【ヒストリー】30.トースター~朝食には使えなかったパン焼き機~

    今はすっかりオーブントースターが主流になり、食パンが焼きあがるポン!とパンが跳ね上がって半分飛び出す昔のトースターを見かけることがほとんどなくなりましたね。このタイプのトースターはポップアップ型と呼ばれるようですが、私が小さい頃はどこの家にもありました。

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    パンを焼くことはかなり古い時代から行われていて、18世紀ごろには蝶番の付いたフォークでパンをはさみ炎にかざして焼く方法がありましたが、石炭ストーブが使用されるようになると針金で作った籠にパンを入れてストーブの上に乗せる方法が出現し、やがて世界で最初の電熱トースタが1893年に英国のクロンプトン社から発売されました。しかしこの時期にはまだニクロム線が発明されておらず、ヒータ線には鉄線を使用していました。そのため、鉄線の酸化が激しく、火花が出たりして長時間の使用には耐えられませんでした。けれど、これが電気でパンを焼くスタイルの始まりとなり、これ以後、トースターは各社によって改良が加えられました。そして、1919年に焼き上がり終了のポップアップ機能が発明されて、その機能を加えた「トーストマスター」という名前の商品が、家庭で使える初めての実用品となりました。

    日本で最初のトースターは昭和30年に発売されたようですが、メーカーはわかっていません。この頃の国内はパン食の普及と共に、インスタントコーヒーやティーバッグの紅茶も出始めました。

    さて、初期のトースターは発明後しばらくの間は、朝食に使用できませんでした。なぜなら、当時の電気は照明専用だったため、夜しか供給されなかったからです。日本のパン食は朝型なので、夜しか焼けないトースターなんて意味がないように思いますが、その意味ではやはりパンが主食の国ならではの発明と言えるかもしれませんね。


    図版の出典:Wikipedeia(英語版)