
地球温暖化の要因となる二酸化炭素(CO2)を、排ガスからどう取り除くか。その答えを探す取り組みが、また一歩進むました。
ジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)は北海道大学との共同研究で、電気の力をCO2を使って電離・回収する新技術を開発しました。
火力発電所などの大規模設備にだけでなく、食品工場や中小製造業などにも導入できる可能性を
秘めた、小型・高効率のシステムです。

「pHスイング」でCO₂を取り出す
今回開発された技術の中核は、GSユアサ独自のphスイング機構にあります。
これは電気透析の原理を応用し、電気化学的に溶液の酸性・アルカリ性(ph)を変化させることで、CO2を吸収したり放出したりする仕組みです。
つまり、電気を流すことで、CO2を溶液から「ふるい分ける」ようにとり出すわけです。
この方法では、従来の加熱式装置のように大量の熱エネルギーを使う必要がありません。
そのため、エネルギー効率が高く、装置全体も小型化しやすいというメリットがあります。
北海道大学との実証実験では、99%以上という高濃度でCO₂を回収することに成功し、しかも従来方式に比べて約3割の省エネを実現しました。
電池技術を応用した実証機が稼働
実証機は、GSユアサの電池製造技術を応用して作られたもので、2025年7月から稼働を開始しました。
高さ約1.8メートル、幅3メートルほどの装置で、1日あたり約300グラムのCO₂を回収できます。水素と溶液は循環して使うため、メンテナンスを除けば必要なのは電気代のみ。
装置全体の構造はシンプルで、設置スペースが限られた現場にも対応できます。
次のステップでは、1日1トン規模のCO₂を処理できるコンテナサイズの装置へと大型化し、2030年度の実用化・発売を目指しています。
価格は数千万円ほどを想定しており、リチウムイオン電池の生産設備を一部流用することで、量産化への道も見えつつあります。
小さな装置で広がる可能性
これまでCO₂回収技術は、主に火力発電所など大規模プラント向けに開発されてきました。しかし、今回の技術は小型で環境負荷も低いため、食品工場や醸造所、地域の中小工場などでも導入が期待されています。
また、回収したCO₂は地下に貯めるだけでなく、化学品原料や燃料の再生産など、「カーボンリサイクル」の資源としても再利用可能です。
さらに、宇宙空間や海洋など、特殊な環境での利用可能性も研究が進められています。GSユアサはこの技術を、新たな事業の柱と位置づけています。
(ミカドONLINE 編集部)
参考/引用記事:株式会社GSユアサ公式ニュースリリース「GSユアサと北海道大学が共同研究で革新的なCO₂分離回収技術を開発 ~高エネルギー効率・99%以上の高濃度CO₂ガス回収を実現~」,日本経済新聞「GSユアサ、排ガスからCO₂回収する装置開発 中小工場向け30年度発売」






























