【ヒストリー】24.電気掃除機~ハンカチから生まれた団地ライフの必需品~

    そもそも、日本の家屋では掃除機をあまり必要としませんでした。埃はハタキで叩いて落とし、板の間や廊下は雑巾がけをし、畳の部屋はチリやゴミをホウキで外に掃き出してしまえばよかったからです。ところが1960年代の団地ブームでそれまでの掃除のスタイルが大きく変わりました。団地では近所迷惑のため家の外にゴミを掃き出すことが難しくなり、その頃から洋間に絨毯を敷くなど室内の洋風化も進みました。絨毯はノミの発生源にもなりますが、ホウキではなかなかきれいになりません。そこで次第に掃除機が受け入れられて普及していきました。
    ゴミを吸い取る方式の掃除機は、真空掃除機とも呼ばれていますが、世界で最初の電気真空掃除機は、1901年にイギリスのヒューバート・セシル・ブースによって発明されました。ブースは列車の座席の塵を吹き

    pic_1.jpg

    飛ばす装置の実演を見て、吹き飛ばすよりも吸い取った方がずっと役立つと考えました。そこで実際にレストランの椅子のゴミをハンカチ越しに口で吸いつける実験を行い、結果を見て成功を確信したそうです。

    日本で最初の電気掃除機は、芝浦製作所(東芝の前身)が1931年に発売したアップライト型でGE社の製品をモデルに開発されました。価格は110円でこれは当時大卒の初任給の半年分とのこと。前述のように当時は掃除機へのニーズが低かったため普及しませんでしたが、電化製品で家事を軽減することは主婦の怠慢と思われていた当時の風潮もあり、価格の上でも気持ちの上でも、主婦が「掃除機が欲しい」と言えるようになるまで、そこから30年の歳月を要した、ということになりますね。

    (写真の出典:ゲッティイメージズ、東芝未来科学館)