単位の歴史(23)~デシベルは元々電気の単位でした!そして本当は比較のための相対値なのです~

    みかドン ミカどん今回は騒音のニュースなどでよく耳にする「デシベル」についてです。デシベルは一般的に音の強さを表す単位と思われていますが、元々は電気の単位なのです。しかも相対値といって、基準になる値との比較を表す単位なのです。

    デシベルは比較を表す相対値

    (画像:琉球新報

    飛行場の騒音問題のニュースなどで、デシベルという単位を耳にしたことがある方も多いと思います。

    デシベルは音の話題でよく使われるので、音の大きさの表す単位のように思われがちですが、厳密には音の大きさを表す単位ではなく、基準とする特定の値との比較を表す単位なのです。(そのため、実際は音以外にもいろいろな計測で使われています)

    デシはデシリットルでもおなじみの「1/10」を表す言葉ですが、難しい説明は省くと、デシベルは「計測した値が基準の値に対して10の何乗倍になっているか」を簡単に表したものと言えます。

    音圧(音の強さ)の場合は、デシベルの数値が20上がるごとに100倍ずつ倍率が増えていきます。冒頭に掲げた図でもよく見ると倍率が書いてありますよね。

    基準値比(倍率) 1 倍 10 倍 100 倍 1000 倍 10000 倍
    デシベル(dB) 0 dB 20 dB 40 dB 60 dB 80 dB

    なぜ倍率をわざわざデシベルに変換するのか?

    それは

    • 計算が複雑なうえに桁数が膨大に増えてしまう「音」の強さを単純化してわかりやすくする
    • 掛け算や割り算ではなく足し算・引き算で音の増幅や減衰を求めることができる

    という理由によるものです。

    音の計算には対数(log「〇を何乗すれば△になるか」を表す数)が使われるため計算が複雑になり桁数も非常に多くなりますが、真数のかけ算は対数の足し算になることを利用して、より簡単に、より直感的に、基準値との比較を表したものがデシベルです。

    本来のデシベルは相対値ですが、そこに「0 dBは人間の聴力限界」という基準を設定して比較したものが、私たちがよく目にする騒音のレベル表と言えるでしょう。

    デシベルの差 倍率 音の大きさ
    0デシベル 1倍 人間の聴力限界
    6デシベル 2倍 それより少し大きな音
    10デシベル 3倍 静かな息
    20デシベル 10倍 葉のカサカサ音
    40デシベル 100倍 静かな図書館
    60デシベル 1,000倍 一般的な会話
    80デシベル 10,000倍 目覚まし時計
    100デシベル 100,000倍 地下鉄の電車
    120デシベル 1,000,000倍 飛行機の爆音

    デシベルの「ベル」はグラハム・ベルの「ベル」

    デシベルという単位に使われているのは、電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルの「ベル」です。人名に由来する単位なので大文字が使われています。以下に大日本図書のサイトから引用いたします。

    アレクサンダー・グラハム・ベル(Wikipediaより)

    ベルは,1876年の電話の発明で知られる発明家です。1877年にはベル電話会社を創業し、アメリカに電話を普及させました。その後,1885年には,現在もアメリカの最大手電話会社として知られるAT&T(American Telephone & Telegraph)を創業しました。

    音の大きさの単位に使われるデシベルを提唱したのも,ベル・システムという彼の作った会社連合でした。元々デシベルは,電気通信における信号劣化の割合を表すための単位として考案されたものでした。

    (引用:デシベル|単位プラス|大日本図書

    電力の場合は音や電圧と異なり”10dBごとに100倍”です

    デシベルは元々、通信システムで信号の減衰を表す電力の比率のために考案されたものなので、電圧や電力でも使われています。

    ただし電力の場合は「20dBごとに10倍」ではなく「10dBごとに100倍」になります。

    電力場合のデシベル

    基準値比(倍率) 1 倍 10 倍 100 倍 1000 倍 10000 倍
    デシベル(dB) 0 dB 10 dB 20 dB 30 dB 40 dB

     

    基準値比(倍率) 1 倍 0.1 倍 0.01 倍 0.001 倍 0.0001 倍
    デシベル(dB) 0 dB ー10 dB ー20 dB ー30 dB ー40 dB

    これは「電力は電圧の2乗に比例」することを踏まえ、(たとえば)電圧が10倍になったとき(20dB)に電力が100倍(20dB)になるようにデシベルの数を合わせて、運用上計算しやすくしたようです。

    最後に余談ですが、グラハム・ベルの「ベル」という苗字は「教会の鐘鳴らし係、鳴鐘係」に由来する苗字だそうです。ベルの母と妻は聴覚障害者で、そのことがベルのライフワークに大きく影響しましたが、苗字からはベルの先祖も音に関わる職業だったことが推測されます。

    そんなベルが電話を発明したもの、いにしえからつながる何かのご縁だったのかもしれませんね。

    (ミカドONLINE編集部)


    引用/参照記事 対数とは何なのかとその公式・メリットについて。対数をとるとはどういう意味か? 小学生でも分かるデシベル(dB)の話 エレクトロニクスにおけるデシベル(dB)って何?(PDF) 計装豆知識|デシベルについて 苗字苑:ベル(Bell) など