(50) なぜ宇宙でも太陽光?世界で激化する開発競争の理由

    みかドン ミカどん今回は宇宙太陽光発電についてです。当サイトでは2015年にも取り上げたテーマですが、この8年間で状況が様変わりしているようです。今回は当時の過去記事と比較しながら書いてみました。

    米国で宇宙から地上へのワイヤレス送電に成功

    (画像:Caltech YouTubeより)

    今年の6月、米国のカリフォルニア工科大学が宇宙から地上へのワイヤレス送電に成功したと発表しました。これは宇宙に打ち上げた実証機で太陽光発電を行い、その電力をマイクロ波に変換して地球に送るものです。

    同大学の宇宙太陽光発電プロジェクト(以下、SSPP)は1月に実証機を打ち上げて、宇宙空間で得た太陽光発電のエネルギーを地球に送るための実証実験を行っていましたが、このたび地球側でマイクロ波の受信に成功したことから6月の発表に至りました。

    ミカドONLINE(当サイト)では2015年に宇宙太陽光発電に注目し、以下の記事で京都大学 篠原真毅教授の取り組みなどをご紹介いたしました。

    未来に向かう新しい発電技術② 宇宙太陽光発電

    この時点で宇宙太陽光発電の技術は日本が世界をリードしていたのですが、残念ながら先を越されてしまったようです。

    2015年の記事で、この技術開発の難点は「巨額の費用」であることに触れていますが、カリフォルニア工科大学のプロジェクトでは米実業家のドナルド・ブレン氏から1億ドル(約140億円)超の寄付を受けたほか、米防衛企業からも14〜17年に1250万ドル(約17億円)の研究費を得ており、米空軍研究所の関連予算も、1億ドル以上とされています。

    もしかしたら資金的に大きな差があったのかもしれませんが、欧米や中国では「勝ちたい」と思ったものへの資金投入が半端ないですよね。

    一番を逃した日本では効率的にエネルギーを送る技術の確立に勝機を探り、2025年度を目標としてJAXAが技術開発を進めていますが、立場が逆転してしまったので今度は追う立場として戦略を練った挑戦になりそうです。

    開発スピードも世界の競争も激化している理由

    2015年の過去記事を読み直すと、その時点でのJAXAの目標は2030年代かそれ以降という認識でしたが、現在の目標では5年前倒しになっています。

    また前述の篠原教授も当時は「自分が生きているうちには実現しないかもしれない。」とおっしゃっていますが、最新のコメントでは「今が勝負時」に変化しています。

    これらのことから技術開発のスピードが大幅に増していることがわかります。

    実は、天候や昼夜の制約を受けない宇宙空間での太陽光発電は、地上の8倍もの電力を得ることができると言われているため、世界での競争がかなり激化してきているのです。

    現在はまだコストなどの課題のため、この技術を実用化するまでには至りませんが、将来的に実用化されれば、地上で無限に安定したクリーンエネルギーが得られるようになる可能性があります。

    また、ワイヤレス送電には送電網が不要という大きなメリットがあります。そのため宇宙から地球に送電ができるなら、このしくみを利用してまだ電気が通っていない地上の地域にも、遠くの発電所から電線を敷設することなく電気を送ることができるということになります。

    つまり宇宙太陽光発電を実現するための技術は様々な分野での応用が期待できるのです。

    マイクロ波などの微弱な電波を変換してそれなりの電力を得るには、複数の電波を干渉させて増幅したり、電波をピンポイントで一か所に集めるなどの高度な研究開発が必要ですが、無線が当たり前になったインターネットのように、今後は送電のしくみもどんどん進化していくのかもしれません。

    (ミカドONLINE編集部)

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    参考/引用記事: 宇宙太陽光発電、米大学が実証「成功」日本先行の過去 – 日本経済新聞(会員限定記事) カリフォルニア工科大、宇宙空間でのワイヤレス送電に初めて成功。地上向け電力信号も確認 | テクノエッジ TechnoEdge など

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