ケーブルを使わずにスマホに充電できるQi(チー)
Qiと書いて「チー」と読みます。これはパソコンやスマートフォンといった電子機器を電源ケーブルやコネクターなどで直接つなぐことなく、ワイヤレスで電源から電力を供給できる技術規格の名称です。
最近は様々な電子機器が増え、仕事場でも自宅でも複数の電気コードや充電ケーブルが入り乱れています。
これらの線がなくなったらどんなに便利ですっきりするでしょう。そんな思いでワイヤレス給電について調べてみると、スマートフォンの分野ではすでに一部の機能が実用化されていて少し驚きました。
スマートフォンでは単体のワイヤレス充電器として商品が販売されており、TOYOTA車ではすでに一部の車種で標準装備されているようです。
けれど、現行の製品は充電パッドに乗せる接触タイプのもので、ワイヤレス(無線)といっても「離れた所から充電」できるわけではないようです。
Qi(チー)とは、目に見えないパワーの流れを表す中国の伝統的な概念「気(チー)」を英語表記したもので、まさに「見えないパワーを送る」ようにワイヤレスで電力を供給するための統一規格です。「いつでもどこでも」「メーカー問わず」「ケーブルなしで」充電できることを目的に2010年に策定されました。
電磁誘導方式のQi(チー)は7mm以上は離せない
Qiは、古くから実用化されていた「電磁誘導方式」を元にしています。この方式によるワイヤレス給電システムは過去に幾つか実用化されていましたが、独自開発で相互利用ができないため、標準化推進団体として2008年にWPC(Wireless Power Consortium:ワイヤレスパワーコンソーシアム)が立ち上げられました。
事務局は米国にあり、現在の会員は200社です。著名なグローバル企業が名を連ね、日本の企業も多数参加しています。
https://www.wirelesspowerconsortium.com/member-list/ (英文)
(Wireless Power Consortium)
ワイヤレス給電の市場規模は、後4年で40倍に拡大する見込みといわれ、エレクトロニクス業の中でも特に成長が著しい分野と捉えられています。
ですが、標準化団体がほかに二つあり(A4WPとPMA)、いずれも長所を持つ規格のため、二種類の規格を共に採用したデュアルモードのチップが発表されるなど、各社の対応も多様です。
https://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140304/338021/?ST=SCR
(日経BP半導体リサーチ)
車にも給電できる磁気共鳴方式は安全性や法整備が課題
コンシューマー向けではQi規格を出しているWPCが世界標準と言われていますが、従来の「電磁誘導方式」では非接触で給電できる距離が7ミリ以下のため、二つの機器を接触させないと事実上充電ができません。
そのためWPCでは他団体が採用している「磁気共鳴方式」も取り入れて、2014年7月に数センチ離しても充電できる規格を発表しました。
「磁気共鳴方式」は出力に応じて距離を伸ばしていける方法ですが、電磁波に関しての安全性や法整備(電波法)の課題があります。
また、いわゆる”空中送電”のイメージに近いマイクロ波をつかった別な方式では送電効率が大きく落ちるなど、それぞれに解決すべきテーマがあります。
WPCでは次のワイヤレス給電の対象をキッチン家電と定め、仕様開発に取り組む作業グループを2013年3月に設置しました。またホンダは、電気自動車を装置の上に停車させただけで充電できる磁気共鳴方式のシステムを実験中で2016年の実用化を見込んでいるとのこと。
https://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140616/358940/?rt=nocnt
(日経テクノロジー)
実はSUICAやPASMOもワイヤレス給電のしくみを使っています。ワイヤレス給電の本格的な実現はまだまだ先と感じていましたが、技術開発は思った以上に進んでいるようです。