(74)北海道の風力発電大量導入を可能にした世界最大級の蓄電池システム~当社社長も6月に見学!~

    みかドン ミカどん

    北海道に世界最大級の蓄電池設備があるのをご存じですか?これは道北の宗谷地域に続々と建設されている風力発電のエネルギーを蓄えて電力バランスを整える、再エネ大量導入の要となる施設です。当社の沢田社長も6月に見学!社長の感想は記事の最後をご覧ください。

    風力発電の電気を溜める世界最大級の蓄電池設備

    今年(2025)の2月、北海道の宗谷地区(稚内市と周辺町村)にユーラスエナジーホールディングスのグループ会社が建設していた2つの風力発電所が完成し、稼働を開始しました。

    ひとつは「勇知ウインドファーム」(稚内市/2025.2.3完成)、もうひとつは「芦川ウインドファーム」(豊富町 とよとみちょう/2025.2.14完成)です。

    これによって同社が推進する「道北風力発電事業」が全面稼働し、道北に設置された全6カ所・計107基の風力発電設備の総連系出力は434.5MWになりました。

    これらの発電所は風の強い稚内・豊富・中川地域に分散しており、発電した電力を北豊富変電所に集約したうえで、独自に整備した送電線で南方面の電力系統へ送られます。

    この際、風力発電特有の出力の不安定さを調整するために重要な役割を果たすのが、豊富町にある世界最大級の蓄電池設備です。

    この施設は発電量が多いときは電気を貯め、不足時には放電して、電力の流れを安定させる「電力のクッション」のような働きをします。

    この組み合わせによって、変動の大きい再生可能エネルギーを安定的に大量導入するモデルが可能になり、宗谷地域は脱炭素社会の先進事例として全国から注目され始めました。

    GSユアサのリチウムイオン電池が採用されています

    北海道の宗谷地区は風が強く、風力発電にとても適した地域です。しかし北海道は電力の消費が少ない地域として位置づけられ、発電した電気を主に道内だけで使う想定で送電網が整備されてきたため、風力発電所が増えてもそれに見合う大容量の電気を送れる送電網が未整備でした。

    そこでユーラスグループは経産省の補助を得て自社で送電網を整備し、同時に、変動が大きく不安定な風力のエネルギーバランスを整えるために、豊富町に大規模な蓄電池設備を建設しました。(2023年稼働開始)

    この蓄電池施設の容量はなんと720MWh(出力240MW)で、これは世界最大級の規模に相当します。その大規模蓄電池設備で採用されているのがGSユアサのリチウムイオン電池です。

    (参照)GSユアサが納入した世界最大規模の蓄電池設備が稼働開始 ~北海道北部地域の風力送電網構築に貢献~ – GSユアサ

    GSユアサが提供した蓄電池は、厳しい寒冷地でも安定稼働する設計で、セル電圧や温度を個別に監視できるシステム(STARELINK)を搭載。出力が不安定な風力発電の電力を貯めたり放出したりすることで、送電線に流す電力の変動を抑え、全体の電力供給をなめらかに保つ「バッファ」のような役割を果たしています。

    また、GSユアサはこの施設の設計・製造から遠隔監視・保守サービスまでを一括提供しており、日本の再エネ大量導入を支える重要な技術基盤のひとつになっています。

    使わないと無駄になる!再エネを活かすためにデータセンター建設で地産地消

    今年の5月に行われた「勇知ウインドファーム」の竣工式でユーラス社の諏訪部哲也社長が「このような強い風の中、式を行えることを大変うれしく思う」と苦笑しながらご挨拶をされたそうです。

    ユーラス社の風力発電による電気は、同社などが設立した送電網から北海道電力ネットワークの変電所を経て、道内外へ供給されていますが、送電網や蓄電池設備を整備しても、現状ではこれ以上の量の送電はできず、システムの本格的な増強は政府が計画する本州への海底送電ケーブル整備などを待たざるを得ないとのこと。

    電気は需要と供給が一致しないと、最悪の場合、大停電を引き起こすおそれがあるので、強すぎる風が長時間続いて想定以上に発電してしまいそうなときは、風車を止めるなどの措置が必要になり、売電収入の減少や環境資源の無駄や投資回収の長期化などを招きます。

    そこで同社は、現地で電力を消費しようと生成AI(人工知能)の普及で需要が高まっているデータセンターの建設を計画中です。

    予定では2025年度中に着工し、まずは総受電容量を2メガ・ワットから始め、徐々に拡大していく方針で、エネルギーの地産地消を目指します。

    強風が吹き荒れる厳しい道北の環境が逆に地域の強みになり、地元の暮らしを豊かにするきっかけになればいいですね。

    当社の沢田社長が豊富町の大規模蓄電池設備を見学!

    今回ご紹介した北海道豊富町の大規模蓄電池設備を当社の沢田社長が見学してきました!以下に社長による感想を掲載いたします。

    沢田秀二社長の「大規模蓄電池設備」見学記

    6月12日に機会を得まして北海道稚内市から30kmほどにある北海道北部風力送電(株)様の北豊富変電所の見学会に参加してきました。

    当変電所にはGSユアサが納入し2023年から商業運転に入った、風の状況により出力が不安定な風力発電装置の電力を平滑化するための720MWhという世界最大規模のリチウムイオン蓄電池が稼働しており、それを見させていただくのが目的でした。

    蓄電池が設置されている建屋内には幅2mはあろうかというリチウムイオン蓄電池盤3840面が整然とならんでいる姿は圧巻で、端まで見渡せないほどの壮大さでした。

    GSユアサはこの電池の製造と設置に3年、商業運転に入ってからは20年のメンテナンスを請け負っており、毎日21万のすべての電池モジュールから吸い上げた各データーを確認して不具合の兆候がないか、正常に運転されているかを監視しているそうです。

    見学させていただいた当日もGSユアサの方が定期点検で現場にいらっしゃいました。
    まさに製造~設置工事~メンテナンスまでを1級レベルで対応しているGSユアサの総合力を肌で感じられるすばらしい見学会でした

    建物の内部の写真撮影の許可が頂けず、その迫力ある画像をお見せできないのが残念でなりません。

    (沢田秀二)

    ※編集部で調べたところ、建物内の様子の一部は千代田化工建設様のサイトで確認できるようです。ご興味がある方はぜひ以下も併せてご覧ください。

    (参照)北豊富変電所蓄電池システム | 千代田化工建設株式会社

    (ミカドONLINE 編集部)


    参考/引用記事: ユーラス「道北風力発電事業」が全面稼働、総連系出力434.5MW – ニュース – メガソーラービジネス plus : 日経BP 国内最大720MWhの定置型蓄電池が稼働、道内風力が倍増へ – ニュース – メガソーラービジネス plus : 日経BP 「勇知ウインドファーム」営業運転開始 ~「道北風力発電事業」5カ所目の風力発電所が完成~ | 株式会社ユーラスエナジーホールディングス 再エネ会社が自前の送電線 全国屈指の風力発電適地の北海道北部 [北海道]:朝日新聞 道北に「風力発電専用」の送電線 なだらかな丘に風車林立、夜間の明滅「怖い」 – 産経ニュース 北海道:稚内市でデータセンター着工へ…「ユーラス」社、風力発電の「地産地消」目指す:地域ニュース : 読売新聞 「勇知ウインドファーム」の竣工式開催 | 株式会社ユーラスエナジーホールディングス など

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