、その多くを中東地域に依存していた日本にとって大きな打撃になりました。
これを機に日本は石油に代わる新しいエネルギー開発の模索を始め、様々な諸政策の制定と共にその先導役として1980年に発足したのがNEDO(現在の前身となる特殊法人)でした。
NEDOは研究機関ではなくマネジメント機関です
NEDOは国立研究開発法人なので、法的な位置づけはJAXAや産総研、理化学研究所などと同じカテゴリになります。けれど、研究者を雇用して研究開発を直接行う機関ではありません。
NEDOは経済産業行政の一翼を担う日本最大級の公的技術開発マネジメント機関として主に二つの役割を担っています。
1つ目は「企業や大学のチームに国から預かった技術開発資金を配分すること(ファンディング)」、2つ目は「資金を配分した事業の進捗や成果を管理・評価し、社会に実装されるまで支援すること(プロジェクトマネジメント)」です。
NEDOが資金で支援するのは、エネルギーや産業技術に関する国の課題を解決するため、様々な公募事業に応じてくれた民間企業や大学などの研究機関ということになりますが、そもそも未開発で新奇性の高い新しい技術の研究開発というのは、多額の資金が必要なのにやってみないと成否がわからないという大きなリスクがあります。
そこでNEDOが国からの資金を投入することでより高度な研究開発をすることができ、新たな挑戦が可能になったり難易度が高い課題にも安定的に取り組むことができるのです。
順番としては、NEDOが国から「こういった事柄の研究開発が必要」という相談を受けると、NEDOがそのプロジェクトの計画を作成して国に提出し、国から予算をもらいます。そしてその研究開発事業を行ってくれる企業や大学を公募して予算を配分するという流れです。そして”税金が正しく使われているか?”というチェックも含め、10数年かけてプロジェクトの推移を見守り社会的な実装までを支援していきます。
その様子をオーケストラに例えると、楽団員(研究者、研究開発機関)を率いる指揮者のようでもあり、関係各所とのメールのやり取りから日程調整・会場確保まで細々とした雑用を一手に引き受ける楽団事務所のようなもの、だそうです。言われてみれば確かにアーチストやタレントを管理/サポートするマネージャーさんにも似ていますね。その意味では芸能事務所にも似ている?のかもしれません。
実は生活に根付いているNEDOの成果
私達が普通に暮らしていてNEDOの名前を耳にすることはほとんどありませんが、NEDOがこれまでに関わった技術は身の回りでよく活用されています。
たとえば洋上風車のような大物からエネファームのように日常的なものまで、エネルギー関連の新しい技術はもちろんですが、こちらの動画でお話をされている佐藤さんによれば、佐藤さんは10数年前に電機メーカーや自動車メーカーと共に、シリコンカーバイドという次世代デバイスの開発に携わり、その技術が様々な経緯を経て2020年から新型新幹線(N700S)に搭載されたそうです。
その省エネ型デバイスのお陰で、新型新幹線では窓際だけでなくすべての座席にコンセントを付けることができました。(確かにこれは朗報でした!)そのため佐藤さんは通勤途中で新型新幹線を目にすると感慨深い思いになるとのこと。
そしてこのサイトで以前取り上げた「人工クモの糸素材」にもNEDOさんが関わっていたんですね。
NEDOは新エネルギーや新技術の様々な研究開発を支援するマネジメント機関ですが、7割は民間企業などからの出向者で新卒採用は3割程度だそうです。しかも予想に反して文系出身の職員も多いとのこと。そして国立研究開発法人は、国の機関としては一番自由度が高い組織のようで、やはり新しい研究開発は柔軟な体制じゃないと生まれてこないわけですね。
ですが今回、この記事を書くにあたりNEDOについて何度もネット検索してみましたが、表示されるのはすべてNEDOの(難しい?)ページばかりで、わかりやすく親しみの持てる”組織情報”がほとんどありませんでした(涙)。
日本の技術開発をけん引している重要な機関なので、組織自体についても、もうちょっと情報発信してくれないかなぁと、個人的に思った私でした。
(ミカドONLINE編集部)
参考/引用記事: オイルショックで世の中どうなった?その原因と経済への影響を振り返る|わらしべ瓦版(かわらばん) 理事長挨拶 | NEDO 【24卒向け】NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)|WEB会社説明会 〜40分で企業研究〜|2022年10月ONE CAREER LIVE など
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