バレルとは樽のこと
国際的な石油の取引にはバレルという単位が使われています。バレルというのは樽のことで、昔は石油の運搬に樽を使ったことからそれが単位となりました。リットルに換算すると1バレルは約159リットルです。私達がよく目にする一般的なサイズのドラム缶が200リットルですから、1バレルはその約4分の3の量ということになります。
石油産業は160年前、アメリカの事業家がペンシルバニアで油田を掘り当てたことがきっかけとなり、急速に事業として広まりました。石油自体の歴史は古く、地表ににじみ出た油が一部の人たちの間で灯りの燃料として使われていましたが、油田を見つけて機械で採掘するという発想はなく、石油の利用は限られた地域のものでした。
最初の油田開発はアメリカだった
160年前と言えば、日本では安政の大獄が行われた時期です。その頃のアメリカでは灯りの燃料には鯨油を使うのが一般的でしたが、精製技術の発達もあり、従来の鯨油に変わる新しい燃料として石油にビジネスチャンスを見出したのがジョージ・ビッセルという人物でした。
彼は、それまで毛布に浸すなどして集めていた地表の石油を「掘ってくみ出す」という発想に切り替え、世間から大いに馬鹿にされながらも1859年についに採掘を成功させました。これによって石油は商売になることが明らかになり、ペンシルバニア州や、その後多くの油田が発見されたテキサス州ではゴールドラッシュならぬオイルラッシュで大いに沸き返りました。
その当時の石油の輸送に使われたのがシェリー酒の50ガロンの樽(バレル)です。急激に勢いづいた新興産業に対し、手近な既存のものを使うしかなかったのが真相のようです。けれど漏れや蒸発で運搬中に目減りし、目的地に到着する頃には42ガロン程度に減ってしまうため、到着時の最終容積だった42ガロンを1バレルとしたのがこの単位の始まりです。(元々42ガロンの鰊樽で運んだという説もあります)
伝統的な単位はややこしいけど使いやすい
私はバレルというのはアラビア語のように思っていました。ですがが、バレルはれっきとした英語であり、石油産業発祥の地であるアメリカ生まれの単位なのでした。実はアラブ諸国で石油の採掘が本格化したのは第二次世界大戦後です。産油国といえば中東のイメージが強い石油産業ですが、事業としての歴史はアメリカから始まっており、その当時の単位がそのまま伝統的に使われているのが真相だったのです。
ちなみに英米ではリットルを使わず、ガソリンスタンドでも計量単位はガロンです。
1ガロンはアメリカで約3.8リットル、イギリスでは約4.5リットルと、国によって違うため煩雑ですが、さらにややこしいことに、バレルという単位は石油以外でも使われており、計るものによって容積や重さが異なります。
- アルコール1バレル: 50米ガロン
- ワイン1バレル: 31.5米ガロン
- 食塩1バレル: 280ポンド
- セメント1バレル: 376ポンド
(出典:通信用語の基礎知識)
日本人にはなかなか理解しにくい感覚ですが、部屋の広さを〇畳と表したり、お米を〇合と表現したり、日本でもセンチやリットルとは異なる単位が併用されているわけで、むしろ昔からある単位の方がイメージしやすく使いやすいので、それと同じかもしれませんね。