海外の空港のインターネットコーナーなどでマッサージチェアを見かけることがあります。世界で初めて量産されたマッサージチェアはフジ医療器の創業者の藤本信夫氏が1954年に製作した「フジ自動マッサージ機」です。
フジ医療器はマッサージチェアの販売と同時期に創業した大阪阿倍野の会社ですが、その前の藤本氏はタイルを洗うたわしを銭湯に販売していました。当時の日本は、戦後の混乱期からめざましい復興を遂げつつあったとはいえまだまだ貧しく、人々は銭湯に通っていました。
藤本氏は、多くの人々が集まり、一日の疲れを癒してリラックスする場所である銭湯の脱衣場を使って何かできないかと考え、マッサージチェアの開発に着手しました。
初期の試作品は、木材、野球の軟式ボール、自転車のチェーン、車のハンドルなど、ごみの山から材料を集めてきては組み立てることを繰り返し、試行錯誤の上に、ついに1954年にフジ医療器初のマッサージチェアを開発しました。
営業マンはリヤカーにマッサージチェアを積み込み、銭湯の煙突を目指して町を歩き回りましたが、従来は人間が行うはずのマッサージを機械がするということに対して人々の警戒心が強く、商品はなかなか売れませんでした。
そこで、3分10円のコイン式にしたところ、認知度が広がり、全国での販売につながっていったのです。そして、当初は銭湯やデパートなど、公共の場所にしかなかったものが、現在では「健康家電」として家庭にも普及する電化製品となりました。
その功績により、フジ医療器の初代マッサージチェアは、2014年度、日本機械学会の「機械遺産」第68号に認定されました。
マッサージチェアは私にとって憧れの商品ですが、持っているお宅にお邪魔すると、洗濯物が置かれていたり、「ただの椅子」として使われている光景をよく目にします。現在の家庭普及率は15%前後で頭打ちとのことですが、あれはやはり温泉旅館でお風呂の後に使うのが一番至福の時間なのかもしれませんね。
出典:動画/フジ医療器チャンネル