(60)実証開始。ビル屋上の中小企業向けマイクロ風車で風力発電

    みかドン ミカどん

    銀行が再生可能エネルギー事業に乗り出すケースが増えています。ですがその目的は売電収入だけではありません。今回は滋賀銀行のマイクロ風力発電を取り上げ、銀行も脱炭素をキーワードに新しいビジネスを模索している事例をご紹介したいと思います。

    中小企業向けのマイクロ風車で実証実験を開始

    (画像:滋賀銀行

    今年(2024)の1月、滋賀銀行が本社ビルの屋上に小さな風車を設置し、発電量や風の具合を調べる実証実験を開始しました。

    滋賀銀が設置した風車は高さ、横幅がそれぞれ75センチメートル、奥行き35センチメートルの直方体。

    風力発電の分野ではマイクロ風車と呼ばれるもので、具体的な仕様は公開されていませんが、小型でどこにでも設置でき、工事も容易であることから、建物屋上や橋梁などさまざまな場所に導入できるのが特長です。

    そのため将来的には中小企業でも取り組める脱炭素のツールとして活用していきたい狙いがあるようです。

    この試作品を作成したのは脱炭素の分野で2022年から滋賀銀行と連携している日立製作所です。

    琵琶湖の湖畔に本店を構える滋賀銀行は、今のように地球温暖化やCO2削減が叫ばれる以前の1990年代から環境問題に取り組み、地域を代表する銀行として融資先の脱炭素を積極的に支援してきました。

    その過程で日立製作所からの提案を受け、中小企業でも取り扱えるCO2排出量管理ツールを導入したのが連携のきっかけです。

    その背景には、資金や人材の面でハードルが高いため、中小企業にはなかなか脱炭素が浸透しないという悩みがありました。

    脱炭素とコンサルティングを銀行の新ビジネスとして

    (画像:滋賀銀行

    滋賀銀行では2023年に日立製作所と共同開発したCO2排出量管理ツール「未来よしサポート」を「初年度無料・月額2,200円(税込)~」という低価格で提供を開始し、大きな話題を呼びました。

    近江商人の「三方よし」に引っ掛けたネーミングもさることなら、価格の安さやどの企業でも使われているMicrosoft Excelをベースにした仕様などが顧客に評価され、今まで取引のなかった大手企業からも引き合いがあるなどの副産物も生み出しました。

    それまで滋賀銀行では脱炭素を後押しするため、取引先企業に対し脱炭素のコンサルティング企業を紹介するビジネスマッチングに取り組んでいましたが、中堅・中小企業の場合は環境分野への資金や人材の投資を躊躇されるケースが多々あったそうです。

    脱炭素関連サービスの多くは大手メーカーなどをターゲットにしているため、コストやスキルの面でハードルが高く、同行と日立製作所はその障壁を低くするために、低コストで誰でも扱うことができ、かつ中小企業の実情に合ったものを・・・と試行錯誤を続けたとのこと。

    そしてその先に見据えているのが今回のマイクロ風車の地域への普及販売(日立製作所への紹介)や自社が直接行うコンサルティングなどの新しいビジネスではないかと思われます。

    銀行も社会の課題解決をキーワードにどんどんビジネスを多様化させていることが伺えます。

    銀行だけでなく風力発電も多様化しています

    (画像:(株)エコ・テクノロジーPDF)

    多様化しているのは銀行のビジネスモデルだけではありません。風力発電の設備のほうも小型化の開発が進んでおり、写真の「トルネード型風力発電機」(株式会社エコ・テクノロジー)のように公園や空港などにすでに導入されている製品もあります。

    「トルネード型風力発電機」は設置面積が少ない、騒音が少ない、鳥の巻き込みが少ない、落雷や台風に強い、シンプルでメンテナンスが容易・安い、などの特長があり、最新(2024/08/18)のニュースではハワイでも導入されるそうです。

    風速3メートルでも発電可能——日本発のトルネード型風力発電機がハワイで設置へ | fabcross

    その理由は「この発電機には鳥が巣を作ることが知られており、技術の安全性と鳥類との共存」(Kanoa Windsの創設者兼CEOであるKaname Takeya氏)とのことなので、ハワイの人たちがとても自然を大切にしていることがわかります。

    また、ビルの屋上に設置可能なマイクロ風力発電機としては、米国やオランダでも開発が進んでいるようです。

    ソーラー発電より50%多くのエネルギーを生み出す「屋上風力発電」が登場、回転するブレードがないので安全で騒音もほぼゼロ – GIGAZINE

    屋上で太陽光と風力の両方を組み合わせて発電するシステム「PowerNEST」――風力タービンの天蓋に太陽光パネルを設置 – fabcross for エンジニア

    社会の課題解決はその一方で新たなビジネスチャンスにもなり得ます。また、再生可能エネルギーを活用していくためには、地域やユーザーの実情に合ったカスタマイズも必要になってきます。そういった現状を踏まえて、このサイトではこのあと何度かに分け、「小型化」に焦点を当てていきたいと思います。

    (ミカドONLINE 編集部)


    参考/引用記事: 日立製作所と風力発電の実証実験を開始 | ニュースリリース | 滋賀銀行 滋賀銀行「未来よしサポート」 地域企業の脱炭素経営を伴走サポートするCO2排出量管理ツールを共同開発(前編) – Digital Evolution Headline   

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