
私たちが暮らす地面のずっと下には、「かんらん岩」という岩石が広がっています。この岩石が、水素を得るための研究や、二酸化炭素(CO₂)を閉じ込める研究の対象になっています。
なぜ、岩石がエネルギーや環境対策に関係するのでしょうか。その理由は、かんらん岩に含まれる成分と、水やCO₂との化学反応にあります。まずは、どのような岩石なのかを見てみましょう。
地球の内部をつくるかんらん岩
岩石は、鉱物という材料が集まってできています。かんらん岩は、「かんらん石」という鉱物を主に含み、輝石などとともにできた岩石です。かんらん石は材料の名前、かんらん岩は岩石の名前、と考えると区別しやすくなります。

かんらん岩は、地球の表面を覆う地殻の下にある「上部マントル」を構成する代表的な岩石です。もともとは地下深くにありますが、地殻変動によって地表近くまで押し上げられたものもあります。北海道様似町のアポイ岳は、こうしたかんらん岩からなる山です。
地表近くにも存在するため、岩石を採取して性質を調べたり、地下にある岩石を資源として利用できないか検討したりすることができます。
かんらん岩から水素が生まれる!
かんらん岩が地下で水と反応すると、含まれる鉱物が変化し、「蛇紋岩(じゃもんがん)」という別の岩石になっていきます。この変化を「蛇紋岩化反応」と呼びます。
その過程で、鉱物に含まれる鉄が関わる化学反応によって、水から水素が生まれます。自然界で生まれるこうした水素は、「天然水素」と呼ばれています。この水素を取り出して使えれば、エネルギー資源になる可能性があります。
日本のエネルギー・環境分野と産業技術の一端を担うNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2025年度から、天然水素の生成量を増やす方法や、回収する技術に関する研究開発を進めています。地下の岩石と水の反応を、私たちが使えるエネルギーにつなげるための研究が行われており、生活に身近になる日もそう遠くないかもしれません。
CO₂を固体にして閉じ込める
かんらん岩の研究には、水素を得ることとは別に、CO₂を閉じ込めるという目的もあります。
かんらん岩には、マグネシウムや鉄などの成分が豊富に含まれています。これらの成分はCO₂と結合しやすい性質を持ち、CO₂と反応させると、炭酸塩鉱物という固体ができます。CO₂をその固体の一部として取り込み、長期間にわたって閉じ込める方法が「CO₂鉱物固定」です。
地下のかんらん岩を利用する方法では、CO₂を水に溶かして岩石のすき間へ送り込み、岩石の成分と反応させます。水は、CO₂を地下の反応させたい場所へ届ける役割を担います。
ところが、かんらん岩はもともとすき間が少なく、水が浸透しにくい岩石です。CO₂と反応する成分が豊富にあっても、そこまで水が届かなければ、十分に利用できません。そこで、水の通り道を広げる方法も研究されています。
東北大学は、特定の成分(金属など)と結びついて溶かす働きを持つ「キレート剤」を使い、かんらん岩に水を通しやすくする研究成果を発表しました。
この研究で使うキレート剤には、岩石中の鉱物を溶かす働きがあります。薬剤を含む水を岩石のすき間に流すことで、すき間に接する鉱物の一部を溶かし、水の通り道を広げるという仕組みです。
研究グループは、北海道の幌満(ほろまん)岩体から採取したかんらん岩に人工的なすき間や亀裂を設け、地下の環境を想定した温度・圧力で実験しました。その結果、鉱物が溶けることで水の通り道が広がり、水が通りやすくなることを確認しています。
水が通りやすくなれば、CO₂を含む水を地下に送り込みやすくなります。今回の成果は、かんらん岩を使ってCO₂を固定するための課題の一つに、解決の手がかりを示したものです。
かんらん岩を調べると、水素を生む反応と、CO₂を固体に閉じ込める反応という、二つの働きが見えてきます。どれだけの水素を取り出せるのか、どれだけのCO₂を固定できるのか。岩石の性質を一つずつ確かめる研究が、エネルギーの確保やCO₂削減に役立てるための土台になっています。
普段は目にすることのない地球内部の岩石。その性質を詳しく調べていくことが、これからのエネルギーや脱炭素技術の選択肢を広げることにつながるかもしれません。
参考:産業技術総合研究所 地質調査総合センター「かんらん岩 」,岩石と水の反応で生まれる水素の秘密に迫る,岩石と水の反応による水素生成プロセスの秘密に迫る,マントルを構成するかんらん岩体を利用した新たなCO₂固定技術を開発,ただの水素と何が違う? 今話題の『天然水素』についてそのポテンシャルから課題まで詳しく解説!



















