雑草:名もなき草の名(40)「彼岸花」は田んぼを守る赤い炎の草

    みかドン ミカどん

    秋のお彼岸の頃、田んぼのあぜ道や川のほとりに、一斉に燃えるような赤い花を咲かせる彼岸花。見慣れた風景の中でひときわ鮮やかな存在感を放ちながらも、「縁起が悪い花」と思われることもある少し不思議な雑草です。今回はそんな彼岸花の秘密に迫ります。

    1. 秋を知らせる真っ赤な花

    彼岸花は、正式な学名では「リコリス・ラジアータ」と呼ばれる球根植物。毎年、秋分の日をはさんだお彼岸の頃になると、まるで季節のカレンダーに従うかのように花を咲かせます。

    真っ赤な彼岸花(画像:楽天トラベル 全国の美しい彼岸花・曼珠沙華の名所22選!

    不思議なことに、花が咲いている時には葉がなく、花が終わってから葉が出るという独特のリズムを持っています。このサイクルが人々に「神秘的」と映り、昔から特別な花として語られてきました.

    また、秋の終わりに葉をのばし、翌年の初夏に枯れ落ちるという、多年草としては特殊な性質も持ち合わせています。

    2. 実は田んぼを守る草だった

    彼岸花には毒があります。特に球根部分には強い毒性があり、昔の人々はこれを「モグラやネズミから田んぼを守る天然のバリア」として利用していました。

    田んぼ沿いに咲く彼岸花(画像:ぶらり富士川-つき米の棚田と彼岸花

    田んぼや土手のあぜに彼岸花が並んで植えられているのは、見た目の美しさだけでなく、害獣対策の知恵でもあったのです。鮮やかな赤い花は、田んぼを守る“警告サイン”のような役割を果たしていたとも言えます。

    3. 「縁起が悪い」の裏側にある文化

    真っ赤な色と毒性から「死人花」「地獄花」「毒花」といった怖い別名を持つ彼岸花。お墓の近くでよく見られるのも、この花が土葬時代に棺を荒らす小動物を避けるために植えられていたからと言われています。
    しかし一方で、仏教の世界では極楽浄土に咲く花として描かれることもあり、ただ恐れられるだけの存在ではありません。地域によっては「先祖を導く花」として、大切にされてきた歴史もあるのです。

    赤い炎のように一斉に咲く彼岸花。そこには、人々が自然と共に暮らす中で編み出した知恵と、先祖を思う気持ちが込められていました。道ばたに咲く彼岸花を見かけたら、その背景にある物語を少しだけ思い出してみてください。

    (ミカドONLINE編集部)

    参考/引用 小さなお葬式-彼岸花の毒はどこにある?知っていれば怖くない毒性や注意点を解説 など