【電気を送るしくみの今とこれから】04_産業分野では身近なリニアモーター技術


    山梨リニア_Series_L0.JPG

    昨年の12月、東京~大阪間を1時間で結ぶという夢の高速鉄道、超電導リニア中央新幹線の工事が本格的に始まりました。報道で何度も取り上げられたため、リニアモーターカーには「浮かせて走る」というイメージがありますが、本来のリニアモーターは浮上技術ではなく、直線運動をする駆動装置を意味します。

    物体を直線方向にまっすぐ動かす装置、と聞くと、皆さんは何を想像しますか?自動車は直線道路をまっすぐ走りますが、それはタイヤの回転によるものです。ベルトコンベアーもクレーンの巻き上げも、皆、モーターの回転運動を利用しています。

    リニア.png

    一方、リニアモーターは回転しない駆動装置です。簡単に言えば直線上に磁石のN極とS極を交互に配置し、吸引と反発の素早い繰り返しを利用して、レールなど支持部の上に乗った可動部分を動かす仕組みです。動力を他の部品に伝える歯車が不要で、対象物を直接動かすため、機器全体の小型化、高速化、高精度化が可能です。このリニアモーターの仕組みに超電導による浮力を加えて列車をさらに速く走らせるシステムが、超電導リニア(磁気浮上式リニアモーターカー)というわけです。

    リニアモーターは軽量で、高速、高精度の位置決めが実現できるため、それまでのボールねじ式に代わり、最近ではNC加工機などの工作機械、半導体の製造装置、検査装置、産業用ロボット、各種搬送装置などの幅広い分野で実用化されています。また、特に身近な機器としては、リニア直流モーターがプリンターやコピー機の駆動部に使われたり、カメラのオートフォーカスなどにも採用されています。

    仙台市営地下鉄東西線.png

    リニアモーターは昨年開業した仙台市営地下鉄東西線でも駆動方式として採用されました。浮上するまでタイヤで走る超電導リニアと異なり、従来通りレールと車輪を使用して走行するこの方式は鉄輪式リニアモーターカーと呼ばれ、国内では仙台を含め7か所の地下鉄に導入されています。システム導入には多額の費用がかかりますが、相互乗り入れのない単独路線であることや、リニアによる小型化で工費を節減したほうが経済的と判断される場合に採用されるようです。

    今回は「電気を使う」側の技術について説明をしてきましたが、精密機械の精度を保つには、安定した電源の供給が不可欠になってくるため、今後は電気の品質についても目を向けていかなければならないと感じました。

    (写真の出典:
    右上リニアモーターカー/Wikipedeia「リニアモーターカー」、①/JUNK-WORD.COM「リニアモーターカーの原理 超伝導とは」、②/熊谷正朗「モーターの基礎」(PDF)、③/安川電機e-mecha Sile News「■第5話 「リニアモータとはどんなものか?」、④/Wiki「仙台市地下鉄東西線」 )