単位の歴史(22)~カンデラは光度(光の強さ)の単位です。光がどこまで届くかをイメージする数字と考えるとわかりやすいかも~

    みかドン ミカどんルクスやルーメンやカンデラなど、光の単位ってなんとなくわかりづらいですよね。前回はルーメンについてお伝えしましたが、今回は自転車や自動車のライトでよく使われるカンデラについての解説です。

    (画像:ベストスポーツ

    カンデラは一方向に伸びる光の強さを表す単位

    カンデラは光の強さを表す単位です。

    前回取り上げたルーメンは放射される光の全量を表す単位だったので全方位に光を放つ電球の明るさを示すには向いていますよね。測定もカプセルのような球体の内側で測るとお伝えいたしました。

    けれど懐中電灯や自転車・自動車のLEDライトのように、一方向に伸びる光はどうでしょうか。光源となるルーメンの値が同じでも、懐中電灯や自転車・自動車のLEDライトは反射鏡やレンズで光軸が集約されているので、電球より強く明るく感じられるはずです。

    つまり、カンデラは一方向に伸びる照明の光の強さを示しています。比較的ルーメン数の低いLEDを使用した懐中電灯でも、反射鏡や光学レンズで非常にタイトな光線に集光することにより、カンデラ値を大きくすることができるというわけです。

    そのためカンデラは、自転車や自動車のライトの光度を表わすのには都合がよく、JIS規格では自転車のライトが400カンデラ以上とされ、車のヘッドライトの場合はハイビーム時に2灯式では1万5千カンデラ以上、4灯式では1万2千カンデラ以上ないと車検を通りません。

    自転車のライトは道路交通法施行令第18条で「前照灯白色又は淡黄色で、夜間前方10メートルの距離にある交通上の障害物を確認することができる光度を有するものであり、進行方向を正射し、その主光軸は下向きであること。」と定められていますが、こちらのブログによると、”実際400cdのライトで夜間に10メートル先の障害物を確認できるかと言われると怪しい”そうですよ?

    こうやって見てみると、カンデラという単位は、光がどこまで届くかを比較する光源側の数値と考えるとわかりやすいのかもしれませんね。

    カンデラは「燭」を継承した国際単位系の単位

    カンデラは1960年にSI基本単位の一つとなりましたが、それ以前には「燭」という単位が使われていました。明治生まれの祖父母がピンポン玉大の小さな電球を「5燭電球」と呼んでいたことを記憶されている方もいるようです。

    「燭」はその名の通りローソク一本分の明るさという意味合いですが、カンデラもはラテン語でローソクを意味する言葉で、英語のキャンドルと同じ語源の言葉です。

    Augustus George Vernon Harcourt(画像:Wikipedia英語版

    前身の単位である「燭」は1877年にイギリスで決められた光度の単位で、イギリス人化学者ハーコート(Augustus George Vernon Harcourt: 1834 – 1919)によって考案されたペンタン灯火を一定の条件のもとで燃焼させて、その発光の水平方向の光度の10分の一を『1燭』としたものです。

    その当時のイギリスは灯火をロウソクから石炭ガスに替えていた時代ったため、光の明るさの基準が欲しかったのだと思われます。

    ちなみにハーフコートは『不思議の国のアリス』を執筆したルイス・キャロル(本業は数学者)の友人でもあり、続編の『鏡の国』に登場する白の騎士のモデルではないか、という説(通説ではルイス・キャロル自身)もあるようです。

    カンデラの前身の単位である「燭」の基準値はどの照明器具を基準にするかによって、イギリス系とドイツ系に分かれるようですが、日本に導入されたのはイギリス系だったようです。

    日本で初めて点灯された電気の街灯(アーク灯)は2000燭光(燭)でした。まだ電気が通っておらず暗い夜しか知らなかった当時の人々は明るい光に驚愕したそうですが、2000燭光の光は以下の写真のような明るさなので、初めて見るならそれは確かにびっくりしますよね。毎晩人だかりができたのも頷ける話だと思いました。

    (ミカドONLINE編集部)


    参考/参照記事 「ルーメン?カンデラ?」これさえ見れば大丈夫❗自転車のライト(前照灯)の選び方 懐中電灯におけるルーメンとカンデラ、照射距離との関係性について 光と光の記録 – 光編 など