前号までの7回でBCPの何たるか?からBCPの必要性、実際にBCPを組み立てるまでをお伝えして参りました。実際にBCPが出来上がったところで、このままでは絵に描いたモチであり書棚にマニュアルが一冊増えただけの事となってしまいますので、そうならないために今号ではBCPを活かすために必要な三項目をお伝えしたいと思います。
(ミカド電装商事(株) 代表取締役 沢田 秀二)
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さて、本稿では事業継続計画を指す狭義のBCPと、「事前対策」「教育・訓練」「見直し・改善」を含んだ広義のBCPについて便宜上一部混同しております。本来であればこの3項目を含めた場合は、事業継続マネジメント”BCM”としてとらえるべきであることを、最初にお知らせしておきます。
(1)事前対策
冒頭にお伝えした通り、せっかく多くの手間と時間をかけて立派なBCPが作られていても、事前対策が済んでなければ計画通りに進めません。
事業継続に最低限必要となる生産量に合わせた部材・原料の在庫確保であったり、インフラが復旧するまでの水・燃料の備蓄や通信機器及び電源の確保について、備蓄だけではなく、緊急時における各所との相互支援協定などについても進めてください。
(2)教育・訓練の実施
事前対策ができたところで次に必要となるのは、教育・訓練となります。
計画は立ててみたけど、そこまでひどい事にはならないだろうとか、事前対策で計画した備蓄品に対して全部揃えなくてもどうにかなるんじゃないかといった認識があるうちはBCPが完成されたものとは言えません。
想定外はおこるものなのです。東日本大震災の津波被害もそんな油断がなければ、もう少し被害が少なかったかもしれません。
経営者から従業員までが、立案されたBCPに対して共通の認識と取り組むべき役割が緊急時であったとしても、あわてず自然にしっかりと取り組めるような事前教育が必要となってきます。
対象となる経営者から従業員が、ただ知っている、知識があるだけでなく、その時に勝手に身体が動くレベルまで訓練されていることが大切となるでしょう。一刻を争う緊急時にはマニュアルを読んで確認する時間はありません。
また、近隣や関係事業所との相互支援協定などを締結している場合には第三者を巻込んだ合同訓練が必要となるでしょう
(3)見直し・改善
せっかく策定したBCPも、実際に行動に移すと実状と合わない物や、時間の経過とともに、その時の事業所の環境と合わなくなっている可能性があります。
実際に事前対策で揃えられたものを訓練の場を利用して使用し、評価をしてみると以外に使えない物や、もっと物量を確保した方が良いものなどが次々にでてきます。
この評価を通じて変更が必要であると思われるマニュアルの箇所や事前対策として備蓄する品物の種類や量を調整したり、場合によってはマニュアルそのものを見直して改善する必要があるでしょう。
いかがでしたでしょうか?BCPを構築するだけではなく、実際に動かしてみる、評価してこれを見直すことの必要性を感じていただけたものと思います。
おわりに
緊急事態発生に備えて、事前に計画を立案し、その準備を整えて訓練を繰り返し、改善をしながらBCPを練り上げていく事は、単に緊急時の事業継続の為だけでは無く、従業員の安心や社外の利害関係者からの評価を得るといった役割もあり、今後の事業活動には必要不可欠なものであることがご理解いただけたのであれば幸いです。
最初から完璧なものを作ろうとすると、それなりの時間がかかってしまいます。それよりも最低限必要な仕組み(緊急時の体制、役割、安否確認と事業所の被害状況確認及び初期行動くらいまで)を早期に作り上げておくことが肝要です。
まずは最初の一歩をすすめてみてはいかがでしょうか!
この連載は今号で終了です。最後まで本稿を読んで頂き、誠にありがとうございました。
(沢田 秀二)