(59)EV失速?勝ち目がないと思われていたHVやPHVが今売れている理由

    みかドン ミカどん

    最近、「EV失速」というタイトルのネット記事をよく見るようになりました。代わってHVやPHVの売り上げが好調で、トヨタは昨年、初めて日本企業で初めて5兆円を超える営業利益を上げたそうです。そこで今回はEVやHV、PHVの世界的な動向について記事にしてみました。

    EVの売り上げが鈍化、代わってHVが伸びています

    (画像:MoTA

    車と言えばガソリン車が当たり前だった時代から、最近では様々なタイプの自動車が製造・販売されています。

    EV・・・100%電気だけで動く電気自動車。電池に電気を溜めてモーターで走る
    PHV(PHEV)・・・エンジン搭載。充電もできる電気とガソリン併用車
    HV・・・電気を補助的に使うガソリンエンジン車。充電はできない
    FVC・・・水素でモーターを動かす燃料電池車

    世界的な流れとしては、これらのうち化石燃料であるガソリンを使わず汎用性も高いEV車(100%電気で走る電気自動車)が次世代の本命とされ、EUなどによる強力な政策的恩恵も受けながら売り上げを伸ばしてきました。

    その象徴と言われているのが、電気自動車専業メーカーであるテスラや、テスラに猛追しテスラを抜いたといわれている中国BYDの大躍進などです。

    しかしここにきて、EVの売り上げが鈍化し始めています。以下の図に示されるように、世界ではいまEVよりも、EU各国がエコカーとして認めなかったHVのほうが販売数が伸びているのです。それを受けてEVよりもHVに注力してきたトヨタが絶好調で、最近の1年間で大きく売り上げが増加しているという現象も起きています。

    (画像:TBS NEWS DIG/YouTube

    EVとHVが逆転している背景

    (画像:TBS NEWS DIG/YouTube

    インターネットで「EV失速!」という見出しが付けられた記事を目にすることも多くなった昨今ですが、EVの売れ行きが落ちてPHVやHV車が巻き返している背景には色々な原因が考えられます。

    (1)富裕層にひととおり行き渡った

    かつては排気量の多い大型車に載ることが富裕層のステータスでした。しかし温暖化防止の観点から、地球環境に優しい車に乗ることが意識の高さとみなされるようになり、富裕層が一斉にEVに切り替えました。その需要がここに来て一巡したのではないか?と見られることが理由の大きなひとつです。

    (2)シカゴの大寒波でEVに不安を持つ人が増えた

    今年の1月、シカゴが大寒波に見舞われ、電池切れの車が多数立ち往生する様子が報じられました。EVのバッテリーは寒さに弱く気温が下がると性能が落ちますが、それに加えて長距離移動する車が多い米国では充電設備もまだまだ不足しており、EVへの不安が以前よりも強まっているようです。

    ですが寒波以前からEV鈍化の兆しはすでにあったので、引き金にはなったかもしれませんが、それが直接の原因ではないかもしれません。

    (3)電気代の高騰でユーザーが現実的な選択をしている

    ウクライナ戦争の影響でヨーロッパでは電気代が高騰し、燃料費が安く燃費のいいガソリン車が見直されています。意識が高い欧米の人たちも現実的な選択をせざるを得なくなっているのではないかと思われます。

    最後は中国のひとり勝ち?

    (画像:TBS NEWS DIG/YouTube

    新しいものが普及していく段階では、製品に価値やステータスを感じれば高くても真っ先に購入するアーリーアダプター(早期利用者)と呼ばれる人たちと、それに続くアーリーマジョリティ(早期多数派)と呼ばれる人たちの間には一定のタイムラグがあり、どんな製品でも階段の踊り場のようにいったん普及が止まる時期があるそうです。

    アーリーマジョリティが購入し始めるきっかけとなるのが、コストパーフォーマンスなどの合理的な理由ですが、世界的に見るとEVはまだそこまでの価格帯に至っていません。専門家の間では今がこの停滞時期と見られていますが、その間隙を縫って旧来のガソリン車からHVやPHVに乗り換える人が増えているようです。

    ところがタイやインドやエチオピアなどでは、ガソリン車よりも安い中国製のEV車が大きく普及し始めており、すでにこの「踊り場」のような時期を突破しているそうです。

    EVは元々、地球温暖化防止のために各国が保護政策や補助金で政策的に普及させている側面がありますが、さらに国を挙げてEVに取り組んでいる中国では、国策としてお手頃価格のEV車を次々に市場に投入し、世界の自動車マーケットにじわじわと入り込んできています。

    当初は日本潰しと見られたEU等の「今後はEVしか認めない」という強硬な姿勢は、結果的に廉価な中国製EVの大幅な拡大を許してしまったという見方もあり、今やEVは価格競争の様相を呈し各メーカーの収益を大きく落としています。

    ここに来てEU各国では「EV一択」だったエコカーの基準を見直し始めていますが、HVやPHVに強みを持つ日本車がこのチャンスを世界でどう生かすのかが注目されています。

    (ミカドONLINE 編集部)


    参考/引用記事: 【初心者向け解説】PHV、HV、EV、FCVの違いとは?代表車種やメリット・デメリットを簡単解説。|【話題を先取り】新型車解説2016【MOTA】 ”EV失速”の手のひら返しで自動車業界が見る悪夢…テスラも「販売台数減少」の市場で”今起きていること”「中国一人勝ちの未来」が待ち受ける… | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)   

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