テスラは単位にもつかわれていた!
いまテスラと言えば、ほとんどの人が電気自動車のテスラモーターズを思い浮かべるのではないでしょうか。ですがテスラモーターズの名前の由来にもなっている物理学者の二コラ・テスラは実は単位にもつかわれているのです。
テスラは磁束密度の単位です。Wikipediaでは「1テスラは、「磁束の方向に垂直な面の1平方メートルにつき1ウェーバの磁束密度」」と書かれており、正直、何が何だかよくわかりませんが(汗)、わかりやすくいえば、ぶっちゃけ、磁石の強さです。
磁石の強さを表す単位としては、それまではガウスがつかわれていましたが、1960年の国際単位系 (SI) 導入の際、それまでのCGS単位系に基づくガウスをSIに基づくものに置き換えるために定められたのがテスラです。
そのため、いままでガウスをつかっていた表示は、徐々にテスラに置き換えられていくものと思われます。
ピップエレキバンもいまはテスラをつかっています
たとえばピップエレキバン。この商品のCMで初めてガウスという単位を耳にした方も多いのではないかと思いますが、現在販売されているピップエレキバンでは、磁石の強さにミリテスラという単位がつかわれています。
1テスラ=10000ガウスなので換算は比較的容易ですが、単純に置き換えると桁数が膨大に増えたり、逆に小数点以下の数字がいくつも並んでしまうため、ミリテスラという単位をつかったり、慣例上、従来のガウスが今もつかわれていることがあるそうです。
ちなみに
地磁気:0.3-0.5ガウス=0.00003-0.00005テスラ
磁気ネックレス:0.13テスラ
ピップエレキバン:0.18テスラ
アルニコ磁石(棒磁石):0.25テスラ程度
ネオジム磁石:0.5テスラ程度
病院の超伝導磁石を用いたMRI:1.0-1.5テスラ
(独)物質・材料研究機構:37.9テスラ
USAの国立高磁場研究所:45テスラ
だそうですよ。
MRIではテスラが標準の単位
実は、脳などをスキャンするMRIの世界では、テスラという単位がとても普通につかわれています。
MRIでは、トンネル状の巨大な磁石(超伝導電磁石)から電磁波を照射すると、対象物の水素原子核が磁力でいったん同じ方向を向きます。やがて電磁波を切ると各組織の水素原子核は元の状態に戻って行きますが、そのときに水・脂肪・骨・癌などで戻る時間に差があることを利用して映像化します。そして前述のとおり、一般的な病院のMRIは1.0-1.5テスラ程度なのだそうです。
さらに最近では、超高磁場の装置が大規模病院を中心に普及が始まりつつあり、イリノイ大学シカゴ校では重量45トンの電磁石で9.4テスラの磁場を発生させる、世界で最も強力な人体用磁気共鳴画像(MRI)装置が、人間の脳の観察に利用されているそうです。
この超強力なMRI装置を使うと、ナトリウム濃度、酸素消費、および脳細胞のエネルギー消費を測定でき、3つの「バイオスケール」(生理尺度)を組み合わせることで、脳にある組織の健康情況を詳細に知ることができるとのこと。
そう聞くと、怖い気もしますが、人類が実現した定常磁場の最高記録は45テスラで、ネズミを浮かすことができるぐらいの磁場は17テスラとのこと。
私はそちらの専門技師ではないので、MRIのテスラの値を聞いても、高いのか低いのかイメージすらつかめませんが、要は、そちらの分野ではよく使われている単位ということになります。
エジソンの最大のライバルだった二コラ・テスラ
テスラモーターズや磁力単位の由来となった物理学者の二コラ・テスラは19世紀中期から20世紀中期の電気技師、発明家です。交流電気方式、無線操縦、蛍光灯、そして空中放電実験で有名なテスラコイルなど多数の発明を残しており、電力普及の黎明期に直流を提唱していたエジソンの最大のライバルでもありました。
テスラとエジソンの熾烈な戦いは「電流戦争」としても有名ですが、テスラは最終的にエジソンに勝利して、現在の電力システムで採用されている交流発電・交流送電の基盤を築きました。
幾度かノーベル賞候補になったものの、晩年はオカルトに没頭し、怪しい発言も多かった天才(奇才)テスラですが、近年では今まで以上に再評価されています。当時はぶっ飛んでいたその発想に、ようやく時代が追いつき、今では数々の発明が見直されています。