世界初の水力発電所は1882年に運転を開始した
米国ウィスコンシン州アップルトンの発電所です。
それもまたエジソンによるものでした。
アップルトンの裕福な実業家で
地域のガス灯会社の社長でもあったヘンリー・J・ロジャースは
エジソンの発電事業に興味を持ち
これは利益になると考えました。
そして投資家を募りアップルトン・エジソン・ライト社を設立し、
エジソンから設備を購入して
市内を流れるフォックス川に初めての水力発電所をつくりました。
電気はロジャースの製紙工場を含めた
2つの製紙工場とロジャースの自宅に送られ、
地元紙はその様子に畏敬の念を込めて
「日中のように明るい」と表現しました。
ロジャースの豪奢な自宅は
ビクトリア朝を思わせる外観や内装だけでなく、
初めて電気を引いた個人の私邸として
今では地域の名所になり歴史的建造物として保存されています。
https://homepage-town.jp/mikado-d/reference/201409.html#history
アップルトンの水力発電所は当初、
水の流れで変化する電圧を調整できず、
明かりの輝度が落ちたり逆に燃え尽きたり、
ショートも頻繁に起こりました。
また、使用電力量を測定する仕組みがまだなく、
料金は契約者の照明個数に応じた月額の固定料金でした。
それらは順次改善され、
当時、火力よりも効率がよく
安定性の高かった水力発電所は
この頃から米国の各地でつくられるようになりました。
ですが、水力発電所の建設は地理的な条件が限られ、
需要地域から離れていることも多く、
今度は送電の距離と品質が新たな課題となってきました。
エジソンが考案した電力配給システムは
電気を遠くまで送ることができない直流式だったため、
送電距離に優れる交流システムを開発した
ライバルに敗北するのは前に書いた通りです。
その背景には電気需要の高まりと、
発電所の供給エリアの広域化がありました。