【ヒストリー】07.水力発電所①~豪邸にあかりが灯った日~

    世界初の水力発電所は1882年に運転を開始した
    米国ウィスコンシン州アップルトンの発電所です。
    それもまたエジソンによるものでした。

    アップルトンの裕福な実業家で
    地域のガス灯会社の社長でもあったヘンリー・J・ロジャースは
    エジソンの発電事業に興味を持ち
    これは利益になると考えました。

    そして投資家を募りアップルトン・エジソン・ライト社を設立し、
    エジソンから設備を購入して
    市内を流れるフォックス川に初めての水力発電所をつくりました。

    電気はロジャースの製紙工場を含めた
    2つの製紙工場とロジャースの自宅に送られ、
    地元紙はその様子に畏敬の念を込めて
    「日中のように明るい」と表現しました。

    ロジャースの豪奢な自宅は
    ビクトリア朝を思わせる外観や内装だけでなく、
    初めて電気を引いた個人の私邸として
    今では地域の名所になり歴史的建造物として保存されています。
    https://homepage-town.jp/mikado-d/reference/201409.html#history

    アップルトンの水力発電所は当初、
    水の流れで変化する電圧を調整できず、
    明かりの輝度が落ちたり逆に燃え尽きたり、
    ショートも頻繁に起こりました。
    また、使用電力量を測定する仕組みがまだなく、
    料金は契約者の照明個数に応じた月額の固定料金でした。

    それらは順次改善され、
    当時、火力よりも効率がよく
    安定性の高かった水力発電所は
    この頃から米国の各地でつくられるようになりました。

    ですが、水力発電所の建設は地理的な条件が限られ、
    需要地域から離れていることも多く、
    今度は送電の距離と品質が新たな課題となってきました。

    エジソンが考案した電力配給システムは
    電気を遠くまで送ることができない直流式だったため、
    送電距離に優れる交流システムを開発した
    ライバルに敗北するのは前に書いた通りです。

    その背景には電気需要の高まりと、
    発電所の供給エリアの広域化がありました。