私の知人の男性(50代)が車の買い替えで新車を注文したら「納車は半年後」と言われて驚いたそうです。原因は世界的な半導体不足。今回は編集部が世界的な半導体不足について、ネットの記事などを参考に調べてみました。
半導体不足のそもそもの発端は米中経済摩擦?
半導体不足が世界的な課題として浮上したのは2020年秋頃です。特に自動車産業への影響が著しく、この記事を作成している時点でトヨタの「生産遅延に基づく工場出荷時期目処の一覧」(2022年7月4日のスクリーンショット)を確認すると、通常よりかなり遅い納車になっており、ほかのメーカーも程度の差はあれどこもみな同じようです。
こういった状況を踏まえて経済産業省主導のワーキンググループが中間報告として「自動車サプライチェーンの強靭化に向けた取組」を7月1日に公表しました。
半導体不足は窮状が激しい自動車業界だけでなく、いまや全世界の問題となっていますが、その元々の発端はコロナではなく実は米中摩擦だ、という記事を見つけた(しかもわかりやすい!)のでそこから少しピックアップしていきたいと思います。
🌍 半導体不足はなぜ起きたのかわかりやすく解説|本当の理由は米国・中国の経済摩擦に由来
この記事では半導体不足の原因を以下のように掲げています。
そして、そもそもの発端は米国と中国の経済摩擦だった、と説いています。
米中経済摩擦でなぜ半導体不足が起こるの?
米中経済摩擦はかねてから貿易赤字を自国の”悪”と捉えていたトランプ大統領(当時)が中国からの輸入を強く規制し、それに反発した中国が報復して、最終的に米国と中国の双方が非常識に関税を掛け合う泥仕合となったことがきっかけです。
iPhoneやナイキのシューズが中国製であるように、個人レベルでも企業レベルでも、もはや暮らしや産業構造に欠かせない中国製品の輸入を規制することは、米国内にもそれなりの大きな打撃をもたらします。
そのため米国では事業の死活問題と捉えて大いに反対する人や団体がいる反面、経済力に物を言わせ、国家主導で力任せに情報産業等の覇権を狙う中国に、国の安全保障上の不安やセキュリティリスク、そして国家威信への危機感を感じる人も多く、一概に「子供じみたバカげた施策」とは言えない側面を持っているのも事実なのです。
そういった中でトランプ大統領(当時)は、半導体に対しても中国企業を事実上排除したため中国から米国への半導体の輸出量は大幅に減少しました。ところが「中国がダメならほかの国へ」という代替案の影響で注文が殺到した台湾の有力半導体生産企業は、一気に増大した注文に対応しきれず、ここに大きなボトルネックが発生してしまいました。
半導体製造はかつて日本のお家芸でした。しかし実力を付けて勢いを増してきた中国や台湾や韓国の新興勢力に競争力を奪われ、今では技術的にも資金的にも「3~4周の周回遅れ」と言われています。よって、このたびの米中摩擦が日本の利益になることはなく、むしろ中国に11%、台湾に33%を依存している日本の半導体の供給も逆に脅かされる結果となりました。
自動車産業への影響が大きかった理由
半導体不足を受けて7月1日に経済産業省が公表した中間報告は「自動車サプライチェーンの強靭化に向けた取組」というものでした。今、重視されているのは自動車産業の半導体不足です。
数ある産業の中でも特に自動車産業の半導体不足が大きな問題となっている理由には
1.コロナ禍で生産計画を縮小したことがアダとなった
2.自動車用の半導体は利益が薄く後回しにされる
3.自動車用の半導体を作る工場は増産ができない
の3点が挙げられます。
1.コロナ禍で生産計画を縮小したことがアダとなった
この件は、新型コロナウイル拡大初期の数か月間を契機としています。感染拡大を機に欧州では自動車の販売台数が80%、中国では70%、米国では50%近く減少し、新車の需要がないために工場が閉鎖され、半導体をはじめとする部品の注文が取り消されました。
しかし公共交通機関を回避する動きが強まり、予想に反して自動車の需要は急激に回復(またはそれ以上)。そこに半導体製造が追いつきませんでした。自動車メーカーの操業停止で半導体の供給業者は在庫と余剰な生産能力を抱えましたが、他方ではテレワークや巣ごもり需要でパソコンやタブレット、スマート家電の売り上げが急増していました。
そこでこれらのメーカーは喜んでそれらのオーダーを受け入れ、しかもその後手放すことはなかったのです。つまり自動車の需要が回復しても、もはやそこに回せるモノがないという状態になりました。
2.自動車用の半導体は利益が薄く後回しにされる
自動車の半導体はパソコンやスマートフォンなどの半導体と異なり、それほど複雑な制御を要求されない言わば旧世代の半導体です。人命に関わることから動作が安定している旧世代の製品のほうが高い安全性を保てるからです。しかし、わずかな不具合も許されないため精密に作り込むほかチェックもかなり厳格で納品までの期間も長いのが特徴です。
それゆえに最先端の技術を搭載した付加価値の高い新製品よりも利益率が低く、半導体メーカーとしては「あまりやりたくない」のが本音なのかもしれません。一度乗り換えてしまったメーカーが新規顧客を手放さないというのも頷けます。
3.自動車用の半導体を作る工場は増産ができない
半導体とひとくちに言っても色々な種類がありますが、最先端の半導体は12インチウェハーで、自動車用は8インチウェハーです。そして不足が顕著なのは後者の8インチウェハーです。
8インチウエハー工場は老朽化が進んでいるケースが多く、半導体メーカーは生産を受託するファウンドリー(設計開発等は行わない受託製造専門工場)への委託に切り替えているケースが目立ちます。しかし、ファウンドリーの多くは生産能力を拡張していないことから、急増した注文に対応することが難しかったのです。
自動車業界では、これらの要素に加えて、在庫を極力持たない自動車業界特有の生産方式や、その後本格的に実施される海外各都市のロックダウン、港湾の封鎖などが複合的に絡み合って現状に至っていると思われます。
そしてコロナ、巣ごもり、テレワーク、ウクライナ・・・
その後の流れは見出しの通りなので皆さんもよくご存じかと思います。
ほかにも世界中の自動車に搭載されているチップの約3分の1を生産している日本のルネサス社の火事や米テキサス州のチップ工場が冬の嵐で生産停止、大量の水が必要なチップ製造における台湾の干ばつなどが少なからず影響し、諸要件が重なって全世界を巻き込んだ半導体不足が引き起こされているようです。
ここ数年は大きな買い物も(小さな買い物も?)なく、半導体不足による欠品や納期の遅延を実感したことがない私(編集部)でしたが、なんと本日(2022.7.4)自宅近くの未明の落雷により給湯器の電源が入らなくなってしまいました。
幸い給湯器はコンセントの抜き差しで復活しましたが、念のため見てもらった業者さんに「もし今、給湯器が本当に壊れたら納品には3~4か月。このあと寒い時期に壊れたら納品はさらに遅くて半年後!」と言われ、今さらのように現状をひしひしと痛感しました。
パソコンやスマホ、自動車に限らず「何かを自動的に感知して自動的に動作を変更する機能と設定」がある電化製品には必ず半導体が使われています。我が家の給湯器も「風呂の水量が適量(我が家では7割に設定)になったらお湯を止める」「適温(我が家では42度に設定)になったら追い炊きを停止する」など様々な機能を制御する半導体が使われているわけです。
もしかして読者の皆さんはすでにお困りの経験が十分おありかもしれませんね。予測ではこの夏あたりから少しずつ半導体不足が解消していくそうですが、産業のためにも自分のためにも(?)早い回復を願わずにはいられません。
(ミカドONLINE編集部)
出典/参考記事:半導体不足はなぜ起きたのかわかりやすく解説|本当の理由は米国・中国の経済摩擦に由来 1からわかる!「米中貿易摩擦」【前編】そもそもの経緯は? 半導体 大競争時代に突入 日本の勝ち筋は? 自動車業界を直撃 「半導体不足」に特効薬なし まずはDX推進で「4つのゴール」目指せ クルマが生産できない! その意外な理由とは? 【2022/6月更新】半導体不足はなぜ起きた?解消はいつ?半導体不足の本当の理由、影響をわかりやすく解説 など