雑草:名もなき草の名(13)~まだ2割残ってます!国産のニホンタンポポを探してみませんか?~

    みかドン ミカどん「名もなき草の名」というシリーズですが今回は知らない人が誰もいないタンポポの記事です。日本国内のタンポポは現在ほとんどが外来種のセイヨウタンポポであることは周知の事実ですが、実は国産のニホンタンポポもまだ2割は残っているんだそうです。思ったよりずっと多いですね。

    見分け方はかんたん!

    (画像:田舎センセイによる田舎暮らしでの悩み解決情報サイト

    宮城県にお住いの田舎先生のブログに以下のような記述がありました。

    現在日本で確認されるタンポポの約8割はセイヨウタンポポ、もしくは在来種との交雑種と言われていて、セイヨウタンポポは日本の侵略的外来種ワースト100のひとつに数えられるほどです。

    (出典:タンポポの種類|西洋タンポポと日本タンポポの見分け方と違い

    これを読んで私は驚いてしまいました。西洋タンポポの多さ・・・ではなく、逆に日本タンポポがまだ2割も残っているという事実に!です。TVのお天気コーナーでよく見る気象予報士さんのウンチクやネット上の季節の小ネタが強く刷り込まれ過ぎて(?)個人的にはもう絶滅寸前とまで思い込んでいたからです。

    そうとわかれば本気で探してみたくもなりますよね。

    西洋タンポポと日本タンポポの見分け方はカンタンで、図に示したように総苞片(そうほうへん)と呼ばれるガクのような部分が、閉じていれば日本タンポポ、開いていれば西洋タンポポとのことです。(ただしそれだけでは見分けの付かない雑種もあるそうです)

    西洋タンポポが日本に持ち込まれた時期は不明ですが、NHK朝ドラ「らんまん」のモデル牧野富太郎博士の報告(1904)では、西洋タンポポが北海道に定着していることが記録され「いずれ日本中に分布を広げるだろう」と予想されているので、明治の後半にはすにで全国制覇の兆しがあったと思われます。

    西洋タンポポの一人勝ち???

    (画像:ウェザーニューズ)

    ウェザーニューズ社の調査では5,078人のうち73%の人が「周りにあるのは西洋タンポポ」と回答したそうです。

    日本なのにセイヨウタンポポが多い!? – ウェザーニュース

    日本タンポポと西洋タンポポは開花時期や好む土壌が違うため、これだけでは簡単に結論付けられないそうですが、前述の「西洋タンポポは8割」と近い数字なので、それなりに現実を反映していると思われます。

    西洋タンポポがここまで多数派になった背景には、繁殖に関する3つの違いが挙げられます。これを読むと西洋タンポポの一人勝ちのようにも思えてきますよね。

    1.西洋タンポポは自家受粉、日本タンポポは他家受粉
    植物は「おしべの花粉をめしべが受粉して種ができる」と学校で教わりましたが、セイヨウタンポポは「アポミクシス」と言って受粉しなくても種子ができる性質があります。なので気象や環境の影響をあまり受けずに自分一人(?)でどんどん増えていきます。

    一方日本タンポポは他家受粉なので自分以外の固体の花粉をもらわないと種子ができません。つまりハチなどの昆虫の手助けを必要とします。

    2.西洋タンポポは種が多くて小さく軽い
    西洋タンポポの種子の数は日本タンポポの2倍以上あり、しかも小さくて軽いので遠くまで飛んでいきます。西洋タンポポの繁殖は、私のイメージでは手づかみでBB弾をそこいらじゅうにばら撒く感じでしょうか。(あくまでも私のイメージです・・・)

    3.西洋タンポポは通年を通して咲く
    日本タンポポは春しか咲きませんが、西洋タンポポは一年中発芽し、いつでも花を咲かせることができます。ということは繁殖の機会が圧倒的に多いのです。

    植物の繁殖力と多様性

    日本タンポポ(画像:写真AC)

    日本タンポポは近くに同じ種類ののタンポポと受粉を仲介してくれる虫がいなければ種をつくって増えることができません。だから新天地に根付いて勢力を伸ばしていくのは西洋タンポポのほうがずっと得意です。歩道のタイルの隙間やコンクリートの割れ目などで花を咲かせているのはほとんど西洋タンポポだと思います。

    そういった繁殖力の強さから「在来種タンポポ駆逐説」が広がったようですが、最近の研究では一概に駆逐されたとは言えず、日本タンポポの生育環境に適した土地が減ったという見方も出てきているようです。

    実は日本タンポポには西洋タンポポにはない優れた特長があります。それは他家受粉による多様性です。

    西洋タンポポはほかの固体から遺伝子をもらわないので増えたタンポポは親と全く同じ形質を持ちます。一方、日本タンポポは他の個体から遺伝子をもらって増えるので同じ花に見えても個々には遺伝的な差異があります。

    つまり、気温が極端に低い・高い、雨が極端に多い・少ないなどの過酷な気象条件で同じ遺伝子の西洋タンポポは一斉に全滅する恐れがありますが、日本タンポポは生き延びていける個体があるかもしれないということです。それこそが多様性が持つ強みでもあるのです。

    日本タンポポは工事でしょっちゅう掘り返される都心部や造成地は苦手ですが、変化が少なく土壌がそれほど乾燥しない「神社や寺の境内」「田畑」「雑木林」などに残っていることが多いそうです。

    なので大阪城内や皇居周辺などではよく見られ、都心では小石川植物園、小石川後楽園、護国寺境内、旧岩崎邸庭園などで群生しているそうです。皆さんもこの機会に日本タンポポを探してみてはいかがでしょうか。

    (ミカドONLINE編集部)


    出典/参考記事:タンポポの種類|西洋タンポポと日本タンポポの見分け方と違い 今の時期、タンポポはほとんどが外来種 全国調査で判明 タンポポの多様性と生き残り戦略ー外来種問題 在来のタンポポは、外来のタンポポに駆逐されるのか。 – 株式会社バイオーム 在来種タンポポはなぜ減少したのか 外来種セイヨウタンポポの広まりから雑種の登場まで|記事カテゴリ|BuNa – Bun-ichi Nature Web Magazine |文一総合出版 など