雑草:名もなき草の名(27)〜草笛で遊んだスズメノテッポウは農作業のすき間を狙って生きるすごい植物~

    みかドン ミカどん

    今回はたくさんの人が見たことがあるけれど、意外に名前が知られていないスズメノテッポウです。ですが、「草笛にして遊んだあの雑草」と聞けば、思い出す方も多いのではないでしょうか。

    稲作と共にアジア大陸から渡来しました

    (画像:photoAC

    スズメノテッポウは、全国に広く分布するイネ科の一~二年草で高さは20~40cm、北半球に広く分布する史前帰化植物の1つです。史前帰化植物というのは、農耕の開始後に稲や麦などの栽培植物とともにアジア大陸から日本にもたらされた植物のことです。

    名前の由来は、真っ直ぐな穂の形が、スズメを威嚇する際に使う鉄砲の形に似ているからとのこと。ですが単に「小さい鉄砲」という意味で「雀の鉄砲」と呼ばれているという説もあります。

    いずれにしてもこの穂先から鉄砲はあまり想像できず、別名のスズメノマクラ、タムギ、フデクサ、スズメノヤリのほうがずっとわかりやすいように思ったりします。

    スズメノテッポウは路傍や空地などのほか、春の水田でもよく見かけるため湿った場所を好む印象がありますが、乾燥した荒れ地や果樹園などでもよく生育します。

    環境に合わせた2種類の生存戦略

    (画像:里山の自然観察/吉備路net

    実はスズメノテッポウには「水田型」と「畑地型」の2種類があり、「水田型」は稲作のサイクルにうまく適応しているタイプです。

    「水田型」は稲刈り後、水田の水が引いたら一斉に発芽してそのまま越冬し、 田起こし前の早春に開花 ・ 結実し、 作業がはじまる前にはタネを残して枯れてしまうという、まさに農作業のすき間を狙うようなライフサイクルです。人間の農耕作業にここまで逆張りで合わせられるってすごいですよね。そして一般に(狭義の)スズメノテッポウはこちらを指すようです。

    一方、「畑地型」は水田型から派生したもので「ノハラスズメノテッポウ」と呼ばれています。こちらは季節ごとの環境が毎年安定している「水田型」と異なり、いつ耕されるかわからず水も少ない土地で確実に子孫を残すために、他家受粉で「水田型」よりも小さくその分、数多くの種を実らせます。(「水田型」は自家受粉)

    つまり安定した環境で大きな種を付け、稲作に順応した遺伝子をそのままコピーして確実に残すのが「水田型」、予測不能な土地で他家受粉によって多様性のある遺伝子を残し、小さいけれど多くの種をばらまいて環境の変化に備えるのが「畑地型」といえるでしょう。

    普段はあまり気を留めることがない雑草でも、一生懸命環境に自らを順応させてカシコク生きているのがびっくりです。

    スズメノテッポウは草笛になります

    さて、スズメノテッポウといえば、茎をちぎって穂先を抜いて、草笛で遊んだ思い出がある方も多いのではないでしょうか。

    実は私もその経験があったのですが、この記事を書くまでは恥ずかしいぐらいにその記憶がすっかり抜け落ちていました・・・

    スズメノテッポウの穂(花茎)の部分は手で引っ張るとキュッと音がして適度に心地よい感覚で簡単に抜けます。その切り口の葉をたたんで折って、口にくわえて息を吹き込むとピーピーと音がするんです。そのため、スズメノテッポウの別名にはピーピーグサという名前も付いています。

    今思えば「だから何?」という気がしなくもないのですが、友達から教わって自分もやってみて「へー!」という新鮮な感動が面白かったのかもしれませんね。

    上の動画でもご紹介しましたが、わかりにくい方は以下の画像はサイトもご参考にどうぞ。

    (画像:東京新聞

    (参考)【写真あり】スズメノテッポウの笛の笛の作り方と鳴らし方 | ミックスじゅーちゅ 子どもの遊びポータルサイト

    私は仙台市内でもわりと中心部に近い古い住宅地で育ったのですが、考えてみたら、昔はシロツメクサで花輪を編んだり、オオバコで引っ張り相撲をしたり、そしてスズメノテッポウで草笛を吹いてピーピー鳴らしたり、家の周りや近隣の空地の雑草も遊びのひとつだったなぁ・・・と、改めて思い出した次第です。

    皆さんもスズメノテッポウを探して、草笛にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

    (ミカドONLINE編集部)


    出典/参考記事:スズメノテッポウ|岡山理科大学 スズメノテッポウ(雀の鉄砲)(イネ科スズメノテッポウ属)|野田市ホームページ スズメノテッポウの駆除!雑草から水田を守る効果的な方法とは? など