今回は「百人一首」のお話です。
百人一首は13世紀始め、藤原定家が古今東西の歌から優れたものを一人一首づつ
集めて作ったものだそうですが、その中に東北を題材にとった歌が四首あるのを
ごぞんじですか?
取り上げられた歌枕は「しのぶもぢずり (福島古来の模様染め)」
「すえの松山 (宮城県多賀城市)」「沖の石 ( 同上 )」
「雄島 (宮城県松島市)」となっています。
東北の名勝を歌に詠み込んで下さった歌人をご紹介しますと、河原左大臣、清原元輔、
殷富門院大輔、二条院讃岐の平安貴族の皆様。
実はどなたも東北に来たことはないんです。京の都に届く風の便りだけをもとに、
その芸術的な想像力だけで歌を詠んでいたんですね。
紙面の関係で一首だけ紹介させていただく歌枕「すえの松山」は869年貞観地震の
大津波の際に、この手前まで津波が来た、と言われる場所だそうです。
「契りきな かたみに袖を しぼりつつ すえの松山 波越さじとは(清原元輔)」
今度の震災でもやはり津波は達しなかったそうですよ。